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『Frindle』でちょっと泣きそうになったり。 [レビュー]

買って途中まで読んだままになっていたことを思い出し、引っ張り出して最後まで読みました。アメリカなどでロングセラーになっている児童書『Frindle』(洋書)です。

Frindle

Frindle

  • 作者: Andrew Clements
  • 出版社/メーカー: Aladdin
  • 発売日: 1998/02/01
  • メディア: ペーパーバック

表紙のど真ん中にそびえたっているのがFrindleです。ただのボールペンやん!と思った方はもう術中です。舞台はアメリカ。「考えることが好き」な主人公・ニックの思いついたことが地元でじわじわと広がり、ローカル新聞に取り上げられ、その記事を読んだローカルTVに取り上げられ…と騒動が展開していくお話。

全編を通じたメインテーマは「ことば」です。世界の片隅で生まれた一つの「ことば」が、たくさんの「ことば」を通じて大きく変貌をとげていくところが醍醐味です。

「ことば」がテーマのお話なので、サブストーリーもすべて、「ことば」にまつわるあれこれです。

そのなかでも秀逸だと思ったのが、マスコミ(とそれを取り巻く人々の行動)の描き方。とてもリアルです。単純な良し悪しで決めつけるのではなく、マスコミがどういう論理で動いていて、それが”結果的に”人々にどういう影響をもたらすのか、その部分を中立の目線で丁寧に描写しているのです。

日本でもようやく「メディア・リテラシー(media liteacy)」の必要性が語られるようになりつつありますが、カタカナ語で輸入してしまっているせいか、ただマスコミを否定すればいいと誤解されているフシがあります。本来の「メディア・リテラシー」は「情報を識別する能力」を指す言葉で、マスコミ情報を鵜呑みにしたり、その裏返しで根拠なく否定したりするのではなく、一つ一つを評価できるようになろうね、ってやつです。

この本は児童書なので、そういう小難しい用語は出てきません。素朴なお話の積み重ねで、自然と「メディア・リテラシー」が身につくように工夫されています。日本の児童書でこの手の話題を扱っているものはあるんでしょうか。ちょっと思いつきません。

もう一つ印象的な「ことば」が、ニックが先生から受け取る手紙です。これまた素朴で、感情的でも事務的でもない淡々とした内容。なのに、このくだりをマクドナルドで読んでいて、チーズバーガーをかじりながら思わず泣きそうになってしまいました[小雨]

小学生低学年向けの本なので、日本の中学英語レベルがあれば辞書なしで読めます。リスニング用のCDも出ているようで↓

Frindle

Frindle

  • 作者: Andrew Clements
  • 出版社/メーカー: Listening Library (Audio)
  • 発売日: 2004/09/14
  • メディア: CD


ほしい…とか思ってみたりして。


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area71

面白そうなものの紹介をいつもありがとうございます。早速注文してみます!
by area71 (2009-05-27 20:08) 

古都の侍

こんばんは。

「情報倫理」と言うよりもむしろ、「情報と向き合う姿勢・客観的に情報と対峙すること」と言うのが、“メディアリテラシー”というものではないかと、勝手に思っております。

近頃じゃ、ぼちぼち中高教育で語られるようですが、それも学校によって差は激しいらしいですね。
高校だと「情報」と言う授業で扱われはずですが、それも進学校だとか私学(進学優先校)ならば軽くあしらわれる・扱われない可能性は大ですね。

だいぶ以前の記事にあったはずの「馬鹿を生み出さない教育」の問題にもつながりますよね。

by 古都の侍 (2009-05-27 21:25) 

rio

>area71さん、ノルウェーなら選手たちの中に読者がいるかもしれませんね。マーティの本、半分まで読みました。私にまったく備わっていない能力レベルのところで展開されているので、すごく新鮮です。知りたい欲求がうじゃうじゃします。
by rio (2009-05-27 21:47) 

rio

>古都の侍さん、ミもフタもない言い方をしてしまうと、メディアリテラシーを理解できていない大人は、子どもにその大切さをきちんと伝えられないと思います。

個人的な経験からいうと、学校の先生といえども、レベル差がものすごくあると感じました。本当に怖いのは、マスコミを敵視して全否定する先生よりも、マスコミを神聖視して全肯定する先生です。そこにイデオロギーがかかっていたりすると最悪です。

ちょっと賢い子なら、全否定する先生のうさんくささはすぐに見抜きます。若さにまかせて戦うこともあるでしょう。でも、ほほ笑み仮面で迫ってくる全肯定の先生に対抗するのは至難の技。いや、”対抗する”という発想すらうまれないまま取り込まれてしまうことが往々にしてあるように思います。

『Frindle』に登場する先生は、↑このどちらのタイプとも違います。そこが物語に深みを与えていると思います。
by rio (2009-05-27 21:59) 

ka!

rioさんこんにちは。

面白そうな本ですね。
英語の勉強にもなりそうです。

私はつい最近までマスコミ情報を鵜呑みどころか、「考える」ことを放棄していまっていました。
「なんかおかしいなぁ~」と思い始めたのはバレーを観はじめてからで、「鵜呑みにするのは危険だ!」と思い始めたのはrioさんとこ来るようになってからです・・・。
いや、お恥かしいはなしですが(笑)
rioさんの記事からいろいろ勉強させてもらっていますよ。
by ka! (2009-05-31 17:10) 

rio

>ka!さん、この記事を書いたあと、児童書分野で日本語訳が出ていることを知りました。『合言葉はフリンドル!』というタイトルです。

日本語訳はおそらく小学校中学年向けで、一瞬で読めます。ただ、挿絵の雰囲気が漫画的なことと、文体(会話も)が”子供向け”に味付けされているので、教訓的なニュアンスが強く出てしまっているのが残念です。

日本語訳は原作にかなり忠実だという印象でしたので、どういうお話か知る意味では、こっちのほうが早いかもしれません。きっともよりの図書館に入っていると思います。お試しください。
by rio (2009-06-01 08:42) 

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