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温暖化/屋根も衣替えしろ、ってこと? [けっこう気になる]

アメリカの国立研究所ってところは、研究資金があり余っているんでしょうか。「地球温暖化防止のためには、屋根を白くすればいいよ」というだけの研究結果を発表したそうです。

夏には白っぽい服を着ると涼しい。当たり前ですね。最近は紫外線対策のために、あえて黒っぽい服を着たり、黒い日傘をさしたりする人がいます。しかし、「涼しい」という点だけを考えれば、だれでも白を選ぶはず。元記事の中にも少し触れられていますが、地中海沿岸、オーストラリア、中南米の一部など、日差しの強い地域の住宅は昔から白壁。「地中海」というだけで、空と海と白い家をイメージするでしょう。

そんなことをご大層に研究してしまうところがすごいなと思います。「常識とされていることにも数値的な裏づけが必要」ということなのかもしれません。でもそれって、国立研究所のような最高機関がやることなのかな。アメリカではそういう位置づけなんでしょうか。少なくとも日本では、この程度のことなら大学生で充分間に合いそう。

もう一つ気になるのは、この研究を発表したのが「ヒートアイランド研究グループ」だという点です。想像するに、彼らは都市部のヒートアイランドをどうやって抑えるか、ということについて考えていたはず。なので、元記事のリードには一応、(白屋根にすると)エネルギーコストの削減につながる」という研究だと書かれています。環境よりも、どちらかと言えば経済よりのにおいがしますよね。

ところが、エネルギーコストの削減→CO2削減→地球温暖化防止、という展開は、いまや”常識”。話はあっという間にすりかえられ、「白屋根にすると地球温暖化防止に役立つ」という結論まで、ウサイン・ボルトのような速さで到達してしまっているんですね。あなおそろしや。

カリフォルニア州ではこの研究成果に基づき、既に2005年から商業ビルの屋上は白く塗ることを義務付ける条例を制定。更に来年からは住居用家屋の屋根に関しても光反射効率の高い寒色系の色に塗ることを義務付けることを予定している。

などという取り組みも紹介されています。なんか『Back to the future』のように時間のつじつまがおかしいことになってますが、それはやっぱり、ハリウッドを抱えているからでしょうか(謎)。それとも、シュワちゃんに予知能力があるんでしょうか(謎2)。

まあ、年がら年中、日差しが強いカリフォルニアや地中海はいいとしましょう。四季のはっきりした日本で、白屋根なんかにしてしまうと、冬が大変です。白屋根にする前と比べて寒さが増したように感じ、暖房がんがんにしかねません。

それを防ぐ方法はただ一つ、「屋根の衣替え」ですね。5~6月と10~11月の年2回、屋根をお取替えする。瓦葺やトタン葺はすべて白/黒で張り替え。洋風建築やビル・マンションなどは塗り替え。カヤ葺は張り替えも塗り替えもできないので、おむつカバーみたいなのをかぶせてしのいでもらいましょう。その作業コストおよび環境負荷は膨大な数値になると思いますが、そんなことは言ってられません。

「地球温暖化防止」と言えば、いまや、徳川綱吉の「生類あわれみの令」のようなもの。200年後の方々にネタにしていただくためにも、世界中が一斉に白屋根になれば面白いなと思っております。
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なんか勘違いされてる星野監督 [けっこう気になる]

韓国の3大新聞のひとつ、朝鮮日報にちょっと笑ってしまう記事が掲載されました。北京五輪の惨敗→言いわけで批判を浴びた星野監督について、「反撃に出たワケ」と題してもっともらしく解説(?)してみせているんですが。

日本の野球界で最近はやっているのは「星野監督バッシング」だ。

まあ、↑これについてはいいでしょう。「はやりものなんかじゃない!」という反論もあるでしょうが、日本人には、手の平返しで叩きまくる欠点があるのも確か。はやりものと見られても仕方ありません。広岡達朗が「星野がWBCやったら日本は滅びる」と世迷言を言っているのはどうでもよろしい。野球がその程度なら、滅びればよいのです。イチローが「星野なら出ない」と言ったとかいう問題(第1報はAERA)もどうでもよろしい。出たくなければ出なければいいのです。

ただ、これは違いますねえ↓

日本野球界は北京オリンピックで韓国に敗れた全責任を星野監督に転嫁していることになる。

「韓国に敗れた全責任」についてだけではなく、選手選び・スタッフ選びの段階からおかしかったという批判を浴びているわけですから。

それよりも笑ってしまったのはこちら↓

星野監督が反撃に出た背景には、今、自分をバッシングしているのが読売ジャイアンツに近い勢力だと考えているためだ。(原文ママ)

と断言している点。一応、根拠めいたものも書かれています↓

広岡氏は1960年代に巨人のショートとして活躍した名選手で、イチローは巨人でプレーをしたことはないものの、巨人に好意的な発言を繰り返してきた。

さらに、星野がドラフトで巨人に入れなかったことをきっかけにアンチ・巨人の代表格になったことにも触れることで、「アンチ巨人の星野が、巨人シンパに叩かれてほえている」とこじつけているのです。

なんじゃこりゃ?独自取材ゼロ。記事内容はすべて、他マスコミの既報ニュースからのパクリ(引用ともいう)です。いまどき、素人の趣味ブログでもこんな頓珍漢な展開にはならないと思いますが。

北京五輪の惨敗後、真っ先に「WBCも星野で」と言い出したのは、あのナベツネ。さらに、星野監督が言い訳するためだけに2回も出演した『ZERO』は、日テレの番組。この2つの事実だけで、朝鮮日報のこの記事がトンデモ系だということがわかってしまいます。

