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偉大な岩「ウルル」に触れた日 その2 [あいうえおーすとらりあ]

 走り出したバスはひたすら暑かった。うだるような高湿度の暑さとは違い、乾いた暑さはひりひりと痛い。目一杯に窓を開けた途端、ドライヤーのような熱風に襲われた。慌てて数センチのすき間を残して窓を閉めたが、肌は一気に乾き、特に唇は裂けそうなほど痛んだ。これまでリップクリームを使ったことはないのだが、その必要性を思い知らされた。 

 ガイドは暑さなどまったく気にならない様子で、平らでまっすぐな道をウルルヘ向かってぶっ飛ばしながら、ウルルの成り立ちや歴史について話し始めた。

 ウルルは世界最大級の一枚岩である。地上に出ている部分は335メートルだが、それは氷山の一角に過ぎず、地下部分も含めると6千メートルを超えると言われている。ウルルはアナングの聖地だが、彼らは一時期、入植した白人によって土地を追われた。

 過酷な自然条件で生きてきたアナングは、土地と共生するさまざまな技術を持っている。たとえば、彼らは冬に野焼きをする。小規模の野焼きは土地を肥やし、植生の循環をうながす効果があるためだ。この辺りでは夏にしばしば山火事が起こる。もし植物が生長しすぎると、山火事の規模はアナングの手に負えなくなる。そこを住みかとしていた多くの動物も滅んでしまう。野焼きはそうした危険を予防する役目も果たしている。

 また、彼らは必要以外の動物は絶対に獲らない。動物は水のありかを教えてくれる重要な存在でもある。ある種の動物が絶滅するということは、繊細なバランスの上で共生しているアナング自身の絶滅も意味するのだ。
 
 白人は長い伝統に基づいた経験則を西洋流の環境保護意識で否定した。アナングが土地を追われていた数十年の間に、植物は生長し続け、やがてアナングが最も恐れていた大規模な山火事が起こった。白人は伝統を見直し、いまではアナングの技術に基づいた環境管理を、彼らと協力して行っている。

 ガイドの説明はおおむねこのようなものだった。明確な発音でゆっくりと話す彼の姿勢からは、ツアーをただの観光に終わらせまいとする気迫が感じられた。説明がちょうど終わるころ、バスはウルルの麓にあるカルチャーセンターに到着した。バスを降りると、目の前に柔らかい形のウルルがそびえていた。


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