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もし言葉が/谷川俊太郎 [レビュー]

いくつか持っている詩集のなかで、いちばんのお気に入りがこれです。

これが私の優しさです―谷川俊太郎詩集 (集英社文庫)

これが私の優しさです―谷川俊太郎詩集 (集英社文庫)

  • 作者: 谷川 俊太郎
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1993/01
  • メディア: 文庫
音楽でいえば「谷川俊太郎のベストアルバム」って感じの一冊です。教科書に載った『二十億光年の孤独』『朝のリレー』『空に小鳥がいなくなった日』も入ってます。素人時代の中島みゆきがデビュー辞退を申し出るほど衝撃を受けたという『私が歌う理由(わけ)』も入ってます。

表題となっている『これが私の優しさです』は、私の物の見方、考え方の基盤になっています。そういう詩がほかにいくつもあって、『もし言葉が』もその一つです。

もし言葉が/谷川俊太郎(『あなたに』より)

黙っていた方がいいのだ
もし言葉が
一つの小石の沈黙を
忘れている位なら
その沈黙の
友情と敵意とを
慣れた舌で
ごたまぜにする位なら

黙っていた方がいいのだ
一つの言葉の中に
戦いを見ぬ位なら
祭りとそして
死を聞かぬ位なら

黙っていた方がいいのだ
もし言葉が
言葉を超えたものに
自らを捧げぬ位なら
常により深い静けさのために
歌おうとせぬ位なら


これと対になるような詩『沈黙』も収められています。

沈黙/谷川俊太郎(『六十二のソネット』より)

沈黙が名づけ
しかし心がすべてを迎えてなおも満たぬ時
私は知られぬことを畏れ―
ふとおびえた

失われた声の後にどんな言葉があるだろう
かなしみの先にどんな心が
生きることと死ぬことの間にどんな健康が
私は神―と呟きかけてそれをやめた

常に私が喋らねばならぬ
私について世界について
無知なるものと知りながら

もはや声なくもはや言葉なく
呟きも歌もしわぶきもなく しかし
私が―すべてを喋らねばならぬ

メッセージを発信することの意義は、この2つの詩の中にあると思うのです。立場の違いは関係なく、マスコミでも政治家でも個人のブログのやりとりでも、それは同じことのような気がします。文章技術の有無も会話術の巧拙も関係なく、ただ必要なのは覚悟なんだろうなと。

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コメント 9

しっぽなし

こんばんは。

コメントを書くことにもかなり慎重になるわたしですが、それでも送信してから悩むことも多々あります。それはやはり書いたことに対して覚悟が足りないんだろうなと。
自分の思ったことを100%正確に伝えることは難しいことですが、自分自身が納得して伝えていければいいなと思っています。

ご紹介のあった詩、すんなりと意味を受け取るにはまだ修行不足なので、これをきっかけに音読してみようと思います。
by しっぽなし (2009-02-13 21:16) 

夕焼け

とてつもなくお久しぶりです。夕焼け(小太郎)です。最後の
>~ただ必要なのは覚悟なんだろうなと。
というのに禿げ上がる程同意です。rio殿を肩車して街を歩きたい気分であります。「心のもちよう」っていうんですかね、そういうのワタクシ常々心がけるというか肝に銘じている事なんですが、ワタクシが書くと犬の遠吠えと申しましょうか、どうもバシッときまらないんですよねぇ^^
「人は言葉よりも相手の態度で判断する」と佐藤一斉さんの「げんししろく(漢字忘れた^^)」に書かれてました。覚悟という言葉でフト思い出した次第であります。

ワタクシはポンポンコメントを書き込むタイプなんですよね・・・しかも読み返さないで送信するので誤字脱字がさらけ出るのがワタクシのコメントの特徴になっております・・・これは覚悟、姿勢というより「人間としてどうなの?」と突っ込まれそうです・・・ちょっと反省・・・