イ・インムクという記者がどういう人なのか知る由もありませんが、星野監督をかばう理由でもあるのでしょうか。あるいは、イ・スンヨプ取材→代理人かだれかから適当なウワサ話を聞いた→記事にしちゃった、というお粗末な展開なんでしょうか。いずれにしても、この記者がこの記事で、韓国の読者になにを伝えたかったのか。キムチうどんを食べながら考えてみましたが、さっぱりわかりませんでした。

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環境保護を進めると、温暖化も進む [けっこう気になる]

地球温暖化の話で思いがけない盛り上がりぶり。ウェブ上での文字だけのやりとりなので、あまりに攻撃的なやりとりは自重していただきたいところですが、それはともかく、関心の高さに改めてびっくりしています。

いまさらですが、私は理数系がさっぱりです。算数のできなさは別格としても、理科もでんでんだめ。物理の問題に「糸の重さは考えないことにする」なんて書かれていた時点で、問題そのものを考えないことにする学生でした。化学も「なんか、もるもる言うてんなー」で終了。地学は、島が浮いたり沈んだりなんかよくわからない計算が出てきたので終了。なんとか生物でごまかし、算数が必要な遺伝の話なんぞはすっ飛ばしてここまできました。

その程度ですから、電車の中でおばちゃんたちが関東の大雨についてしゃべっていて、「これも温暖化だよねえ」「そうよね、きっとそうよ」なんて言ってるのを聞いても、生温かく見守ってしまうぐらいです。

ところが、そんな私でも理解できる面白い記事を発見しました。スイスに本拠地を置く多国籍研究機関(Institute for Atmospheric and Climate Science)を中心としたグループが、7月、アメリカ系の学術専門誌『Geophysical Research Letters』に論文を発表したそうです。

それによると、まず、

研究グループは過去30年間に渡るヨーロッパの温度上昇は、一般的な地球温暖化現象だけでは説明が付かない

と考えているそうなんですね。つまり、「温室効果ガスの影響もあるかもしれないけど、それだけじゃないと思うよ」というご意見です。

蛇足ですが、日本のマスコミは”CO2"と限定していう傾向にありますが、これはとても不正確だと思います。温暖化をもたらす可能性のある気体を「温室効果ガス」と総称していて、その中で、割合がいちばん多いのが”CO2”ですよね。メタンガスなんかも、温室効果ガスとしてよく話題にされています。この辺の話はまたいずれ。

話を元に戻しまして、この研究グループが探り当てた温暖化の影響の一つがこれ↓

欧州の環境規制の強化を受けて、大気中の汚染物質の濃度が減少し、それが元となり、太陽光が地表にまで到達する率が高まることでヨーロッパ全域での温度上昇が、地球温暖化に伴う理論値以上、上昇する原因になっていることを突き止めた

笑ってしまいました。18世紀の産業革命以降、汚れまくっていたヨーロッパの空。それが、環境規制できれいになって、お日様さんさんになったら「温暖化」しちゃった、という。「ほんまかいな」と思うような話ですが、(たぶん)ちゃんとした学術専門誌が載せるぐらいですから、アカデミックな基準はクリアした話だと思います(政治的意図はともかくとしても)。

この研究が正しいとすれば、もしかしたら、世界中の空がきれいになればもっと気温が上がるのかもしれません。ということは、「温暖化」の主犯は、地球の気候変動だという可能性が強くなりますね。「エコ替え」したり、原発建てたりしても、何も解決しないという結論になってしまいます。だから日本のマスコミは、この話を大々的に取り上げなかったのでしょうか。

この研究グループは、研究結果を受けて、

今後、欧州がより厳しい環境規制を敷けば、敷くほど欧州における温暖化は他の地域以上に進むことになるだろう

と声明を出しています。ここまでくると、「温暖化」を自国の地位の維持に利用したいヨーロッパと、経済活動を停滞させたくないアメリカの綱引き、みたいに思えてきますね。派閥間抗争。

どっちにしても、自販機合計で原発1基分の電力を使いながら、「冷房(暖房)の設定温度を上げ(下げ)ましょう」なんてマヌケなことを言ってる日本は、お呼びではありません。だいたい、「クールビズ」なんて言い出した議員の化粧からして、思いっきり「反エコ」じゃないですか。

それはともかく、この話を読んで、気になったのが北京五輪の男女マラソン。当初の予想では「酷暑」で、どの選手も暑さ対策をしてきていたのに、当日はびっくりするほどの涼しさだったんですよね。それはやっぱり、「空が汚れているから」でしょうか。

あるいは、日本が50年前と比べて温暖化しているのは、あの「四大公害」で大きな犠牲を払い、世界一の”公害規制国”になったからなのかも。すごいぞニッポン!Viva 温暖化!

もう、ここまでくるとなにがなんだか。結局は、お好みに合わせて好きな派閥に所属すればいいのではないか、という気がしてきました。

そんなわけで私は、エコバッグを持って買い物に行ってきます。牛乳のような角が立って重いものを買うときは、丈夫なエコバッグが大変便利です。


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北京五輪、影響が出るのはこれから [けっこう気になる]

北京五輪が閉幕しました。1964年の東京、1988年のソウルと同じく、高度経済成長の中、本音ベースでは「国威発揚」をテーマにして行われた五輪。その影響は、これから次々に出てくるのだと思います。

日本の場合は、開催から20年足らずで世の中が激変しました。核家族化が定着し、バブル経済、政治の流動化、アイドル・お笑いブーム、ファミコン、など、いまの政治・経済・文化の下地になっているのは、ほとんど80年代の出来事です。韓国は日本の半分=約10年で激変。ソウルが世界最大の都市になり、NIEsと言われたグループから抜け出して、ほぼ先進国とみなされるまでになりました。

さて、中国。日本や韓国のような加工貿易国ではなく、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)でくくられる高度経済成長&資源大国です。人口も軍人の数も桁違い。それだけに、影響力は抜群です。さらに、共産主義国なのに、日本や韓国よりも貧富の差が激しいという大きな矛盾も抱えています。同じ共産国だった旧ソ連は、モスクワ五輪(80年)のあと、10年で崩壊しました。今後の10年間から目が離せません。

