協会はテンとヨーコの声を聴け [バレーボール]
2人の発言を並べてみました。ファンの間では指摘・批判が繰り返されてきたことではあるけれど、W杯を目前に控えた時期に、日本の現役キャプテンからこういう話が出てくるのは珍しい。ヨーコ・ゼッターランドも「見どころ」を解説する基本のトーンは外さず、言うべきことはしっかり言っている。やっぱりこの人、頭いいなあ。テレビでのコメントは激ヘタだけど(笑)。
試合直前の竹下のインタビュー。
「(試合を)日本でやれる事が当たり前になっている部分って、絶対にあると思うんです。この大会の中で、そうじゃないっていうのを、もう1回自分たちがしっかり考えないと、いけないと思います」
「(代表戦では)あれだけの観客が、あれだけの体育館を満員にしてくれて、私たちの勝利を見ようと思ってきてくれているし、必死に応援してくれる。同時に、笑顔がため息に変わる瞬間っていうのも肌で感じます」
ヨーコ・ゼッターランドのコラム。
「ホームコートアドバンテージのある日本が一番有利であることは間違いない。時差ぼけもなく、他国と違って長時間のフライトもない。15日間の試合スケジュールは、3連戦1休→2連戦1休→3連戦2休→3連戦となっている」
「『連戦の疲れ』はどのチームにも生じる可能性があるが、選手の経験から言わせていただくと、国際レベルで戦うものにとって、『疲れているからパフォーマンスが落ちている』などという評価をされるのは大変屈辱的なことである。たとえ事実であったとしても、自他共に決して大会中は認めてはならないことのひとつである」
「日本は移動しやすい、東京→大阪→札幌→名古屋の順で、全日程共に最終の第3試合、18時もしくは19時半からの試合開始である。言うまでもなく、連戦の中で体調とチーム全体のリズムを整えることは大切な要素だ。日本にとってW杯でこれ以上の物理的好条件は考えられない」
「このことにおいてはファンの応援を含め、『舞台は整った』のである」
竹下の憂鬱と余計な緊張、ゼッターランドの(たぶん嫌な)思い出と皮肉がよく伝わってくる。拝金主義的な大会運営が選手たちにどう思われているのか、連盟・協会とテレビ局は真摯に反省すべきだ。
この2人のセッターには、日本バレー界の思惑に翻弄され続けた共通点がある。シドニー五輪欠場の戦犯と罵られ引退の危機に追い込まれた竹下。早稲田大進学を機に全日本入りの道が閉ざされてしまい、アメリカに渡ったゼッターランド。そこから周囲の圧力や偏見を跳ね返し、実績を出した点も似ている。そして今、連盟・協会・テレビ局に「いい加減にしてくれ!」と口をそろえているのだ。
”完璧”な物理的条件、強豪チームの欠場、星勘定と視聴率予測から割り出された対戦順。まるで亀田家スタイル。その結果、全日本が運よく3位に滑り込んでも「ここまでやれば、ねえ」と言われるし、入れなかったら「ここまでやっても、ねえ」と言われるだろう。一方、海外チームは大会運営への批判を口にできない。それは「大変屈辱的なこと」だからだ。なんと息苦しいことか。
ただ、こうした声が現場から少しずつでも出てきたことは変化の兆しかもしれない。ゼッターランドが今年から協会の理事に就任したことも好材料だ。彼女はコラムの最後で、高校生セッター河合の選出にも否定的な見解を示し、「今後の日本バレーボール界がどこへ向かおうとしているのか、その『道』を探す大会にもなるだろう」と締めくくっている。”格闘技界におけるプロレス”のような立場に片足をつっこんでいるバレーボール界を、なんとかしてもとの道へ押し戻すよう力を尽くしてほしいものです。
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