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映画『アース』 [レビュー]

              

観てきました。渡辺謙がナレーションをしている吹き替え版でした。映像に割り込んでこない抑制のきいた語り口で、心地よい印象でした。満席(in 新宿)でした。

主人公は地球。大自然のサイクルの中で生きていく/死んでいく動植物が脇を固めます。その中から、準主役級でホッキョクグマ、アフリカゾウ、ザトウクジラが選ばれているという構成になっています。

「環境問題を考えさせる映画」のように紹介されていますが、この映画の本質は「大自然の恵みを受け、脅威と闘いながら、たくましく生きていく/はかなく死んでいく動物たちの姿」だと思います。アングロサクソン系の得意技ですね。これまでにテレビで先行して使われた映像が多く(全部そう?)、「あー、これねー」ってシーンがたびたび出てきました。

もちろん、環境保護を訴えるナレーションは要所で登場します。原文がどうなってるかわからないのですが、吹き替え版でのメッセージは「大自然を守れるのは人間だけなのです。まだ間に合います」ってものでした。

難癖つけるようなところではないんですが、西洋の発想=人間が自然を支配するという思想にまだとらわれてるんだなあという印象を受けました。支配が行き過ぎた結果、人間へ不利益が跳ね返ってきた。だから保護へ。”植民地”を”保護領”と言い換えるのと同じ発想です。

東洋なら「人間もまた大自然の中で生かされている(だから自然を尊重するのは当然)」と考えるわけで、私はそっちに共感しています。

なので「人間が自然を守る」なんて言われると、「いやいや、逝きかけてる人が粘らずに逝けばいいんじゃないの?野生動物みたいに」とか、「少子化も大歓迎でしょ」とか、「要は人間の絶対数が減ればいいんじゃないの」とか、そんなことが頭をよぎってしまいます。薄汚れた大人になりました。

それはさておき。
映像はさすがです。映画館の大画面で見る価値があるものばかり。できれば、フィルムではなく、デジタル映像を使っている映画館で見られることをお勧めします。

特に、「群れ」のインパクトは強烈です。ザトウクジラの数頭から、トナカイの300万頭まで、映画では群れの力が繰り返し描かれます。水と光と群れ。この3つが地球で繁栄する秘訣なんですね。

そんな中、たった1頭で、解けかけた氷の海で獲物を探すホッキョクグマの映像は印象に残りました。何度も海に落ちながら、いざって沖へ出る姿。20世紀の終わりに韓国・プサンの国際市場に行ったときのこと。市場のあちこちで、片足や両足が無く、いざってくず野菜やくず魚を拾い集めている人たちを見かけたことがあります。その記憶がホッキョクグマにだぶり、「生きるってそういうことだよな」と「生きるってそういうことなのか?」と、2つの思いが交錯したのでした。 


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