スポーツ=金もうけ、ではないよねっていうお話 [けっこう気になる]
先週はスポーツ界の気になるニュースが続きました。
<その1>
日本ハンドボール協会は18日、中東地域のチーム寄りの判定が問題となった北京五輪の男女アジア予選について、国際ハンドボール連盟(IHF)が大会結果を無効として、男女とも再開催することを決めたと発表した。
(中略)アジア連盟は、クウェートの王族が実権を握る。9月の五輪男子アジア予選(愛知・豊田)では、韓国・クウェート戦の直前に審判をドイツからヨルダンに変更。反則が偏った韓国が敗れ、観客がペットボトルを投げ込む騒動となった。疑惑の判定は、10年ほど前から露骨になった。日本協会の市原則之副会長は、「得失点差まで計算して、巧妙にシナリオを作る」と語る。(毎日新聞19日付)
↑この件は韓国でも大問題になっていたようで、朝鮮日報などの主要紙がこぞって批判を展開していました。日韓が共同で国際ハンドボール連盟に訴えると圧力をかけたことで、やっと改善の動きが出てきたそうです。
<その2>
中国人か元中国人が席巻している現状をなんとかしたい――。国際卓球連盟のセラ事務総長は19日、多くの中国選手が国籍を変更し、各国の代表になっていることについて「世界中に散らばるのを止められなかった。状況を調査している」と話し、対応策を検討していることを明らかにした。
規定では、出身国の代表経験がなければ、国籍を取得すればすぐにその国の代表になれる。(中略)7月のパンアメリカン大会や、アフリカ選手権はともに中国出身選手から優勝者が出た。 (朝日新聞19日付)
「元中国人」という表記はいかがなものか思いますが。ポイントはそこではなく、なんで中国出身で各国に帰化した(いわゆる華僑)選手が代表になる=「世界中に散らばっている」現状が”だめ”なのか?国際卓球連盟もまた、多くの競技と同じくヨーロッパ主導だからでしょう(五輪種目にしたのは日本人会長の時代ですが)。
卓球のケースが”だめ”なのであれば、例えば、アメリカが取っているスポーツ振興策は根底から見直しを迫られます。世界中から有力選手をスカウトしてアメリカに移住させ、代表選手に仕立て上げてメダルを量産してきたわけなので。
対応策としては、帰化しても代表になりづらいルールを作るのでしょうが、それが本当に競技の振興につながるのか、非常に疑問です。むしろ、トップレベルの選手が各国に広がっていることを喜ぶべきなのでは。
上記2つに関連するのは「特定の勢力が業界を牛耳っている」という問題です(ハンドボールの例は明らかな不正ですが)。
現場=選手たちのプレーの素晴らしさとは関係のないところで、政治と経済の力学が働いてしまう。本来は営利団体ではないはずの「国際~連盟」や各国の「~協会」が、広告代理店・テレビ局と結託して大企業並みの利潤を追求する。「稼げる国が偉い」って論理です。
同じ構造的問題を抱えるのが日本のプロ野球。
<その3>
言わずもがなの「巨人の補強」です。阪神の岡田監督や赤星など他球団だけでなく、所属選手の内海(や二岡も微妙な発言)、OBの広岡からも大批判が起きる始末。(各紙報道より要約)
巨人のやり口を「横暴」と批判すると、一部のファンからすぐに「ルールにのっとってやっている」「来たい選手がいるから選手が集まる」「豊富な資金で補強することの何が悪い」といった”ひいきの引き倒し”ような擁護論が巻き起こります。
その結果がプロ野球人気の低迷、巨人戦視聴率の低迷なわけで、今回の大批判は”良識派”の強い危機感の表れと言えるのでは。「負け犬が”良識”を口にする」という皮肉がありますが、これはまさに政治や経済で用いられる話。スポーツがそうなってしまえば、誰も見向きしなくなるでしょう。
さて。FIVB、JVAはどうか。
ヨーロッパ・南米主導、日本のカネに依存した運営、連盟会長の横領疑惑、そして今回のW杯での疑惑の判定(男子日本VSブラジルだけじゃなく、大会を通じて変な判定が目立ったのは何度も指摘した通りです)。FIVBに開封確認つきで送った質問メール(←ブラジル戦での判定の根拠)は、「開封した」という自動お知らせメールだけが届きました。正式な返信があるのかどうか(期待してませんが)、「良識派」がいることを願っています。
rioさんこんにちは!
