偉大な岩「ウルル」に触れた日 その4 [あいうえおーすとらりあ]
カタジュタはウルルから約50キロ離れた場所にある。この二つ以外にさえぎるものはないので、どちらの麓からもお互いの姿が見える。カタジュタは複数の岩でできた岩山で高さは約500メートル。岩の間や周囲は散策道になっており、そのひとつが「風の谷」と呼ばれている。宮崎駿アニメ「風の谷のナウシカ」のモデル地とも言われ、日本人には特に人気が高いのだという。
ツアーではこの風の谷を歩く。2キロのなんでもない道だが、暑さと両側の岩山の迫力に圧倒された。ガイドの説明では、カタジュタはオーストラリア大陸が南から押され、盛り上がった部分の一部なのだという。そのために地層は水平に近い状態になっている。一方、ウルルは東西から押されて盛り上がったため、地層が垂直になっているそうだ。たしかに、水平の地層がはっきりと見える。大きな岩の間に砂が詰まっているようにも見え、巨大な石垣といった風情だった。
ガイドの青年は高校と大学で日本語を少し学んだほどの親日家だが、「風の谷のナウシカ」は知らなかった。「日本人観光客からよく聞くんだけど見たことないんだよね…」と申し訳なさそうに笑っていた。
そこから話がはずみ、お互いのことを尋ねあった。彼はメルボルン出身で、大学卒業後にウルルに近いアリススプリングスに移り住み、ガイドの仕事を始めた。近いといっても車で5時間の道のりである。自宅を朝8時に出発して、昼にユラーラに着き、ガイドツアーを始める。どのツアーにもウルルの日の出を見るプランが含まれているので、寝られる時間はほとんどない。ガイドが終わればその足でまた5時間かけて自宅へ戻るのである。相当きつい仕事だろうと尋ねると、「ここがぼくのオフィスだからね」と笑っていた。
カタジュタの後は近くの展望台へ移動した。ここは正面にカタジュタ、右手のはるか遠方にウルルが見える絶景ポイントなのだ。その二つ以外は、低木と草と赤茶色の地面が地平線まで続いている。写真や映像では伝えられないほどの広大さの中で、見ず知らずの観光客と英語で会話している自分に気づき、ふと我に帰って不思議な気持ちになる。
展望台を後にして、いよいよクライマックスのウルルの日没である。ウルルの周辺には、日の出と日没の絶好ポイントがそれぞれ設けられている。日没を見ながら食事するツアーなどもあってにぎわっていた。ここでガイドが持ってきたシャンパンを開けて乾杯し、日没を待ったが、残念ながら曇ってしまったため、赤く輝くウルルは見られないまま日が暮れていった。
翌日の日の出に期待することにしてウルルを離れ宿泊地の常設テントへ向かった。
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