↑ここまで大きな話ではないのですが、気になる「影響」を2つ見つけました。

一つは、例の「口パク少女」の顛末。口パクしたほうではなく、実際に歌ったほうの少女の話です。読売(23日付)から。

 
開会式「口パク」問題、歌った少女は傷心状態で“遠い所”に

 【北京=関泰晴】北京五輪開会式での「口パク」問題で、実際に革命歌を歌っていた北京市の小学1年、楊沛宜さん(7)に関し、担任の教師が自身のブログで「楊さんは傷つき、落胆している様子だ」と近況を公表した。

メディアの取材を避けたいとする両親の計らいで、楊さんが「遠い所」に移されていることも明らかにした。

それによると、楊さんは今月18日夜、開会式で「口パク」をした同市の小学3年、林妙可さん(9)が出演するテレビ番組を見た。司会者は、開会式で全世界に流れたのは楊さんの歌声だったことに最後まで触れず、番組は終了。楊さんは落胆の表情を浮かべたまま、一言も話さずに就寝した。

翌朝、楊さんが歯形が残るほど強く腕をかんでいたことが判明したという。世間から身を隠さなければならない理由も分からず、楊さんが悩んでいる様子もうかがえるため、担任教師は「これ以上、楊さんを傷つけないで」と訴えている。

これが「国家のため」の正体ですね。やりきれない気持ちになります。そもそもの原因を作った中国政府は、この件を「問題視しない」などと他人事のようにコメントして沈静化をはかっていますが、それは逆効果でしょうね。楊さんと楊さんの周辺は、政府のやり方に不信感を抱き続けるでしょう。蟻の一穴という言葉通り、こうしたことが積み重なって、いずれは体制を揺るがす力に発展していくのだと思います。


その典型的な例が、北朝鮮で起きていたようです。朝鮮日報(24日付)から。

なぜ北京に「美女応援団」は来なかったのか(上・下の連載)

今月4日夜、男性と、一部に高齢の女性を総勢166人の集団が中国・瀋陽の七宝山ホテルに到着し、荷を解いた。中国・北京オリンピックに出場する北朝鮮選手のための応援団だった。

応援団の大部分は、中国各地で営業している北朝鮮のレストランの従業員だということが判明している。

(中略)敵対国である韓国にも3度に渡り数百人の美女応援団を派遣した北朝鮮当局が、地理的に最も近く、「血で結ばれた国」中国のオリンピックに、このようなお粗末な応援団を派遣したの理由。それは、美女応援団のせいで北朝鮮内部に深刻な副作用が発生したためだ。

最近韓国にやって来た幹部クラスの脱北者キム・ミョンギル氏(仮名)は、「美女応援団を中国に送らないのは、塞ぎようのない女性の“口”のせいで情報拡散が起こり、体制が危機に晒されたせい。2つ目の理由は資金難」だと語った。

(中略)平壌出身のある脱北者は、「当時、応援団として派遣された美女たちは、該当機関で“南朝鮮で見聞したことを口外しない”という誓約書を書き拇印まで押したが、若い女性の口を塞ぐことはできなかった」と話す。家族や友人たちは、美女応援団が語る生々しい「南朝鮮」の話にショックを受けた。

 北朝鮮消息筋によれば、当時の北朝鮮は、美女応援団として派遣した女性らの口を塞ぐため、第1次美女応援団として韓国に行った女性のうち何人かを、見せしめに咸鏡南道の大興収容所で強制労働させたこともあった。

独裁者がどれだけ弾圧を続けても、「見た」ことを完全に忘れることはできません。それを「ここだけの秘密」としてしゃべってしまうことも防げません。「ゆでたまご」だったはずの体制が、いつの間にか「なまたまご」にすりかわって、少しのひびでグシャッとつぶれてしまうのです。戦前の日本がそうでした。

世界が五輪に目を向けているタイミングを狙って、中国は毒ギョーザ事件の解明を、北朝鮮は拉致事件の再調査を約束しました。これはきっと、五輪後の大きな変化に備え、日本をつなぎとめておきたいという心理の表れでしょう。ここからの10年が、日本にとっても正念場だと思います。


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死刑執行と鳩山発言の異常性 [けっこう気になる]

「宮崎勤」という名前が全国に衝撃を与えた頃、まだ子どもでした。事件そのものの気持ち悪さと同時に、サブカルチャーを評論する人たちや、したり顔であと付けの解説をする”有識者”(←この呼ばれ方、小っ恥ずかしいでしょうねえ)たちがニョキニョキ現れてくる状況を、初めて目の当たりにした最初の出来事でもありました。

昨日(17日)に死刑が執行されたことをニュースで知りました。よりによって、執行にサインをしたのは「死刑囚はベルトコンベア式に殺せ」と言い放った鳩山邦夫法務相。マスコミは口をそろえて「宮崎勤は最後まで反省の言葉を示さなかった」とばかり強調しています。薄気味悪い社会です。

私は死刑制度廃止論者です。でも、何年も前からこのことについて議論するのをやめています。理由はただ一つ、かみ合わなくてキリがないから。「死刑制度廃止論者です」と表明したときに、何か物を言ってくるのはたいてい死刑制度賛成論者(存続とか肯定とかでなく”賛成”)です。で、みんな青筋立てて同じことばかり言います。

いわく、

1、お前の家族や恋人が殺されても同じこと言えるのか(遺族感情)  
2、人を何人も殺した犯人が殺されるのは当然
(報復感情)
3、死刑制度が凶悪犯罪を未然に防いでいる(犯罪抑止)                
4、敵討ち(=私刑)を認めない代わりの措置だ
(私刑の抑制)
5、死刑制度は国民の過半数に支持されている(多数決の原理)