初めてコメントさせていただきます。
以前からrioさんが書かれている内容もまたその量も普通ではないと感じていましたが、やはり記○さんの視点はさすがです(^_^)
私たちに感動を与えてくれるスポーツですが、スポーツ界も掘り起こしてみれば、複雑な問題が渦巻いているのでしょうね。
W杯バレー男子のブラジル戦のオーダーミスは、前代未聞でもあったため、
点数がゼロになってしまうなんて驚きでしたね。アウトオブポジションで、1点ぐらいの加点や減点は見たことありますが...
監督に責任はありますが、コーチは何をしていたのか、という疑問が湧きました。もちろん、監督を擁護するつもりはありませんし、皆さんが仰るようにその件に関するもう少し丁寧なコメントがあっても良いのでは、とは感じました。
監督は戦術で頭が一杯だと思うので、むしろコーチが率先して先発メンバーを確認するぐらいでないとダメだと感じます。植田監督の就任期間中にコーチが変更していますが、こういうこともアリなんでしょうか。
普通は最初から最後まで同じ人が責任をもって務めるべきものではないのでしょうか。事情がよくわかりません。
できることなら、東レの青山さん、小林さんといった有能な人に全日本のコーチに就任してほしいです。また、欲を言うならば、監督は日本人でも外国人コーチを招聘するとか...(欲がありすぎて書ききれませんが..笑)
今後も話題豊富なブログを楽しみに拝見させていただきます♪
by ピピ (2007-12-22 17:30)
>ピピさん、コメントありがとうございます。私はもはや野良ですから(笑)。企業内にいれば日々忙殺でこんな形のブログはできなかったでしょうね。
野球やサッカー(←っていつも引き合いに出してしまいますが)の場合、監督が変わると、コーチ陣をどうするかってことが必ずニュースになりますよね。関心の度合いが違うといってしまえばそれまでですが、バレーの場合、あまりにもファンをないがしろにし過ぎ=情報が少なすぎだと思います。
JVAのホームページを見ても、”HPでしか得られない情報”というのがほとんどありません(収支報告書ぐらいです)。こんなやる気の無さなのに、うわべだけサポーター制度を真似をしてカネを広く薄く集めようという魂胆が嫌ですねー。
by rio (2007-12-22 17:53)
ハンドボールの話題を採り上げていただいて、嬉しいです。身近にハンドボールに取り組んでいる人間が多いもので。
しかし、今回の予選やり直しの決定、日本の独力では無理だったでしょう。日本のマスコミが世論に訴えるという場面は見られなかったですし。韓国が熱く運動してくれたお陰だと思います。
もっとも、ハンドボールに対する国民の関心、そして実力が、日本の方が低いことは事実。協会には、もっと頑張ってハンドボールの裾野を広げていただきたいです。選手の育成やPR活動など。ハンドボールは、まさに生身と生身がぶつかる戦争そのもので、観戦してみると、これほど面白い競技もありませんから。
by knacky (2007-12-23 01:27)
カネを生む・カネが動くコトを是とする故にひずみや不条理が増えていく…
ってのがアマスポーツ界でも蔓延しているのは切ないですねぇ↓
「プロスポーツ」なら「ある意味やむなし」な気もしますが、そうした傾向が過剰になるにつれ観衆を冷めさせ、また醒めさせてしまうという悪い流れは危惧されるトコロですよね。
まぁ「阪神関係者による巨人批判」なんてのは「オマエがゆ~なっっ」ってハナシで思わず苦笑してしまいますがw
というかNPBにおける巨人やMLBにおけるヤンキース、はたまたサッカー界におけるレアルマドリードといった「スター軍団」が、その陣容の割りには勝てない・ってのを生暖かく眺めるのが好きな偏屈モノとしては、そういうチームの存在というのもいわば「必要悪」なんですけどねw
by まりふぁな (2007-12-24 02:07)
>Knackyさん、ハンドボールは朝鮮日報で大批判されているのを見てから気になってたんですよね。予選のやり直しというのは前代未聞の”不祥事”でしょうが、日韓にとっては朗報ですね。
