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海保、脱北者を「発見」できずショック [今日のニュース]

 脱北者を乗せた木造船は日本の排他的経済水域(200海里)と領海内を少なくとも数十時間、漂流していたらしい。が、海上保安庁は発見できなかった。読売新聞は海保のコメントとして、「船体が小さい木造の船舶はレーダーの電波が反射しにくく、船影をとらえることは難しい」と報じている。

 ニュースでコメントを求められた地元漁師(どこの局か忘れた)は、「あんな小さな船で時化にあったら一発で終わり。おっかない」という趣旨のことを言っていたから、確かに警備上の想定にはない船だったのだろう。

 だがしかし、海保は1999年の能登の不審船事件以後、警備を強化したはずなのだ。日本の役所ってほんとこういうパターンが多くてうんざりするが、
事件・事故が起きる→表面的に善後策を取り繕う→当時の責任者が異動・退職して記憶が風化する→同じことがまた起きる
というサイクルをくり返している。国と地方自治体のすべての役所がこの体質を持っているといっても過言ではない。海保も例外ではないことが今回の事件で明らかになった。

 以前、日本海側の街で海上自衛隊幹部から聞いた話。小泉訪朝で北朝鮮が拉致事件(←これをなぜ「拉致問題」と表現するのか理解不能。犯罪行為には「事件」を使うべきだろう)を認めたころのこと。その幹部いわく、「日本海沿岸を海から見てごらんなさい。特に夜。隙だらけですよ。穴だらけ。どこからでも上陸できる。特にね、○○とか○○とか(←地名)ガラガラ。そこでハングルが書かれた小型のモーターボートを見つけたこともありますよ」と苦笑いしていた。それなら海自が守ればいいじゃないかとおもうけれど、「海保さんや警察の方との役割分担がありましてね。もっとスムーズにしなきゃならんとそれはお互い分かってるんですがね」と言葉を濁していた。

 もうひとつ。これは日本海側の地方警察署の幹部から聞いた話。拉致が頻発した1970年代初頭、当時まだ駆け出しだったその幹部は、日本海の砂浜で見たことも無い文字が書かれてある大きな麻袋や木切れなどを見つけた(難破船の残骸、と言っていたかもしれない)。今から思うとそれはハングルだった。明らかに怪しいものだったので、上司に報告し、指示を仰いだ。漂流物は回収され、「他言無用」を申し渡されてそれっきりになってしまった。それから30年後のいま、北朝鮮がついに拉致事件を認めた。

 これらの話は事件を総合すると、要するに国土の警備さえも、自衛隊、海保、警察の縦割りになっていて、都合の悪いことはうやむやにしてきたということだ。犯罪者集団や犯罪国家にその間隙を突かれまくってるってことなんだろう。

 そういうことに継続して監視の目を光らせるのが、市民の代弁者を自認する(実態はあらゆる権力と癒着した巨大権力なんだけど)マスコミの役割だろう。しかし、現実は違う。そんなことを取材しても「点数」にならず、出世しないからだ。取材相手のガードは固くて骨が折れる割には、”特ダネ”なんてまず出ない。マスコミといえどもただのサラリーマンなので、こうした社内での損得勘定に合わないことを上手に避ける人間が偉くなっていくのだ。

 やっとというか、ついにというか、日本でもブログが普及し、社会的に注目されるようにもなってきた。取材、執筆、発表というジャーナリストの活動が年齢、性別、地理的要因などを問わずできるようになったのだ。マスコミも含めた権力に対する正しい態度はただ一つ、言い分を鵜呑みにしないこと。ブログはそのための手段になりつつある。


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コメント 4

通りすがり

小型のフネはどんな高性能なレーダーでも捕捉が困難で、海上を常時監視するのは不可能なんです。レーダーは何でも映し出す魔法の鏡ではないし、警備の強化といっても限界があるのは当然。海岸の数メートルごとに歩哨立てるわけにも行かないし、むしろ、今回の通報のような沿岸部の地元民による監視連絡体制のほうが役に立ちます。それに今回は海保と警察の連携もスムーズに行ったようですが(通報先は警察だったが、誘導したヘリは海保機。警察署で接触したのも海保の通訳官)。
by 通りすがり (2007-06-03 18:11) 

rio

通りすがりさん、コメントありがとうございます。

コメントの件、役所の公式見解として、よく存じております。しかし、海保に衝撃が走ったのは、公式見解では収まりがつかない現実があるということを肌身で知っているからなのでしょう。コメントからは「無理なものは無理。諦めよう」というメッセージを感じますが、それで納得なのでしょうか。

沿岸部の住民による通報体制(あくまでこれは”協力”であって、責務を住民に押し付けるものであってはならないことは言うまでもありません)強化の一環として、「118番」が設けられたのは2000年ですが、どれだけ知られ、あるいは有効に使われているでしょうか。海保いわく、いまだに9割以上はいたずら電話なのだそうです。

経験上、よほどのミスが無い限り、役所発表では役所同士の連携がスムーズにいったことになってしまいます。阪神大震災の時ですら、発生直後は役所は「連携はうまくいっている」と説明していたのですから。

マスコミを通じた発表・情報は「~という説もある」程度の受け止め方でちょうどよいのではないかと思います。
by rio (2007-06-03 20:38) 

ボルチーニ

「公式見解として」ではなく、もう少し現実的に考えてみませんか?
by ボルチーニ (2007-06-04 17:02) 

rio

ボルチーニさん、コメントありがとうございます。

「もう少し現実的に」というのは、要するに役所発表を信じろ、ということなのでしょうか。発言の趣旨がよく分かりません。
by rio (2007-06-04 17:50) 

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