突き詰めると、たいていこの5つのどれかです。どれ一つとして、死刑制度を存続させる確固たる根拠にはなりません。ごく簡単に理由を書くと、

1と2は「感情」なので、100万年議論しても結論は出ません。論理ではないものに結「論」はないんですね。ただ、1に対しては「加害者の死刑取り止めを要望している被害者遺族もいる(いた)」という事実、2に対しては「日本の刑事罰は再犯防止と更生を主たる目的にしている」という事実が反証として挙げられます。

3~5は論理なので反「論」ができます。3、4については、そういった事実を示す統計学的に有効なデータはありません。池田小無差別殺人の宅間守のように、死刑が殺人を誘発したとさえ思える犯罪もありました。5については、「死刑制度を『積極的に支持』する人の割合は減っている」、「死刑制度が無かった時代を体験したことが無いために、現状追認をしているだけ」などいくつもの反論があります。

やっかいなのは、こうして話を進めると、勉強した人たちは3~5からどんどん哲学へ入り込んでいって、ホッブズ、ロック、カントとかのテツガクを素人にはさっぱりわからない翻訳調でいろいろ言ってきます。そういう人たちの結論は決まってます。「ほら、お前にはわからないだろう。だからお前は間違ってるんだ」。←この論理の飛躍に気づかない危うさが嫌なんですね。

で、そういう勉強をしなかった人たちは、1~2の感情ゴリ押しです。そのうち逆上してとんでもない言葉を投げつけられたりするので、やっぱり話をするのが嫌になるんですね。

そんなこんなで嫌だなと思いつつ、なんでこんなことを書いているか。それは宮崎勤死刑囚への執行について、鳩山法相の次の言葉が非常に気になったからです。読売17日付より引用。

「妙な言い方だが、自信と責任を持って執行できるという人を選んだ。」

ご本人が言う通り、とても「妙」な表現です。この言葉、裏を返せば、「自信と責任を持って執行できない死刑囚がいる」ということになります。友達の友達がアルカイダだったり、サブプライム破たんで80億円損したり、いつも世間を騒がせる「事実」ばかり口走る人ですから、この発言も「事実」だと私は考えています。

つまり、端的に言えば、「死刑囚の中には冤罪被害者がいる」ということを法相自らが示唆したことになるのでは、と。

死刑制度廃止の主眼はそこです。冤罪で執行されると取り返しがつきません。吉田岩窟王事件、免田事件など歴史的な冤罪事件はいくつもあります。松本清張が小説にも書いた帝銀事件は、旧陸軍関係者(おそらく731部隊)に捜査の手が及ぶのを避けるために政府がでっち上げた冤罪事件だという説が有力になっています(平沢貞通死刑囚は獄死)。

この手の話には「死刑の冤罪は戦後の混乱期の事件ばかり。科学捜査の発達した今の時代にはない」という反論が必ずあります。確かに冤罪の可能性は減っていると思います。しかし、ゼロではありませんし、ゼロになることはないと思います。『元刑務官が明かす 死刑のすべて』(坂本敏夫著、文春文庫)の著者(27年間務めたベテラン刑務官)は冤罪死刑囚について「いると確信している」と断言しています(←ただし、根拠不明)。

死刑は完全な秘密主義で執行されます。死刑が確定した段階で親族以外との接触(手紙も含め)ができなくなります。再審請求は「開かない扉」と言われているので、冤罪だったらこの時点でほぼ絶望的です。袴田事件(冤罪の可能性が強いと言われている)の袴田巌のように、30年にわたる長期収容で精神に異常をきたし、意思疎通が難しくなってしまっているケースもあります。

法務省も最高裁も「私たちに間違いはない!(無謬性)」という立場を取っているので、冤罪なんてことになってはメンツがつぶれる。再審無罪=敗北。そう”させない”ためには、死刑囚がどうなろうと外部との接触を一切断つ必要があるんですね。それで病死でも狂死でもしてくれれば結果オーライ(←死刑が執行されなかったことになるのでよくない、という話もあるようですが)、そうでなければ(今回の宮崎勤のように)世間を騒がす殺人事件が続いた時に”知名度”のある死刑囚から殺っていく、というそんなスタンスです。

それが、鳩山法相の言う「自信と責任」ってやつです。死刑廃止議連会長の亀井静香が「まず死刑囚の置かれている状況を明らかにしろ!」と怒るのも当然です。

と、ずいぶん長くなってかなりくたびれたのでもうやめますが、なんだかんだ言って死刑制度廃止論の一つの「冤罪」について書いたに過ぎません。この一点でも充分だと私は考えているんですが、「廃止」と言っても「完全廃止」から「凍結」まで意見がありますし、世界各国で積み重ねられてきた膨大な議論もあります。

また、執行する刑務官のことが世間にはほとんど知られていないということもあります。これはどちらかと言えば間接的な話ですが、それでも、死刑を実際に執行する仕事を知らずに死刑制度を語るなんてあり得ないですよね。

そんなこんなで全容はとても私一人が個人のブログで語りつくせるようなテーマではありません。

ただ、しつこく繰り返すと、鳩山発言は冤罪死刑囚の可能性を(図らずも?)示唆している。徹底した秘密主義で覆い隠している死刑囚の中から知名度の高い人物をピックアップし、見せしめとして処刑している。この2つの異常性は見過ごせないと思います。

元刑務官が明かす死刑のすべて

元刑務官が明かす死刑のすべて

  • 作者: 坂本 敏夫
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/05
  • メディア: 文庫

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NHKと朝日のケンカ、最高裁は判断示さず (下) [けっこう気になる]

さて。最高裁が「どうでもいい」なんてばっくれてケンカを裁いてくれなかったので、どうなることかと高みの見物をしていた方々=ほかのマスコミは、自分たちで結論を出さなくてはいけなくなりました。

