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PTSD治療に『テトリス』が役立つ? [けっこう気になる]

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の存在は、日本でも数年前から広く知られるようになりました。その治療に、あのテトリスが役立つ、と言われれば、おおっ!?と思いますよね。研究したのは、誰でも知っている名門・英オックスフォード大です。名前だけで信じてしまいそうですが、先日の米エール大の件もあることですし、大発見なのか、トンデモな研究なのか、ここは一つ、慎重に記事をチェックすることにしましょう。

テトリスはPTSD治療に効果あり、オックスフォード大学【Technobahn 2009/1/8 19:46】

英オックスフォード大学の研究者による実験によりテトリスはPTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療に効果があることが学術専門誌「PLoS ONE」に掲載された論文により明らかとなった。

今回の論文は『PLoS ONE』って雑誌に出たんですね。ふふふ。この雑誌については、あとで述べることにします。

この論文発表を行ったのはオックスフォード大学精神神経学科のエミリー・ホームズ(Emily Holmes)博士を中心とする研究グループ。

なんだかホームズ探偵の孫娘(←いたとしたら)のような名前の博士が出てきました。これが4月1日なら、この時点でトンデモと決め付けてしまうところです。

念のためグーグルで検索してみましたが、同姓・同名のカナダ人女優しかヒットしません。仕方がないのでオックスフォード大まで出かけていって調べてみました。実在していました。この方です。

ホームズ博士の研究は、シャーロックおじいちゃんの孫娘(←決めつけ)の名に恥じる、それはそれは立派なものでございました。

研究グループはボランティアの被験者に対して精神的動揺を与えるような飲酒運転事故によって怪我を負った人の映像を30分間に渡って見せた後で、今度は10分間、TVゲームをプレーさせるという実験を実施。

えっ…と、PTSDってそんな程度のものだったかしらん。。。私は素人ですから、↑この研究手法は科学的にカンペキなんだと言われれば、ああそうですか、というしかありません。ただ、口では「ああそうですか」と言ったとしても、腹の底ではでんでん納得しないでしょうねえ。なんかちょっと、腹立たしさすら感じます。

そんなことにはおかまいなく、ホームズ博士は一気に結論へと、棒高跳びの女王・イシンバエワのように跳躍します。

結果、テトリスが一番、事故映像によるトラウマ軽減に役立ったとしている。ホームズ博士はテトリスの単純な映像と音の繰り返しが、脳内の記憶域にあるトラウマ映像の崩壊につながったのではないかと述べている。

なんという大雑把な結論…orz

極度の不安や恐怖から逃れるためには、単純な反復作業に没頭することが効果的であることなど、すでによく知られていることでしょう。だから人は、嫌なことを忘れるためにせっせと働いたり、わけもなくその辺をジョギングしたり、踊ったり、歌ったり、泳いだりするはずなのです。

まあ、100万歩ゆずって、「そういう経験則を追認するのも科学なんだ」ということにしたとして、なんでテトリスが「一番」なのか。ぷよぷよはだめなの?とか、ドラクエのレベル上げでもいいんじゃないの?とか、バイオハザードもけっこう単純な音と映像ですが…とか、そういう揚げ足取りをしたくなるほど、根拠がはっきりしません。

これって要するに、テトリスの世界的な知名度にのっかって、その名前を出しておけば研究が注目されるというレベルの話なんじゃないの?と思ってしまいます。

ここで気になるのが、『PloS ONE』という学術雑誌です。なんでこんなものを載せているのか、調べてみました。

この雑誌の母体は、2001年にアメリカで創刊された生物学系雑誌『PLoS』(Public Library of Science)だそうです。「税金を使った研究は、納税者に無料で還元されるべき」という立場から、研究論文を発表した側から掲載料をとって載せ、それをインターネット上で無料公開するという画期的なビジネスモデルを採用したそうです。