ついに不況の波がバレー界にも・・・なんか寂しいですね。
by 夕焼け (2009-02-13 22:44) 

rio

>しっぽなしさん、私もよく悩みます。悩むのはいいことではないでしょうか。悩まないほうが怖かったりするんだと思います。

谷川さんも二つの詩の中で、”メッセージを発する”ということに関して悩みまくっている心情を率直につづってますよね。で、心が折れそうになって「神」とつぶやきかけるわけですが、その思いを断ち切って、「喋らねばならぬ」というところに戻ってきています。

どんなにささいな、個人的なことであっても、悩んだり迷ったりしてよく考えた上での一言であれば、相手の心に届くように思います。
by rio (2009-02-14 03:05) 

rio

>夕焼けさん、「禿げ上がる」の一言に敏感に反応してしまうお年頃の私です。あ、まだまだぜんぜん大丈夫なんですよ。先日も散髪屋ですいてもらいましたし。

「表現は心のストリップだ」みたいなことを言われますが、その中でも、文字を使って表現することは、その「人」がいちばん出るような気がします。

腹をくくって書いたことなら批判を受けてもすぐには引っ込めないでしょうし、むしろ批判を取り込んで、レベルアップしたメッセージに発展させようとすると思います。

などと、アソーみたいなのが首相をやってる国の人間が言ってもでんでん説得力がないところが悲しいですが、最近そんなことを思って記事を書きました。

バレー界そのものの存続がさらに危うくなってますよね。病気にたとえるのはあまりよくないですが、いまのバレー界は脳死状態だと思います。心臓はかろうじて動いていたのに、だんだん鼓動が弱くなりつつあるような…。
by rio (2009-02-14 03:25) 

夕焼け

こんな時間ですが続けてコメントします。
昔、詩については「さっぱり読んでないなぁ、好きな詩人はサムエル・ウルマンかなぁ」なんてベリーロールで書いた記憶があるのですが、谷川俊太郎さんは勿論知ってますよ。ワタクシにとっては詩人というよりも作詞家としての印象が強いかなぁ。というより残念な事に谷川さんの詩集を読んだ事がないんですよね・・・
音楽なら作曲のほうにどうしても興味がいってしまうタチでして・・・古賀政男さん遠藤実さんなどが世にだした曲もそうですし、谷川さんが出した歌詞もそうですし、昔の曲っていうのは「魂」を感じますよ^^昔から日本というよりアジア全体がペンタトニック(基本5音)で曲を作ってたんですよね。日本だと大体がヨナ抜き(ファとシの音階を極力使わない)でした。沖縄は島唄に代表されるようなニロク抜き(レとラ)でした。で偉人達がドレミ音階で日本の音楽を改革(しかも鍵盤ではなくほとんどがギター)していくのですが、その疾風の時代に谷川さんも多くの影響を残したんですよねぇ。シンプルでありながらも究極と申しましょうか、深いんですよねぇ~オーケストラ、オペラは別モンなんですが、ビートルズに似た深さを感じますよ。

ブログをする側の覚悟、コメントを書き込む側の覚悟、その姿勢は大事なんでしょうがワタクシは「背伸びをせずにありのままの自分で接しよう」というのを心がけてます~基本は「勉強する」というより「楽しむ」という感覚でしょうかね^^

コメントを書くにしても「ストレス発散」「自己防衛」などの相手の意見(世界)を鼻から受け付けないタイプもありますが、それは自分の世界というのに境界線を引いているんかも・・・「俺の限界はここまでだ」って言ってるようなもんで、それ以上視野が広がる事はない。何かそういうのって残念やなぁ~荒らしはほっておくにしても、ヒステリックなコメントが結構多いんよね・・・

ワタクシがスポナビ+でコメントデビューした時には既にrio殿はある方と戦略、戦術面での意見交流をしていたような・・・ひょっこり復活してくれるのを待ちましょう。

不況の影響からかバレーにも湿っぽい話が増えるかもしれませんが、ワタクシなんかは「ヌルい」と言われそうですが、基本は「ケセラセラ」でいきたいですねぇ^^
by 夕焼け (2009-02-14 03:47) 

夕焼け

あれれれ??起きてんの??こんな時間に??