13日付で日経以外の全国紙がこの判決を「社説」で取り上げています。

まずは実質的な当事者の朝日。タイトルは「NHK―勝訴で背負う自律の責任」。

東京高裁は「NHKは国会議員などの発言を必要以上に重く受け止め、その意図を忖度(そんたく)して番組を改変した。編集権を自ら放棄した行為に等しい」と批判していた。

この点について最高裁判決は具体的に触れていない。

最高裁が触れていないことをあえて出してくるあたり、無念さがうかがえます。ほかにもいろいろ言ってるのですが、NHKには社説が無いので不公平。この程度でやめておきます。

一応、NHKはホームページ上に、広告局名(12日付)で裁判そのものへのコメントを出しています。一部引用すると、

最高裁は、NHKの主張を認め、『編集の自由』は軽々に制限されてはならないという認識を示したものと考えます。

↑よくわかってるじゃないですか。政治家の圧力にへいこらしません、って宣言ですよね?

↓読売・毎日はいずれも、報道の使命よりも社の立場が優先されたような内容です。

<読売>
高裁判決は、NHK幹部と国会議員1人との面会を認定しただけで、番組編集との関係には言及していない。何より、訴えを認めた2審判決ですら、「政治家が番組に関して具体的な話や示唆をしたとまでは認められない」としていた事実は重い。

一方、NHKは今月10日、2審判決を伝えた報道番組について、放送界の第三者機関から「公平・公正を欠いた」と指摘された。最高裁判決に安住せず、公共放送の責任を果たしてほしい。

この期に及んで国会議員を匿名にする意味がわかりません。一般人や民間企業だったらここは名前を出しているでしょう。

最初の段落で暗に朝日を批判し、次の段落で名指しでNHKを批判しています。この気遣いの差はやっぱり、斜陽産業の新聞業界再編のために、読売・朝日・日経が手を組んだことが影響しているのでしょうか。

<毎日>
高裁判決によれば、NHK予算の説明に出向いた幹部が安倍晋三前首相から番組の公正中立を求められ、必要以上に重く受け止めて当たり障りのない番組にしようと改変を指示したとされる。にもかかわらず、多数の与党議員に予算の説明に回る慣行は今も続く。NHKが政治家の意向をそんたくして番組内容を変えることもあるのではないかと疑われてもやむを得ない。

高裁判決を報じたNHKのニュース番組では市民団体の主張に触れず、NHKの解釈だけを流したことが放送倫理に違反すると、第三者機関「放送と人権等権利に関する委員会」から指摘されたばかりだ。逆転勝訴と浮かれている場合でないことは言うまでもない。

朝日の「あ」の字も出てきません。徹底したNHKバッシング。なにか恨みでもあるんでしょうか。それとも、読・朝・日連合軍の仲間に入れてほしいという心の叫びでしょうか。


最後に<産経>。朝日大嫌い、民間裁判をした団体大嫌いの産経。何を書くのか興味津々でしたが、予想をはるかに裏切って、一番まともな内容でした。

朝日は記事の真実性を立証できず、「取材不足」を認めたが、訂正・謝罪をしていない。
NHKも、番組の内容が公共放送の教育番組として適切だったか否かの検証を行っていない。
朝日とNHKは最高裁判決を機に、もう一度、自らの記事・番組を謙虚に振り返るべきだ。

こんな当たり前の結論に到達するのに、朝日の記事が出てから3年以上もかかったんですねえ。しかも、全国紙の社説の中で、書くべきことをきちんと書いたのがよりによって産経だけとは。。。新聞が売れなくなるわけですな、と妙に納得してしまったのでした。

(了)


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NHKと朝日のケンカ、最高裁は判断示さず (上) [けっこう気になる]

3年越しのNHK・自民党と朝日のケンカの結論がようやく出ました。最高裁いわく「どうでもいい」。

そもそもどういうゴタゴタだったのか。いまから7年前の2001年、NHKがETV特集の中で、昭和天皇の戦争責任を裁く民間法廷を取材し、放送しました。昭和天皇の”罪状”は従軍慰安婦(番組では性奴隷と表現)制度に国がかかわっていたことです。そういうことを糾弾する団体の方がなさってたんですね。私は実際にはこの番組を見てないんですが、後の報道によると、「裁判」とは言っても弁護人は無く、被告が昭和天皇と言ってもとっくに死んでるし、代理人が出るわけでもなかったそうで。言ってみれば、裁判形式にした”サークルの集会”みたいなもんだったんだろうと推測します。

私の関心は↑ここには無くて、放送の4年後の2005年、朝日新聞が「NHKに自民党の安倍晋三と中川昭一の2議員が圧力をかけ、番組内容を改変させた」というスクープを放ったことから始まった泥仕合の行方でした。関係があるのかどうか知りませんが、この時期は朝日が超タカ派の小泉首相を攻めあぐねていた頃でした。

NHKは朝日の記事を全面否定し、「虚偽報道問題」としてニュースで取り上げて反論。これに対し、朝日が「虚偽と断定するのは中立報道とはいえない」と噛み付くなどしてヒートアップ。安倍は一貫して圧力を否定し、中川は発言が二転三転する(最終的には圧力を全面否定)など対応がぶれたことや、NHKの組合のなんとかとかいう人が涙ながらの記者会見をするなど紆余曲折があって、「目くそ鼻くそなんじゃないの」と世間をうんざりさせました(たぶん)。

で、その時におそらく、世間の一部の方は「裁判やってはっきりさせればすむことだろ」と思ったはず(多くの方は「どうでもいい」と思ったはず)。なのに、NHKは自民党と組んで「朝日を訴えずに非難し続ける」道を選び、朝日も公共放送(NHK)と公党(自民党)からの攻撃に「あくまで裁判に持ち込まずに反論」する、という摩訶不思議なケンカになったのでした。

