リオ五輪・カメルーン戦 田代が雰囲気をつかんだようなので。 [バレーボール]
予選第2戦のカメルーン戦、危なげある立ち上がりながら終わってみれば大差のストレート勝ちで何よりです。五輪に飲み込まれてしまった感がある宮下に代わってコートに立った田代が、見事にチームを立て直しましたね。彼女が1セット・25点の取り方を逆算して構想できているようなら、このままメインで使っていったほうがよさそうです。
宮下のほうがブロック、サーブ、レシーブは上ですが、そういう゛オプション”ではなくセッターはやはりセットアップで評価されるべきだと、あのゾルジ兄貴も言ってました。今の宮下だと、次のブラジル戦は戦わずして負けてしまう可能性があり。だったら、田代に賭けてみたいところです。
そんな仕切り直しのスタメンはこちら。
宮下⇒田代 島村⇒山口 石井
木村 荒木 長岡 L佐藤
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モマ アボア(MB) ナナ
ファジャ フォソ(MB) クウラ(S) Lナセル
それにしてもカメルーン、初日のブラジル戦では第2セットで21-25まで迫る粘り強さを見せ、続く日本戦の第2セットでは一時期9-4と走る大活躍。解説席のテラマワリンが「オリンピックを通して力をつけてきているのでは」と頓珍漢なことを言ってましたが、゛解説”するんだったら対戦相手の試合ぐらいちゃんと見ておいてほしいです。カメルーンは五輪までに守備をしっかりと練り上げていて、ブラジル相手にその実力をいかんなく発揮していたのですよ。
第1セットを落とした後、第2セットでぐぐっと迫ってくるのは、カメルーンの個々の選手の能力、チームの組織力、監督の指導力が高い証拠。第1セットの結果を素早く分析してチームにフィードバックし、選手がそれを理解してプレーに反映しているから接戦になるんですね。もはや一昔前のアフリカチームとは違うなという印象です。
しかも、カメルーンは第3セット、セッター対角のモマと左利きでレフトのナナを入れ替えています。 そのモマが迫田のサーブで崩されると、すかさずサーブレシーブからはずしてナセルがカバーするシフトに変更する手も打ってます。こうした複雑な変更でも混乱せずにできるのは、練習してきたからこそですよね。練習でやってないことを本番でやって大混乱していたどこぞの男子チームは彼女たちの爪のアカを煎じないまま飲めばいいと思います。
なんかもう、一気にカメルーンのファンになってしまいました。タイに続いて面白いチームが出てきたなと。なのでもうちょっとカメルーンの話を続けましょう。ブラジルも日本も、カメルーン相手に慣れるまではやりづらさを感じたと思うのですね。ねじ伏せて終わり、というイメージのはずが拾われるしブロックされるし、切り返しも決められるし、なんだこれ?って。
たぶん、それはカメルーンの独特のリズムのせいでしょう。例えばブロック。ブロックジャンプが高くて腕が長いので、かわした!と思ったタイミングでもまだ手が残ってるんですね。ブラジルはそこに真正面からばかすかぶつけてシャットアウトされたり、苦し紛れの山なりフェイントを打って拾われたりしていました。
また、センターが遅れながらサイドのヘルプに跳んだとき、欧米やアジアのチームは斜め跳びになって手のヒラが出ればいいほう、ヘタすると腕も曲がってただ利用されるだけ、というブロックになっているケースが多いかと。ところが、カメルーンは斜め跳びのはずなのにひじから上ぐらいがしっかりそろって出てくるんですね。跳躍力と体幹の強さ、ハンパないっす。
なので、日本が誇るへなちょこクイックを武器とする山口を投入したのは、日本にとっては大正解でしたね。カメルーンは山口に慣れていないため、白帯の下でセットされてネット上にボール1個分しか出ていないような異様に低い攻撃=おそらく見たことがないと思われる攻撃に、フルジャンプでブロックに跳んでしまってたんですね。その腕にボールをあてて落とされるなんて想定外。そんなボールを拾う練習もしていない。なんじゃこりゃ???と思っている間に日本にたたみかけられた、という感じでした。
でもたぶん、カメルーンがその攻撃に慣れていれば、ブロッカーが降り際に手を伸ばして拾ってしまうと思うんですよ。実際に、ブラジル戦ではブロックを利用されたり、吸い込んだりした打球をそうやってひょいひょい上げてましたから。
独特のリズムはレシーブもそうですね。長い腕を振ってすくい上げるスタイル。画面からははっきりとはわかりませんが、おそらく勢いがしっかりと殺されてふわっとした球質になっているのかなと。ボールの軌道に入るのが速いからこその技でしょう。日本はボールが腕にぶつかって直線的に飛んでいった、みたいなレシーブが目立つので、この辺りはカメルーンが上でしょう。