ハンドボールだけじゃなく、柔道その他でも日本が政治力を発揮できないのは、日本のスポーツ界の構造的な問題だともいえます。日本のスポーツ選手は、「競技をとったらなにも残らない」タイプの育てられ方をしている人が多すぎますよね。なので、競技の解説はできても、競技の事業化については何もわからないという…。
バレーでいうと、男子選手が「女子はバレー漬けになっているから引退後が心配」なんてことをよく言ってますが、”一般人”から見れば男子も心配。広い視野で競技全体、そして社会全体を見渡せる人材を育てていくことが急務だと思います。
by rio (2007-12-24 09:35)
>まりふぁなさん、”岡田阪神”はまだ一度も巨人に負け越してないですから、その分、批判にも熱が入るんでしょうね。大補強予定をふいにされたってうらみもあるんでしょうが(笑)。
サッカーのプロ化、野茂のメジャーデビュー。この2大ニュース以降、関係者の思惑に反して、日本人のスポーツを見る目は国際試合中心に激変したと思います。想像するに、巨人的なものを中心とした見せ方のあざとさに飽き飽きして、国際試合に”純粋な実力のぶつかり合い”を感じるようになったからでは(ほんとはそうじゃない部分が多々あるにせよ)。
読売ジャイアンツは、関係者たちがそう望んだ通り、”地域のチーム”ではなく”国民のチーム”であり続けました(いまでも)。けれど、五輪の代表チームなど、本当の意味での「国民のチーム」が登場すると、読売ジャイアンツの位置は相対的に下がります。そうなると、地域を持たないだけにもろいですよね。昨今の視聴率の低迷の一番の原因はそこでないかとにらんでいます。関係者たちはそのことに気づいていないのか、補強=優勝=視聴率アップ、という”昭和の数式”から抜け出せていないように見えてしまいます。
by rio (2007-12-24 09:47)
rioさんこんにちは 卓球には少し詳しいつもりなので、卓球に関する部分について書かせて下さい。
>なんで華僑選手が世界中に散らばっている現状が”だめ”なのか?
中国系選手は実力が高く、結果国際大会では中国系選手が上位を独占することが近年多いんです。特に女子でその傾向が顕著です。すると表面上はA国対B国ですが事実上中国系同士の対戦ですので盛り上がりません。結果ただでさえ低い卓球に対するメディアの注目がさらに下がり、卓球人気が今以上に衰退するのでないか、というのが華僑が散らばるとダメな理由です。ですので「ヨーロッパ主導だからでしょう」というのは失当だと思います(ちなみに国際卓連会長はカナダ人)。さらに「帰化しても代表になりづらいルールを作るのでしょうが、それが本当に競技の振興につながるのか、非常に疑問です」という点についても卓球界では逆に考えられているわけです。
by しょうちゃん (2007-12-24 14:28)
>しょうちゃん さん、すみません少し横入りします。
なかなか難しい問題ですよねぇ?
1.質の高い選手が各国に散る⇒2.各国での競技の質が向上する⇒3.世界レベルでの競技の底上げが実現する…という流れが理想的なんでしょうが、2.に至る以前に競技そのものや人気が衰退してしまう・というコトは確かにありえるかもしれません。
とりわけ卓球の様な(原則)個人競技はチーム競技よりも「突出した個人の能力や技術」が周囲に与える波及効果は薄いかもしれませんし、そうなると(汚い表現ですが)「助っ人に母屋を取られる」的な現象が起きるのかもしれません。
なんとなく近年の大相撲の状況や高校野球における野球留学の問題を連想してしまいました。
しかし、そうした「帰化組」が現役生活を終えた後もその国に残って指導者への道を歩んでいくのであれば、例え時間はかかってもその時にこそ前述の2.⇒3.の流れが成就していくのではないかな?とも思います。
その為にはやはり安易な鎖国(締め出し)政策に走らず、帰化選手を取り込んだ上での国内の強化策・振興策に力を注ぐべきではないでしょうか?