なんでこんなことになったのか。理由は一つしかないでしょう。私の独断と偏見と無責任で勝手な推測を述べますと、これはもう「自民・NHKの間で番組改変についての合意があり、朝日はそのネタをつかみながら甘い取材で墓穴を掘った」からだとしか考えられません。裁判になっていれば、NHK・自民党と朝日の双方に不利なネタが次々に出てきて、そのダメージは計り知れない。だからひよった(正)。金持ちケンカせず(違)。だと思います。

んでもって、収まらないのが「民間法廷」を開いた方々。おそらく朝日の後押しもあったんじゃないかと思いますが、「取材をされたことについて放送されるかと思ったらされなかった」というご不満について訴えました。これが、このたび最高裁まで言って結論が出た裁判の訴状なんですね。

団体の方々は、

取材をされた放送されると期待を持っただから放送されるべきなのに、されなかった不当な圧力が働いたからに違いない法律的にだめだよね

という論理展開を狙っていたのだと思います。もちろん、念頭には自民党の安倍・中川の名前があったのでしょう。NHK・自民と朝日の代理戦争という意識もあったかもしれません(なかったかもしれません)。

しかーし!こうやって簡素化して眺めるとおかしいですよね。「期待したから放送されるべきなんだ」という論理展開に飛躍がありすぎです。それを認めてしまえば報道なんて成立しません。例えば、「ガソリン値上げどうですか?」って10人に聞いて2人しか使わなかった時、残り8人に訴えられて負けてしまうことになりますから。ありえませんね。

なので、最高裁は「そんな論理はありえません」と答えを出しました。判決要旨(共同通信の配信)のこの部分を読むとけっこう笑えます。

番組は放送事業者の内部でさまざまな立場、観点から検討され編集されるのが当然で、その結果最終的な放送内容が当初の企画と異なったり、放送に至らなかったりする可能性があるのも当然だ。このことは国民一般に認識されている。

2回も「当然」って言葉を使った上で、最後に「みんな知ってることやで!」ってダメ押しまでしてるんですね。かなりのいらつきを感じます。ご機嫌ナナメだったんでしょうか。

※ただし、取材を受けた人の負担がとんでもなく重く、取材する側が「取り上げる」と明言したのに報道しなかった場合は、報道側の責任になることがある、ということだそうです。改めて言われなくても、社会通念上、「当然」だと思います。

ここまでの結論で最高裁はお仕事がすべて終わったので、残りのNHK・自民党VS朝日については考える気力も起きなかったのでしょう。ということで、「どうでもいい」ってことになったんでしょうね。

(つづく)
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忍び寄る環境ファッショ、「温暖化」の本当の狙いはなんだ? [けっこう気になる]

以前もちらっと書きましたが、いま世界中を席巻している「地球温暖化」問題。実はこれ、原因がはっきりとわかっていないそうです。正確に言えば、人類の経済活動の影響と、自然の温暖化作用の影響のどちらが大きいのか、学者の間では結論が出ていないんですね。これがもし、自然の温暖化作用が大きく影響しているのだとしたら、人間がどれだけCO2を削減したって食い止められない可能性が高いわけです。そもそも、「温暖化」そのものが起きているのかどうかを疑問視している学者もいます。

なのになぜ、世界中で「温暖化=犯人は我々」説が共通認識となったのか。これに大きな役割を果たしたのがイギリスだと言われています。イギリスは世界の覇権を失った20世紀以降も、英連邦、旧植民地、そしてアメリカを通じて、世界戦略に関与し続けています。冷戦崩壊と多極化、産油国の影響力増大、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、チャイナ)の台頭など、世界情勢の変化を自国に不利と見たイギリスが、誰からも文句がつけられない問題=温暖化をネタにして、覇権を維持しようとしている、という見方があるのです。

それが本当なのかどうか、一民間人には判断のしようがありません。ただ、温暖化の危機が国連に報告され、世界中でなんとかしようという機運が高まった背景には、イギリスの積極的な働きかけがあったことは事実のようです。

そんなイギリスから、また、きな臭い論文が出されました。名門ロンドン大学の研究チームが、学術誌ランセット(後述)に発表した論文。ロイター(16日付)から引用します。

肥満人口の増加、地球温暖化に寄与=英研究

英ロンドン大学の研究チームが、肥満や過体重の人々はそうでない人たちに比べ、移動により多くの燃料が必要となったりより多くの食料を食べたりすることにより、地球温暖化に寄与しているとの見方を示した。
(中略)
肥満人口増加の問題はさらに、食料不足やエネルギー価格の上昇にもつながるとしている。

これ、コントのネタじゃないですよ。素人の放言でもありません。フィル・エドワーズやイアン・ロバーツといった学者たち(←ってまったく知りませんが)が書いた論文です。頭がおかしいんじゃないかと思います。

この理屈で「温暖化」が語れるなら、長寿なんてもってのほか、病気がちなんてあり得ない、子だくさんも、汗かきも、きれい好きも、なにもかも温暖化につながってだめ!ということになります。
極端なことを言えば、生まれてから生殖が可能になる年齢まで息を潜めて生活し、生殖が可能になったら人口維持のための1人か2人の子供を残してすぐ死ぬ、そういう人間しか認められない世の中になってしまいますよね。個性の抑制、これがファシズムの出発点です。

そもそも、「肥満」という概念や規準が国によって違います。「過体重」なんてレベルになってくるとさらにあいまいです。なのに、なんでこんな論文が出されたのか。どうやら、『ランセット』という雑誌に鍵がありそうです。この雑誌、180年以上続くイギリスの老舗で、医学に引っ掛けた政治的な記事を発信するのが売りだそうです。イギリスの「温暖化」戦略に、環境以外の意味合いがあるからこそ、ロンドン大→ランセットという経由で信じがたいほど馬鹿馬鹿しい論文が世界中に広められている、という推測は”あり”だと思いますが、いかがでしょう。