そしてアタック。カメルーンの両足踏切のクイックは基本的に、ボールがセッターの手を離れてからジャンプしています。なのに十分な高さを確保していて、コースに打ち分ける余裕すらある。それとシンクロするサイドもほぼ同じ(わずかに遅い)タイミングでジャンプしているので、トスがサイドやバックに振られたときには結果的にものすごく速い時間差攻撃になってます。
一方、片足踏切のクイック=いわゆるブロード攻撃は、トスが上がる前にジャンプして空中で移動しながらボールを待ってます。特にフォソの移動攻撃がこのパターンでした。日本戦ではいまいちでしたが、ブラジル戦では片足でどれだけ跳ぶんだという超人ぶりを発揮。しかも、アメリカのアキンラデオ顔負けの高さを見せてました。片足踏切でストレートに打てるようになれば世界レベルでしょう。
豊かなジャンプ力をフル活用した攻撃パターン、ネットから離れた位置から体重を乗せて打ってくる打球、さらに訓練の成果がうかがえるブロックアウトの技術。これで攻撃のミスが少なければ、そしてサーブがもっと強ければ、世界ランキングで第2集団ぐらいには入ってきてもおかしくないチームですね。今後が楽しみです。
とまあ、カメルーンをほめたたえたところで、終わってみれば日本の圧勝なわけで、田代の組み立てでアタッカー陣が調子をつかんだように見えたのは何よりです。宮下は気持ちを切らさず、田代が行き詰ったときに何ができるかを考えながら試合に臨んでほしいですね。
そしてもう1人。まだ覚醒しきれていないのが守備の司令塔=佐藤。五輪に来てもまだ毎試合、お見合いをやっているようではダメでしょう。選手間にきたボールはすべて自分で取るつもりでやらないと。サイドが拾うとそれだけチームの攻撃力は下がるわけだから。各方面からずっと指摘され続けているこの課題、五輪のぎりぎりの場面でぼろっと出てしまって悔やんでも悔やみきれない……なんてことにならないように、神経を研ぎ澄ませて守ってほしいです。
(おまけ)
実況が「過去に日本とカメルーンとの対戦はない」と言ってましたが、ほんとかな?あったような気がするけど、それは男子だったのかな?
はじめまして。
日本をきちんと研究し、日本のフェイントを確実にケアしてくる、「勝つ為に着実に努力を重ねている」ことが窺えるカメルーンに対して、「意外(と言っては失礼ですが)」などと寝惚けたことを言う実況に憤ってしまいました。ここまできたらもはや差別なのでは?みなさまのNHKはそれでいいんだろうか。
宮下は辛いですね…竹下の場合はシドニーの挫折後、結果的にNECのドグマから離れることになった訳ですが、彼女も五輪が終わったら教祖から離れることを考えるべきだと思います。(そもそも中学時代に宮下を見いだしたのが河本氏なのでなおのこと難しそうですが。)
山口は代表でもシーガルズ式の入れとけサーブをぶっ放してたわけですが、宮下の場合は、本人の性格的にも周囲からの期待値的にも耐えられない。だからあんなに辛そうなのだと思います。
あるいは代表から離れるか。それはそれで本人的には幸せかもしれません。
by Hiro (2016-08-09 10:26)
レセプションについて、石川が永野に「自分はどこまで取りに行ったらいいのか」と聞いたら、「行けるところまで行ってくれ」と言われたことがあるようですね。
石川と永野も、よくお見合いしてましたからね。
石川としては、もっと永野に取ってほしかったんだろうな。
攻撃に集中したいですもんね。でも永野からは思いもよらぬ返答が。。
男子もそうなんですが、何故、さほどボールに執着しないリベロが代表に選ばれてしまうんでしょうか。
佐藤が最終メンバーに選ばれた時、ヤな予感しかしませんでした。
そしてやはり、OQTの時と同じような動きで、チームの足を引っ張ってる。
韓国戦ではレセプション時に、お見合いだか目の前ポトリで相手に点を献上した後、彼女自身のラインのジャッジミスで連続失点を喫した時には、頭を抱えてしまいました。
解説者にも「リベロはもっと守備範囲を広げなければなりません」などと言われる始末。
・・・え~と、彼女は、他のリベロより何が優れていて選ばれたのでしょうか。
あと、セッターのことですが、OQTでも田代の方が上手くいってましたよね。
何故また宮下をスタメンに戻すのでしょうか。
もう、田代メインにした方が良さそうですね。
by しょう (2016-08-09 11:30)
カメルーンの移動攻撃、私もそう思いました。
トスが上がって、それを空中で移動して打ってる!