というよりも、そもそも「帰化選手を受け入れている各国」はおそらく(少なくとも建前上は)そうした考えで“自発的に受け入れている”のだと思うんです。まさか中国系の選手が勝手に押しかけて問答無用で帰化できる・という国が世界にそうそうあるとは思えませんし。
それに関して元締めである国際卓球連盟がクレームをつける・というのは(一理はあっても)いささか度が過ぎるようにも感じますね。
by NO NAME (2007-12-24 17:20)
あ・すみません、上↑の「NO NAME」はまりふぁなです。
うっかり名前欄確認せずに「ポチっとな」してしまいました(汗
by まりふぁな (2007-12-24 17:26)
>しょうちゃんさん、まりふぁなさん、ご意見ありがとうございます。
記事はアラカルト的に書いてしまったので言葉足らずでしたが、私の言いたかったことはまりふぁなさんが書いてくださったことでした。
卓球は長らく、ヨーロッパVS中国の勢力図で動いてきました。特に女子において、中国の有力選手が爆発的に増えたことが現在の「帰化問題」をうんでいるのだと思います。
背景には、卓球が、
・中国で(特に女性が)「食べていける」数少ないスポーツ
・共産主義国の中国において、合法的に海外移住ができ、経済安定も得られる手段
という現状があると思います。
傾向として、スポーツに限らずビジネスやなんかで中国を出て帰化した方々(いわゆる華僑)は、よほどのことが無い限り中国に戻りません(歴史的に、それだけ中国の歴代政権を信用して無いんですね)。
つまり、帰化選手の多くはその国にとどまって指導者業に従事することが期待できるわけで、受け入れ各国(日本も含め)はそのメリットを期待しているはずです。唯一、「メリットはない」と考えているのがヨーロッパでしょう。
「卓球の盛り上がり」という面で言えば、卓球は確実に世界のメジャースポーツです。普及の手軽さから、インドアスポーツでは世界一の競技人口を持っているのではないでしょうか。帰化選手の広がりがそこに水を差すとは思えません。
国際卓球連盟が欧州主導というのは、歴史的事実です。確か、初代会長、2代目会長ともイギリスの貴族ですよね。第2次大戦後、ヨーロッパ勢に対抗するためにアメリカが日本を引き込んで対抗勢力を作り、80年代後半になってようやく3代目会長を日本から出すことに成功。続く4代目会長もカナダから出せた、という歴史を歩んできたところへ、今回の「帰化問題」が持ち上がったわけです。あらゆる競技で多数の「帰化選手」を抱えるアメリカが、これを問題視するはずはなく、ヨーロッパからの牽制球と見るのが妥当だと思います。
各種スポーツ連盟は、多くの場合、ヨーロッパの貴族を中枢に据えた同好会的組織として出発し、世界各国で「新興国」が台頭したのちも、ヨーロッパが主導し続けています。国際オリンピック連盟がヨーロッパ・アフリカ主導である限り、この構図はなかなか崩れないのでしょうね。
by rio (2007-12-24 22:12)
今更だけど事実関係だけ
>唯一、「メリットはない」と考えているのがヨーロッパでしょう。
中国選手流出規制に反対したのは加盟200以上の国のうち、香港とオーストリアのみ あとは全部規制に賛成してる
>4代目会長もカナダから出せた
4代目会長はスウェーデン人、5代目が中国人、カナダ人は6代目
ここのブログ主は結構”飛ばす”人のようだね
by バンビ (2012-09-18 00:24)