ロンドン大の言い分を押し進めていくと、影響(=被害)を一番受けるのは、世界一の肥満大国・アメリカですね。記事中に「燃料」「食料」という言葉が出ていますが、石油メジャーも穀物メジャーも、ほとんどがアメリカ資本。「環境以外の意味合い」の一つは、アメリカへの牽制球なのではないかと妄想しております。

これまで、温暖化について、一番バカな発言をしたのは自民党の森山元法務大臣と、それに賛成した町村官房長官だと思っていました。この方たちは、「温暖化防止のためにテレビの深夜番組をやめましょう」って言ったんですね。そんなことしても意味がないってことぐらい小学生でも分かることですから、この発言は一笑に付されて消えました。もちろん、この発言の真意は、環境問題にかこつけたメディア規制です。メディア規制もまた、ファシズムへの入り口です。

今回のロンドン大バージョンはどうでしょうね。あまりに大きいウソは、真実だと思い込まれてしまうことがよくあります。こんなくだらない論文のせいで、肥満の人や過体重の人が新たな差別構造に組み込まれてしまうのではないかと心配です。人間は、社会の中に被差別者を抱えたとき、差別者たちは自分が差別されるリスクを避けるため、個性を埋没させていく傾向があります。これまた、ファシズムの入り口です。危険です。


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常用漢字に「俺」は入るのか [けっこう気になる]

現行の常用漢字1945字に、新たに220字が追加される方向で検討が進んでいます。なんて言われても、そんなことどうでもいいやって感じだと思いますが、こうした一見どうでもいいことが、実は私たちの心理的な部分にけっこう影響を与えていたりするんですよね。逆に言えば、無意識のうちに心理的な影響を受けていることだからこそ「どうでもいいや」って思ってしまうのかもしれません。

「常用漢字」は1981年に政府が定めたものです。法令や公文書といった官製文書だけでなく、新聞、雑誌、放送など民間の社会生活にいたるまで、漢字使用の目安を示した規準です。大きなお世話と考える人もいれば、情報の速やかな伝達に役立つと考える人もいます。この前身は1946年に制定された「当用漢字」で、このときは目安というよりも”こうするべき”という押し付けの性格が強いものでした。戦前にも漢字使用のガイドラインはあって、それは”こうしなさい”的なものでしたから、だんだん緩くなっているわけです。

「当用漢字」「常用漢字」がそれぞれどうやって選ばれたか、あるいは日本版の簡体字がどうやって作られたか、この辺の歴史を調べるとけっこう面白いんですね。公権力、新聞を中心としたマスコミ、学者たちの三者が入り乱れて主導権争いを繰り広げていて。

「お母さん」なんてはしたない読み方は認めるべきじゃない!とか(笑)。新聞協会は常用漢字と少しずれる新聞漢字表を作っていますが、朝日みたいにエリート意識が高くて人と同じじゃいやなんだよね、ってな新聞は、社独自の漢字表を作ってみたりとか。学者や政治家の中には「漢字廃止、ローマ字使用」を主張するややこしい一派もあって、戦前から戦後にかけて、日本は何度も「ローマ字化」の危険(←と言い切っていいでしょう)にさらされていたりとか。

そんなこんなで、仕方がないから電子機器のソフトを作る会社はあらゆる漢字表記、ローマ字表記を取り寄せてプログラミングしなければならず、その結果、いまでは「常用漢字」から思いっきりはずれた小難しい漢字がメールで飛び交う、というややこしい状況になったりしてます。

前置きが長くなりましたが、そんな常用漢字に追加されることが「ほぼ確実(読売・13日付)」な42字はこちら↓

藤、誰、、岡、阪、奈、鹿、熊、頃、韓、弥、斬、虎、狙、脇、尻、叩、闇、籠、呂、亀、頬、膝、鶴、匂、嘘、須、噂、濡、笠、嬉、股、眉、朋、覗、鎌、凄、撫、溜、謎、稽、曾

「韓」って常用漢字じゃなかったんですねえ。ということは、小中学校の教科書では「かん国」って混ぜ書きか、ふり仮名がついてるんでしょうか。でも、「岡」山、「奈」良、大「阪」、「弥」生時代などにはふり仮名がつきませんよね。そもそも、こうした漢字がなんで30年近くも放っておかれてたのか、謎です。

「曽」の旧字体「曾」がなぜ復活するのかも謎ですねえ。簡体字を作った意味がない。

そしてもう一つ気になること。読売の記事よると、

「俺」については「公の場で使う言葉ではない」といった反対意見もあり、引き続き検討を行う。

だそうです。”大きなお世話”だと考える勢力が批判しているのはこうした点なんですね。結局、政府の作る漢字表というのは、純粋に漢字使用の便利だけを考えて作っているわけではないのです。以前も書きましたが、「国語教育は道徳教育である」と皮肉られるゆえんです。公文書には使わなくても、新聞、雑誌、放送、書籍ではしょっちゅう出てくる漢字なんだから、常用漢字にしとけばいいじゃないかってのが一般的な感覚だと思いますが。

もともと「おれ」は男女共用の一人称で、目上・目下どちらの相手にも使えます。なので、地方のお年寄り(おばあさんたち含む)の中には、誰に対しても「おれ」って言う人がいますよね。「公の場で使う言葉ではない」という反対意見は、こうした文化を無視しているか、さげすんでいるか、いずれにしても認めたくないと考えている(←まさか専門家たちが「知らない」はずはないので)。

この意見が通ってしまうと、80年か90年かそれ以上の年月にわたって「おれ」と言い続けたお年寄りたちが、ある日突然、政府によって「公の場で使う言葉ではない一人称を使っている人」=「礼儀を知らない人」にされてしまうわけです。そんなバカな話があっていいものか。

そんなわけで「俺」が常用漢字に入るのかどうか、どうしても気になってしまいます。


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「させて頂きます」は奴隷の言葉 [けっこう気になる]