完全に体の前で思い切り打ってるので、ブロックがついてきても、はじきとばしてるんですよね。
それにしても、カメルーン=アンパイって思ってた自分が恥ずかしい。
日本のレシーブが返らない→宮下の打ちにくいトス→日本の中途半端なスパイク→カメルーン拾う→カメルーンが思いっきり打つ→日本レシーブできない・・・で、え?カメルーンが勝つんじゃない??みたいな。
なんか消化不良の日本に対して、カメルーンは生き生きとプレイしてました。
なんだろう。何が悪いんだろう。
そうそう、素子さんについては、管理人様とは、話すととても長くなりそうです。(笑)
素子さんのサーブレシーブは、長い腕を板のようにして、体の芯でボールの勢いを殺すようにして返すので、セッターはとてもトスを上げやすかったと思うんです。
で、当然打ちやすいトスがくる。素子さんがドンと決めるという。
素子さんはなぜメダルがとれなかったんだろう。今ピークの状態で全日本にいたら、間違いなく中心選手ですね。
by デイちゃん (2016-08-09 14:37)
こんにちは。
いつも楽しく読ませて頂いています。
カメルーン戦、無意識に途中からカメルーンの応援していました。
なかなか面白いチームですね。
これからぐんぐん育っていきそうで、楽しみです。
私も宮下への期待は昔からあって、やはり身長、レシーブ、サーブ、本人の真面目さは良いと思うんです。
トスも冷静な時はまぁ捌けてるとは思うのですが、、。(Vリーグ含め)
まだ若いし、経験不足は否めない。
でも、セッターって育つのに時間がかかるから、優しく見守っています。東京の次くらいのオリンピックでは良い選手になってる気がします。
宮下がダメな時の田代は姉御っぽくて頼りになりますね。
ほんと、田代が通用しなかった時何が出来るのか、宮下にはコートの外から勉強して頂きたいです。
私的には、もっと石井に活躍してほしい!
本来、凄く上手い選手だと思っています。
コース打ちも軟打もフェイントも、天皇杯決勝では神がかってたし、まぁレセプションはアレですけど、、。
迫田みたいな不器用なタイプは宮下と合わないですね、器用な子じゃないとあのトスに合わせられない。
迫田のドシャが、清水のドシャに見えてイライラする時があります。
あと、シーサーの存在価値が相変わらず良く分かっていません、私。
最後に、私は一番変わってほしいのは佐藤あり紗です。
もっと貪欲に取りに行って欲しい、レセプション磨いて欲しい、2段トス安定させて欲しい、佐藤あり紗が豊田合成のリベロの人みたいになればいいと思いました。
by 絢 (2016-08-09 18:35)
空前絶後の、完全away試合!
《伯剌西爾戦》じゃア・・・『1set』奪取目標ディっ!