しかも、論文の品質に徹底的にこだわり、ほとんどが落選するという厳しさなのだとか。「載せてほしいならカネを払え。でも、しょうもないものは載せないよ」という超強気な商売を展開したんですね。

その意気込みと鼻息は大変よかったのですが、理想と現実の間にはやはり壁があるようで。創刊ご祝儀的な支援が終了したあとは、一気に収支がマイナスになり、存続の危機に陥ったそうです。

こういうときに、新しいメディアを次々に打ち上げて打開をはかるのは、古今東西を問わない常套手段です。というわけで、打ち上げ花火の一つとして、2006年に登場した姉妹雑誌が『PloS ONE』なんですね。

本家が謹厳実直、融通の利かない雑誌だけに、お家断絶・一家離散を防ぐ使命を帯びて創刊された分家は、インパクトがあればなんでもOK、やっぱり中身よりも見た目だよね的なノリ。関係者の間からは「ゴミ箱」との声もあがるほど、粗製乱造の低品質論文を載せまくっているらしいのです。

悪貨は良貨を駆逐する。←こんな瀕死の格言を思い出してしまうほど、『PLoS ONE』は成功しているそうで。発行元は収支が上向き、学者側は論文の質を問われることがなく名前を売ることができる。しかも、研究資金は税金と寄付金で、発行元も学者も懐は痛まないのですから、すばらしいこと、この上なしです。

双方が(とても低いレベルで)お互いにハッピーなわけで、当初の志はどこへやら、いまでは単なる「集金システム」になってしまっているのだとか。庶民がせっせと働いて納めた税金は、こんなふうに搾取されてセレブの懐に入っていくわけですね。これについて文句を言うと、「自己責任」とかいうわけのわからない言葉で一蹴されるという。貧乏人がバカを見る、そういう世の中です。

話がそれたので元に戻しますが、ホームズ博士の研究は、つまり、「論文のゴミ箱」に掲載されたものだったのです。どうりで、素人ながら、納得いかねえなあと思ったはずでした。

でもきっと、ホームズ博士にとっては、そんなことはどうだっていいのでしょう。論文が掲載されることで、仕事をしているというアリバイ作りになります。名前もあちこちに登場します。オックスフォード大という印籠がありますから、へへぇ~となる人も多いはず。むしろ、大成功!ぐらいの勢いなんじゃないかと想像します。

ちなみにホームズ博士は、最後にこんな余計な一言も付け加えています。

ホームズ博士によると同等な実験からオンライン・ロール・プレイング・ゲーム「World of Warcraft(ワールド オブ ウォークラフト)」はコミュニケーション能力の向上に効果があるとも述べている。

こりゃもう、テッパンでゲーム会社からカネもらってるんでしょうなあ。歌を忘れたカナリヤは…ご愁傷様。

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大鷲の健

今晩は。
「じゃあなにかい?家庭や学校で心に深い傷を負った子供達はその傷を癒すためにもゲームを積極的にさせたほうがいいのかい?人間関係の再構築のためにもゲームはさせるべきなんだね?」というつっこみを0コンマ数秒で入れました。

あほか。
じっちゃんの名にかけてという気概はないようで(じっちゃんなのかは知りませんが)、まさに税金の無駄遣い。

ゲームの世界で、現実を追体験もしくは現実逃避をしても、やっぱり自分たちは現実のなかでしか生きることはできないのだし、人間関係で負った傷は人間関係のなかで癒していくことが大事なのではないかと思うのです。
少なからず、大小のトラウマを抱えている人は多いと思うのですが、トラウマを治すのは分や時間の単位ではできないです。自分には「年」「十数年」かかっても未だとけないものもあります。

真面目にこういうことを突っ込んでみるだけあほくさくも悲しくもなる、新年ですね。

by 大鷲の健 (2009-01-10 19:26) 