言葉の話題が続いているのでこのチャンスに「させて頂きます」問題を書いてしまいます。私は言葉に目くじらを立てるタイプではないと(自分では)思っているのですが、自分では使わないように心がけている言葉はいくつかあります。その中で一番気をつけているのが「させて頂きます」。私の恩師はこれを「奴隷語だ」と批判していましたが、いまやNHKのアナウンサーでも普通に使ってますよね。

「する」の謙譲語・丁寧語は「いたす」なのに、なんで「させて頂く」が普及してしまっているのか。広辞苑(第五版)の「いたす」の項目には、「させて頂く」という用例は載っていません。yahoo!で使える大辞林や大辞泉にも載ってません。しかし、例解古語辞典(第二版)には載ってるんですねえ。古いからかなあ。なんだかねえ。一部では「やらさせて頂きます」なんて人もいてうんざりします。これは学校教育にも大きな問題があると思います。

私は学生の時に塾で小中学生に国語を教えていて、当時のカリキュラムでは(いまも?)中3で「敬語」を学習することになってました。文科省は中2までは敬語の知識を必要ないと考えているわけで、それも面白いんですが、それよりも気になったのは、教科書の「謙譲語」の説明です。

複数の教科書を見比べてみたのですが、どの教科書にも、

相手より自分を一段低めて言う言葉
相手よりへりくだって言う言葉


などと書かれていたんですね。こんな表現がなぜ文科省の検定をパスしているのか。このことを傍証にして「教科書検定は、検定ではなく検閲である」と主張することも出来ると思うのですが、ややこしくなるのでその話は置いといて。

この表現が問題なのは、もちろん「一段低めて」「へりくだって」の部分です。広辞苑(第五版)には「へりくだる」の意味として、「他をうやまって自分を卑下する」と書かれています。「卑下する」を引くと、「自分を劣ったものとしていやしめること」とあります。つまり、日本では、中3にして、相手より自分を下に位置づけ劣ったものとしていやしめる言葉遣いを学んでいるというわけです。皮肉をこめて「国語教育は道徳教育である」と言われるゆえんの一つです。

「させて頂く」は使役動詞「させる」に謙譲語「頂く」がくっついたものです。使役動詞は自分が人に何かを命令する時に使う言葉ですが、それを相手が自分に何かを求める状況で使い、さらに「劣ったものとしていやしめる」謙譲語までくっつけてしまう。教科書的に言うと、二重に卑下した言葉なんですね。まさしく「奴隷」の言葉遣いです。

しかーし!中3といえば、社会科では公民(当時)を学習する時期。「敬語」と前後して、日本国憲法を習ってるんですね。学校によっては前文を暗誦させるところもあると思いますが、その中にこんな一節があります。

われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。

すごいですねー、文科省。国語と社会で同時期に正反対のことを学ばせているわけですから。日本国憲法の精神にそった教科書が作られていれば、謙譲語は上述のような説明には絶対にならないはずです。中3は大人の都合=縦割り行政の矛盾を押しつけられているわけで、由々しき問題です。

このことから、「現代日本には尊敬語・謙譲語は必要ない。丁寧語があれば十分」と主張している学者もいます。「です・ます」と「お」をつけるだけになれば確かに簡単になります。ただそうなると、ただでさえ切れかかっている古典文化と完全に切れてしまう可能性がありますし、「あらたまる」「かしこまる」といった奥ゆかしい文化が廃れてしまうことも考えられます。

そうなんです、勝手に納得してますが、敬語ってのはもともと、自分を劣ったものとしていやしめる言葉ではなく、「あらたまる」「かしこまる」ための言葉なんですね。古典文法は『源氏物語』をひな型として完成したとされていますが、その論理性は現代文法と比べてとてもはっきり(しっかり)しています。

詳しく説明する能力はないので端的に書きますが、古典文法の「敬語」は、

丁寧語…目の前に人がいて、直接、話をしていることが重要
尊敬語…会話の中に出てきた主語が重要(主題)
謙譲語…会話の中に出てきた目的語が重要(主題)


という区別なんですね。

もともと身分制の世界ですから、身分の違う者が直接会話することは(建前上では)ありえません。なので、あえてへりくだる必要性も無い。これを平等主義社会に移し変えた時に、敬語のロジックではなく、前提となっている身分制のほうを移植してしまったんですね。ありえないミス(?)だと思います。

それはともかく、古典文法のルール通りに敬語を使えば、敬語はとても簡単です。自分を卑下するようなこともなく、「させて頂く」なんて表現を使おうなんて気持ちには間違ってもならないと思います。

(例)
「医者の役をさせて頂きました」
→会話の流れで「医者の役」が重要なテーマだと考えるなら、「医者の役を致しました」「医者の役を頂きました」となります。「いたす」は丁寧語としても使えるので、「医者の役を致しました」と言えば、謙譲語・丁寧語のダブルで使えてとてもお徳です。
→丁寧語で「医者の役をしました」と言えば、会話のテンポ重視で肩が凝りません。
→「医者の役をくれた人」のことを重要なテーマだと考えるなら、「医者の役を下さいました」と尊敬語を使います。

「販売を中止させて頂きます」
→「販売すること(をやめる)」が主題なので、「販売を中止致します」となります。これまた、謙譲語・丁寧語でダブルでお徳。もちろん、「販売を中止します」(丁寧語)でもOK。

「責任を果たさせて頂きたいと思います」
→こういう決意表明は、目の前にいる人に訴えていることが最も重要なので、丁寧語で「責任を果たします」と言うべきです。

こんなふうにパターン化すると「あれも違う」「これも違う」とあちこちから文句が出そうですが(笑)、そういう反論もだいたいこのわけ方で説明がつくんですね。それよりも大切なのは、この考え方なら少なくとも奴隷になる必要はない、という点です。お試しください。


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