by M.H (2016-08-09 19:57)
>Hiroさん、そうですね。代表の期待やプレッシャーに耐えられない、その試練を乗り越えられない選手は、代表を去ったほうが幸せでしょうね。
バレーに限らず、そういう選手は少なからずいます。そのままになった人も、やっぱり競技に戻ってきた人も。
宮下は代表選出当初、周りから五輪、メダルと言われてもピンとこなかったみたいですし、真鍋監督の指導も信頼できなかったみたいですから、義務感と責任感だけでやっていて楽しくないのかも。
一方の田代は゛挑戦者”な感じで、自分の技を全部出してやろう、存在をアピールしてやろうという野心にあふれてました。それが次々に決まって、相手がカメルーンだったからとは言え、楽しかっただろうなと。
宮下は中学生の頃から代表が既定路線だったために、その゛当たり前”から離れてみることも大切かもしれませんね。
by rio (2016-08-09 23:56)
>しょうさん、永野、そんなこと言ってたんですか?どの職場にも必ずいる使えない先輩の典型ですね。
優秀な後輩が入ってきて鋭い質問をする。暗愚な先輩は答えがわからず、しかし沽券にかかわるのでわからないとは言えない。その結果、ありがちな回答3パターン、「できるだけやれ」「思い通りにやれ」「自分で考えろ」。石川が加藤陽一の時代にいればよかったのに。つらいですね。
佐藤のディグはいいと思うんです。2段トスもオーバーハンドできれイに上げられますし、アタックライン後方で踏み切ってのジャンプトスもできます。ただ、その技を出せてないですね。
一方、レセプションは思った以上にダメですね。自分の守備範囲でも安定しないので、他の選手のカバーに行く余裕がないんでしょうね。一方、石井はサーブで狙われることにネガティブな感情しかないから、自分の守備範囲じゃないところに来たと思ってしまったらもう足が動かないという。
要するに、チームとしての練度が不十分なままきてしまったという感じです。ただ、それは日本だけではなくたいていのチームがそうだと思うので、この予選でピークに持っていって予選突破⇒準々決勝突破を目指してほしいです。
by rio (2016-08-10 00:06)
>デイちゃんさん、モトコさんがメダルを取れなかった発端は、ソウル五輪のペルーの実力を見誤り、なめてかかって負けたからですね。
そのショックから立ち直れないまま3位決定戦で中国に惨敗。帰国したら、モトコさんいわく「手のひらを返すように」バッシング&周りに誰もいなくなったと。そこから、世間的にはバブル崩壊でも、全日本女子的にはバレー崩壊の90年代。正直、メダルどころじゃなかったですよね。
昔話はさておき、カメルーンの監督さん、村の長老のような落ち着いたたたずまいのあの方、気になりますね。サーブの狙いが的確ですし、セット間も熱心に指示を出してますし。FIVBは推薦枠でドミニカなどを育ててきたわけですし、次はアフリカに着手してほしいと思います。
by rio (2016-08-10 00:28)
>絢さん、宮下について私も同感です。20歳そこそこでファンをうならせるようなトスワークを見せたら世のベテランセッターのメンツが立たないですよね(笑)
ブラジルのフォフォンが五輪金メダルをとったのが38歳、今大会に出場しているイタリアのロビアンコは36歳、竹下も30歳を過ぎてから世界バレーと五輪のメダルに手が届きました。いずれのセッターも10年以上、代表セッターに選ばれ続けています。宮下の10年後を考えると、今のこの試練はきっと役に立ちますよね。
トスの技術でいっても、現時点ではやはり宮下>田代だと思うんですね。意識的に高い位置でセットしているのも宮下です。自信持ってほしいです。
石井も自信をもってほしい。サイドアウト係、みたいになってたらだめですよね。フィニッシャーとしてブレイクポイントを取りまくらねば。佐野・新鍋でがっちりだったロンドンのときの江畑と比べて守備の負担が大きいことは否めませんが、各国どのチームにもそういう選手はいるんだから、という。
シーサーはほんと、苦肉の策ですね。佐藤・木村・石井ではレセプションが安定しない。佐藤が得意なはずのディグでもいまいち(現時点では全選手中10位ですが)。その不安定な返球から攻撃を組み立てるだけの技量がセッターにない。単調になってしまったときに個人技で突破していけるだけのアタッカーが木村しかいない。
悩んだ末のシーサー設置、なんだと思います。その効果は地味に出てるのですが、シーサーが拾ったボールから得点につながってないところがつらいですね。。。
by rio (2016-08-10 01:05)
>M.Hさん、ブラジルはメンバーがほぼ同じなので、真鍋監督としては手の内はわかってるんでしょうね。
ただ、ブラジルのクイックをブロックできるか、移動攻撃を拾えるか、シェイラのバックアタックを拾えるかというと、今のチームでは・・・って感じなところが気がかりです。
by rio (2016-08-10 01:09)