カリメロ&パタリロ

あっ!私テトリス好きです。と、いうかそれしかゲームできないんでPTSDになったらやろおっと…(笑)
by カリメロ&パタリロ (2009-01-10 23:14) 

rio

>大鷲の健さん、いやー、こういう研究がオックスフォード大、ってところにびびります。

前も同じようなことを書きましたが、これがたとえば、学生が出してきたレポートだったら、優良可の「可」をもらえるかどうかですよね。「不可」でも文句言えないと思います。

そのことにも増して腹が立つのが、高々30分の映像と10分のゲームで、「PTSD治療に役立つ」としている点です。

おっしゃる通り、PTSDの治療には長い時間がかかると思います。特にPTSDの原因が、親や兄弟姉妹などとても近い身内にかかわるものであったり、障害が人間の3大欲にかかわる部分にあらわれたりすると、それだけ治療は難しく、長期化しますよね。

その辺をすべてすっ飛ばして、テトリス。このホームズ博士はきっと、PTSDを”商売道具”ぐらいの感覚でとらえているのでしょう。

オックスフォード大といえば、世界の知性のほぼ天井部分に君臨する集団ですよね。同レベルはあっても、明確に”オックスフォード大より上”は地球上には存在しないわけで。

人間は愚かである。という一面の真理が、皮肉っぽく頭に浮かびます。
by rio (2009-01-11 03:04) 

rio

>カリメロ&パタリロさん、PTSDにならない幸せな人生を歩んでください。
by rio (2009-01-11 03:05) 

キューピー

はじめまして。
今までバレーのお話を楽しくひっそり拝見していました。
この記事はどーしても突っ込みたくって初コメントさせてもらいます。

私は実験心理学を数年前まで大学で学んでいました。
専門は脳波とか心拍とかを扱ってたのでちょっと分野はズレてますが。

そもそも、この実験は実験のデザインそのものからおかしいと思います。
そのビデオを見たからといってPTSDになるとは言い切れません。
元々PTSDと診断されている人に対しての実験ならまだ少しは信頼性があるデータになるかと思いますが。
そんな実験は被験者の協力を得るのが難しいでしょうね。

今yahooのトップでニュースになってますが、それによるとビデオを見た後にゲームをする群としない郡に分けてフラッシュバック(日記を1週間つけて、事故のコトについて記載するかどうか)の量の比較をしたそうです。

日記って…「そんな指標ではかれるか~」とツッコミを入れたくなります。
一日の中の記憶の一部分でしかないでしょうに。
それを意味のある差としてどうやって導き出すのか聞いてみたいです。

しかも、この論文に対して指摘をしている一部の専門家によると、「本当のトラウマは思いがけず危害にさらされることから生まれるのだから、今回の実験成果がそのまま適用できるとは限らない」(引用:Gpara.com)だそうです。

…指摘するところが間違ってると思います。
ビデオ見た人はそんな悲惨なものを見せられるとは知らずに見たかもしれないのに。

超名門大学で実験心理学を過去に学んでいながら、こんな誰でも指摘できるような論文を出してきても博士であり職業として成り立つなんて、心理学を研究するほかの人を侮辱しているのか!と言いたくなります。

日本で心理学を学んでいる学生は国家資格もなく、その道で食べていける人なんてコネがメインのごくごくほんの一握りなのに悲しくなります。

と憤慨気味ですが、過去の辛い経験が忘れられず実生活に影響している方はこんな情報に惑わされず精神科や心療内科などで適切な治療を受けていただきたいと願っています。

ではでは、これからもブログ楽しみにしてます♪
by キューピー (2009-01-11 23:30) 

rio

>キューピーさん、コメントありがとうございます。お返事が遅くなってすみません。

テトリスの実験、どこが最初に配信したのかわかりませんが、ネットであちこちに転載されてましたね。

いい加減な実験でも、笑ってすませられるものと、そうでないものがあるように思います。今回とりあげた実験は、いやーな気持ちになるというか、後味が悪いですよね。キューピーさんの解説で、いやーな感じの正体がわかった気がします。