アソーですか?実は私設秘書のYさんというのがアソーさんについてるんですがワタクシ友達ですよ^^いつも口臭ガム噛んでます^^
え?ワタクシの選挙区ですか?福岡2区、勿論山崎拓大先生ですよ。
ワタクシの後輩と申しましょうか、部下が学生時代に小料理屋でバイトしてたのですが、卒業で店を辞める時に常連の拓から「4年間お疲れ様、社会に出ても頑張れ」と5万円だったかな?貰ったそうです。それが税金から出したのかは謎です。

あ、因みにセクハラは無かったそうです。拓1ポイント評価アップです。あと50ポイント溜まるとようやくマイナスから脱出出来ます。頑張れ拓。
by 夕焼け (2009-02-14 03:59) 

rio

>夕焼けさん、以前の詩は茨木のり子でしたね。覚えていてくださってありがとうございます。

私は音楽にとんと疎くて、好きな曲はすべて歌詞から入るタイプです。世の中でいちばん嫌いなレジャーはカラオケだったりします(^^;

谷川俊太郎、ウィキペディアで見ると校歌を作りまくってますね。歌詞のほうはいままでちゃんと読んだことがないのですが、こんど機会を見つけて鑑賞してみようと思います。

ブログはありのままがいいですよね。ストリップですから(笑)。かっこつけてみても、本人が思ってるほどにはかっこよくは見えないものですし。直接しゃべってると、表情や口調や環境などでいくらでもごまかせますが、文章はそうはいきませんからねえ。

以前から疑問なんですが、いわゆる「炎上」とか「まつり」とかいう現象は他国にもあるのかなあと。なんかこの現象、子ども時代に家庭や学校で議論のやり方を叩き込まれないことが影響しているような気がしてなりません。プラス、油断するとすぐに”集団狂気”に陥ってしまう日本人の心性があるのかも、とか。

言葉って作用反作用ですから、強く言えば強く返ってきますし、柔らかく言えば柔らかく返ってきますよね。ほめたときも批判したときも。熱中して書いてると、ついつい、そのさじ加減を忘れてしまうことがあります(^^;

きょう、テレビでスケートが取り上げられていました。ながら見だったのでくわしくは覚えてませんが、廃部になったチームの選手たちの苦労話がいろいろと語られていました。

バレーでも、堺ブレが誕生したとき、選手がチケットを手売りするなどの苦労話が新聞で連載されていた記憶があります。

「為せば成る為さねば成らぬなにごとも」ですが、バレー界のトップ(JVAも選手も)は、「成らぬは人の為さぬなりけり」ばっかりですね。

それにしても、山拓をアレしてるところのご出身だったんですね。madokaさんとご近所さんなのでは。

小料理屋のエピソード、さすがにそれはポケットマネーではないでしょうか(笑)。腐っても派閥の領袖ですから、5万円ぐらいは出しそうです。

山拓は国防族ですよね。昔はかなり右よりのイメージでしたが、小泉の台頭でさらに右ができてしまい、いまではまるで中道であるかのように見えてしまいます。ということを、山拓自身が言ってました。

次の総選挙は落選濃厚という見方が支配的だそうです。嫁も娘ももううんざりしてそうですし、派閥から首相や大臣をだすどころか、政権もあやうい状況です。岡山でトラ退治されたおっさんみたいにかっこわるいことになる前に、引いておいたほうがいいような気がします。
by rio (2009-02-15 05:42) 

NO NAME

詩の全文転載は著作権侵害ではありませんか?

by NO NAME (2009-05-23 16:46) 

rio

>NO NAMEさん、ご意見ありがとうございます。

私は「著作物(詩集)」の中から「引用」(複製ではなく)したという理解です。著作物からの引用は、全体の半分を超えない範囲で許されています。

しかし、「詩の場合は一編ごとに作品として独立しているので、全文転載は著作権侵害だ」というご意見もあり得ると思います。

谷川俊太郎さんがそのようにお考えになり、ご本人から削除するようにとの要求があれば、それに従います。
by rio (2009-05-23 22:20) 

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