「こんな情報に惑わされずに」とおっしゃられている通りだと思います。もし私がPTSDで苦しんでいてこの実験を知ったら、やっぱりテトリスを買ってしまうと思うんですね。それで症状が少しも改善しなかったときにどうなるか、考えただけもいやーな気持ちになります。

日本は臨床心理士ですら、まだ民間資格の「後進国」だけに、こういう実験につけこまれる隙があちこちにありそうで、あぶないなあと思います。そういう意味でも、専門で学ばれたキューピーさんからコメントをいただけてよかったです。これからも、よろしくお願いします。
by rio (2009-01-15 06:11) 

VQ

はじめまして。

ふらふらとウェブ上を彷徨っているうちに、ふと、このエントリーが目に留まりました。

個人的に気になるトピックだったので元の論文をななめ読みしてみましたが、私の理解の範囲ではTechnobahnの記事は論文の内容を正確に伝えていません。
このPLOS ONEの論文、確かにPTSDという社会的関心の高い障害について扱っている割には脇の甘いところがある感は否めませんが、
それ以上に、研究を紹介しているメディアの側の研究に対する無理解が混乱を助長しているように感じます。

衝撃的な体験をした後に、さまざまな精神的障害の症状が起こることがあるわけですが、そうした症状が1ヶ月以上続くとPTSDと診断されます。
PTSDの診断基準となる諸症状の1つとしてフラッシュバックと呼ばれる現象があります。衝撃的な体験の記憶が生々しく想起されて、それが精神的な苦痛になるそうです。
なぜフラッシュバックが起こるかというと、脳にある記憶のメカニズムに
嫌な体験が刻み込まれるからということになるんですが、それならば、嫌な体験が記憶される過程を何らかの課題で邪魔してやったらフラッシュバックが起きにくくなるんじゃないか、というのがこのPLOS ONEに載った論文の趣旨です。
そしてある事柄の記憶が不可逆的に定着するには、その事柄を体験してから6時間位かかるといわれているんですが、そうならば衝撃的な体験から6時間以内に何らかの策(ここではテトリス)を講じればフラッシュバックを軽減できるんじゃないか実験してみたのがこの論文ということになります。

ということで、著者らは決して「テトリスをやるとPTSDを治療できる」と言っているのではなくて「テトリスには(PTSDの診断基準となる諸症状の1つである)フラッシュバックが初期に定着するのを少しでも軽減する効果があるかもしれない」と言っている訳です。(治療、というより予防に近いですね。)

なぜテトリスなのかというと、これは人間の記憶の仕組みと密接な関わりがあります。
ものすごく大雑把に説明しますと、人間がある事柄の記憶を定着させるためには、脳の情報処理に仮想的な資源(コンピューターでいうメモリみたいなものですかね)を割り当てて一定の処理をしないとならないんですね。
そうなんですが、実はその仮想的な資源というのは記憶の定着だけでなくて、私たちが見ている世界がどのようなものか判断したり、体を動かす命令を出したりといろいろな作業の遂行過程とシェアしないといけないんです。なので、視覚的な分析や身体運動の制御といった課題をハードにやらなければいけない状況下では、記憶の定着が悪くなったりします。
それで、テトリスというのはご存知のとおり、ブロックの形やそのブロックを置くのに適切な位置を判断して(→視覚的な分析)すばやくキー操作を行うこと(→身体運動の制御)を要求されるゲームなんですが、この要求特性が記憶の定着を妨害するには最適なんです。なので今回はテトリスを使って、フラッシュバックの定着を妨害する実験をしたわけです。
他のゲームでも効果が高いものはあると思いますが、あくまで高い水準の視覚・運動処理が必要な課題の代表としてテトリスを用いているだけでテトリスでないとだめという訳ではないです。(別にゲームでなくたっていいわけです。)

精神医学や臨床心理学の場では、現在でも科学的根拠の無い治療法もまかり通っているなかで、少なくともこの論文を読む限りでは、著者たちは比較的良心的にこれまでの科学的知見に基づいてフラッシュバックを予防的に軽減する方法を模索しているように思います。

しかし専門ではない記者が記事を書いているにしても、もう少し正確さや慎重さを心がけた文章にできないものかと思ってしまいます。せめて原著論文にリンクを張るとかしてあればいいんですけどね。。。もちろん科学者の側からも、メディアや一般の方々に対して自身の研究についてわかりやすく説明していく責任があるとは思いますが。

それからPLOS ONEですが、いろいろな評価をされていますが個人的には面白い論文の割合が比較的高い雑誌だと思います。また著者が掲載料を負担することで、誰もが世界中どこからでもインターネットを介して閲覧できるというのは、科学研究の健全性を維持する上で有効なシステムとなるのではないかと思います。
例えばマスメディアでセンセーショナルな(かつ胡散臭い)論文が紹介されたとき従来型の論文誌に掲載されたものであれば、研究者でない一般人が閲覧することは時間的にも金銭的にも非常にコストがかかりますが、オープンアクセスジャーナルならば誰もが簡単に論文の内容について知ることができるます。
誰もがアクセスできる形で研究成果を公表することは、公的資金を大量に投入して行われる科学的研究を衆人環視の状況に置くことになるので従来型の専門誌に掲載するよりもある意味公正な行為だと思いますが、いかがでしょうか?

私自身、研究者として生計を立てている身ですので少しだけ当該論文の著者たちを擁護させて頂ければと思い書き込みした次第です。
長文になってしまいましたし、不適切であれば大変お手数ですが削除していただければ幸いです。

それでは。

by VQ (2009-01-29 02:27) 

rio

>VQさん、詳細な解説をありがとうございました。大変よくわかりました。元論文を読まずに、ノリで研究を批判してしまったことを反省しています。

Technobahnを読んでいると、ところどころ翻訳調の日本語が目に付きます。なので、自前の記事ではなく、欧米で発表された記事を訳して載せているのではないかと思ったりします。

私は以前、仕事で学者の研究成果を取材して記事にしていたことがあります。私は純粋培養の文系人間で、理系センスはまったくありません。そういう人間が医学、理学、工学などの研究成果を記事にしていたのですから、やっている当時は、われながら「よくやるよなあ」と思っていました。

発表側もマスコミ側も、正確に・慎重にと考えていることは間違いないと思うんですね。ただ、その方向性というか、イメージが違うんだろうなあといつも感じていました。

マスコミはどうしても、「ニュースはなに?」というところにこだわります。今回の研究で言えば、「PTSDがテトリスで治る」がニュースですよね。マスコミにとって、研究の意義や背景よりも、「PTSDがテトリスで治る」という主旨の見出しをつけていいのかどうか、その正確性と慎重さが重要になってしまいます。

でも、研究者側にとっては、研究の意義や背景ももちろん重要で、むしろそこを「正確かつ慎重」に伝えて欲しいという熱意をこめてお話をされます。それは当然の要求だと思うんですね。

そこで、はたと困るわけです。記事を書くのも、それを読むのも、まったくの素人です。そういう人間が、プロが何年もかけて出した研究結果を、せいぜい400字以内(新聞の場合)か、数十秒(テレビの場合)に要約して理解する…。かなりのむちゃぶりだなあと。

しかも、マスコミの担当記者は、一つの研究成果をじっくり理解してから記事を書くだけの時間的余裕がありません。そのせいで、「要約するとニュースはなんですか?」「研究の目玉はなんですか?」という性急・短絡な質問になりがちです。

読者も、背景や意義の理解にじっくりを取り組んでくれるわけではありません。ヘタしたら、記事やニュース画面の見出しをぱっとみて終わりということも。

その結果、研究者側にマスコミ対策のノウハウが蓄積され、一般受けを狙った発表内容に進むケースも多々ありました。

両者のそういうことの繰り返しが、今回の「PTSDがテトリスで治る」みたいな記事がうまれてしまう下地を作っているように思います。今回の記事でも、「テトリス」じゃなくてもいいのに、あえてテトリスを使って、マスコミへの露出を狙ったのかな、と勘ぐってしまいました。

高度に専門的な内容で、かつ一般人に知らせたい内容を、どうやって伝えるか。これは重要なテーマですよね。

マスコミは「百貨店」ですから、マニアックな品揃えはできません。そうすると、インターネットを利用し、文章・イラスト・ウェブデザインなどのプロに外注して、わかりやすい「研究成果発表ブログ(HP)」を作るしかないのかなあと。

『PLoS』はオープンな研究成果発表サイトですが、研究者・専門家向けですよね。仕組みとしては一般人の無料アクセスも可能ですが、実態としては、素人が気軽に論文を読もうという気にはなれない作りのように感じます。『ONE』ができたのも、本体のビジネスモデルが計画倒れだったから、ということなんですよね。

なので、一般人バージョンがあればいいのかなあと。マスコミも記事化の際に参照し、ずさんな報道が減るのかなあと思ったりします。われわれ、フリーの仕事も増えるかもしれませんし(笑)
by rio (2009-01-29 08:53) 

まりふぁな

すっげ~…VQさん、ありがとうございますm(_ _)m
なんと、ほんとは実に合理的というか科学的な研究やったんすねぇ?
ご解説いただいてよぉやっと本当のカタチが理解できますた。

しかし…そぉいう研究やったんなら、Technobahnの紹介記事があまりにも
酷いデキでホームズ博士が気の毒過ぎますよね↓
てっきり夕刊フジ並みの超適当ゴシップかと思ってましたよ。

てかもしかVQさんのフォローがなきゃrioさん筆頭にここの住民こぞって
ホームズ博士を誤解したままでいたかも?って思うとぞっとします(滝汗;

rioさんのお聞かせくださった背景も「さもありなん」ですよね。
でもなぁ…「治療」と「防止」じゃでんでん意味変わり過ぎっすよ。
文字数的な部分では大差なく収まると思うし、この件に関しては
記者サン自身がきちんと消化でけてへんかったんでしょね。
なんか伝言ゲームの恐ろしさを改めて感じる…けど英語は読めネっす↓

それにしても。

元来トリアタマなワテクシ、脳トレ+ボケ予防?のために♪とばかりに
ヒマさえあればリバーシ(オセロ)や落ちモノ系のパズルゲームを
せっせこせっせこやっとったんですが、実はそれこそが「トリアタマ度」を
加速させてたかも知れんワケですか… アナオソロシヤ…orz
by まりふぁな (2009-01-30 01:14) 

rio

>まりふぁなさん、改めて読み返してふと思ったのですが、激しい動きと動体視力が必要なスポーツ、バレーもそうですか、テニスとかボクシングとか、そういうスポーツをやっていると、記憶の定着が妨害されるということになりそうですよね。

ということは、たとえばバレーは3日やって1日休むみたいな感じにして、休みの日はお勉強にあてる(イメージトレーニング)なんてことをすると、もっと賢いプレーができるようになるのかも。
by rio (2009-01-31 07:34) 

AK-774M

ゴルゴでPTSDにリバーシ(オセロ)が有効だって描いてあったから、ググったらこちらに付きました。

感情と視覚(テトリスの場合には運動神経と聴覚も)を上書きして、同じ情報が繰り返し再生して固着化するのを防いだり、希薄化するのか。
なるほど! その発想は無かった。
テトリスの産地であるオソロシアでも、アフガンやチェチェンのPTSD対策にテトリスを使ってるのかなぁ……。

ちなみに、寝てたらあの画面でブロックが落ちてきて飛び起きたことが数回あるけど、これも超軽いけどフラッシュバックw
by AK-774M (2018-03-14 23:52) 

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