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「反捕鯨」で100年前に巻き戻る国際政治・妄想編 [けっこう気になる]

反捕鯨テロリスト(←あえてこう呼びたい)による日本の調査捕鯨船襲撃事件から、一気にタイトルまで飛躍してしまいました。シロウトですから。

100年前といえば、イギリスが露・仏・独の封じ込め政策の相手に日本を選び、日英同盟→日露戦争勝利へとつなげた時代です。例えて言うなら、老舗ヤクザが新興ヤクザをそそのかして対立ヤクザに殴りこみをかけさせた、って図式です。イギリスは1滴の血も流すことなく、膨張(=南下)を目論むロシアを叩き、自らの世界戦略を成功させたのでした。

ロシアの膨張。いまとそっくりですね。ロシアが反米国家を支援していることは、以前紹介しました。これは英米体制への挑戦でもあるわけで、元スパイ暗殺事件でイギリスとロシアが険悪になっている背景にも「ロシアの膨張」があるのではないかと。

さらに、100年前といえば、イギリス連邦の一員だったオーストラリアで、白豪主義が台頭してきた時代です。中国人を中心とするアジア系の安い労働力の流入に対し、白人移民の不満が高まったことが原因でした。白豪主義は単純な人種差別ではなく、白人貧困層とアジア系との間の職の奪い合い=労働問題からスタートしたんですね。なので、牽引役となったのは(オーストラリアの)労働党。そうです、2007年11月の総選挙で圧勝し、政権の座についた党です。

アジアからオーストラリアへの人口移動。いまとそっくりですね。中国系だけで全人口の約5%。数字は年々伸びています。さらにイスラムからの流入が急増し、人種差別を声高に叫ぶミニ政党が予想以上に支持を集めています。

ちなみに、白豪主義の矛先は、次第に中国人から「優秀な」日本人に向けられるようになり、日本警戒論→日本脅威論へと飛躍していきました。これが日露戦争勝利後=ロシアの脅威消滅後のイギリスの世界戦略にフィードバックされ、第2次世界大戦へ日本を追い込んでいく要因の一つになっていったのです。

白豪主義に基づく移民阻止の手段が、「書き取りテスト」でした。少数言語も含めて50ぐらいのヨーロッパ言語を用意し、英語が得意な人にはフランス語、フランス語も得意ならドイツ語、というようにテストを与え、合格点に達しない人を落とす、という手口でした。狡猾です。

いまはさすがにこんな手口は使えないでしょうが、オーストラリア政府は移民審査の英語テストのハードルを上げることを明言し、さらに移民政策の転換も示唆しています。今回のターゲットは主にイスラム系のようですが、警戒論→脅威論という流れで国策が変えられていく様子もまた、100年前にそっくり。

ここまで考えると、オーストラリアでの労働党政権誕生がそもそもイギリスの策略だったのでは、という気がしてきます。ハワード前政権は1996年の誕生後、内政では今も続く息の長い好景気をもたらし、外交でも目立った失政は無いと言われていました。2007年の総選挙に負けた時、マスコミはその理由を見つけられず、「国民が飽きたから」と”解説”されたほどです。

しかし、ハワードの推進した外交の柱は、
オーストラリアのアジア入り(サッカーやバレーにもその影響が及びました)
中国への接近
対米従属路線への傾倒
の3つでした。つまり、”南太平洋の日本/戦争もできちゃうよバージョン”になろうとしたのだと思います。その土台作りのために、「多文化主義社会」を国策として推進してきたのです。

これは多極化を望むアメリカには好都合ですが、イギリスにとっては大迷惑。アメリカ一極集中を背後で操るイギリス、というイギリスにとっての”理想”の国際社会が崩れ、中央アジアにロシア、南アジアにインド、東~東南アジアに中国、そして南太平洋にオーストラリア(←ただし1国では担いきれず不安定化)という覇権の確立が進んでしまう可能性が高まるからです。そうなるとイギリスはただの島国。スイスのように金融で生きていくしかなくなってしまいます。

なので、ハワード政権を葬り、白豪主義的な思想基盤を持つ労働党を政権に据えたのではないかと。

労働党は発足時からさっそく、
京都議定書への批准・イラク戦争を批判→アメリカを牽制
反捕鯨運動へのてこ入れ→日本を牽制
移民政策転換を示唆→アジア、イスラム系を牽制

と、精力的に動いています。

多くの日本人はイギリス<アメリカと信じてますし、アメリカと中国だけ見てればいいや、ってな政治系コメンテイターもけっこういます。でも、南太平洋を舞台に繰り広げられているのは、イギリスVSアメリカかもしれないわけで。

内閣の大田弘子・経済財政政策担当が先日、「日本経済はもはや一流とは呼べない」と国会で演説し、危機感を煽りました。ならばどうするのか。アメリカと心中するのか、再びイギリスの世界戦略の尖兵として中国・ロシアと対峙するのか、オーストラリアのようにミドルパワーで生き残る道を模索するのか。あるいは英米と手を切って中ロと結ぶ…なんてことはあり得ないでしょうが。

小泉はアメリカと心中路線、安倍は北朝鮮しか見えない路線、福田は座して死を待つ路線、ってな感じでしょうか。それでは非常に困るんですが。 


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yutakarlson

21世紀は鯨の時代?
ピザテンフォーのyutakarlsonです。西欧の人でも、過去には21世紀には鯨の時代になる可能性もなきにしもあらずと思っていた時期もあります。アーサー・C・クラークの海洋SF小説「海底牧場」を題材として、鯨を含む海洋資源と海洋開発の重要性と、将来性などについて書いてみました。是非ご覧になって下さい。
by yutakarlson (2008-02-04 10:38) 

ピピ

この記事を読んで、とても勉強になりました。
周辺でもカナダやオーストラリアに移民する中国人が絶えないのですが、移民国家に移民することがそんなに良いかなーと感じます。

オーストラリアに移民した人の話しでは、住居費も安く、生活費は月8万円程度で足りるそうで、テニスコートなども無料で使い放題。
一方、繁華街の夜間の閉店時間が早く、夜間はひっそりとしている。
隣近所との会話や交流がなく、誰も他人の生活に干渉したり、関心を寄せない。rioさん、コレ全部、本当でしょうか?
よって、近所、親戚付き合いなどが濃い、中国のにぎやかな雰囲気が懐かしくなるらしいです。

オーストラリアのアジア入りはハワード首相の外交政策だったのですか?
はっきり言って大迷惑です。
スポーツ連盟による欧米寄りの政策かと思いました。しかし、許可する方も許可する方です。オージーたちはどう見ても体格が欧州人でしょう。
オーストラリアの加入によって、アジアのスポーツの水準が高くなればよい、という穏健派もいらっしゃいます。それも一部は理解できますが、
アジア人のもっと直接的な利益について、声高に叫んでも良いのではないのでしょうか?
by ピピ (2008-02-04 19:02) 

rio

>yutakarlsonさん、コメントありがとうございます。拝読いたします。捕鯨の問題は環境問題よりも政治の側面が強いので、なかなか難しいですね。
by rio (2008-02-04 21:25) 

rio

>ピピさん、本当かどうか、と尋ねられてもちょっと答えようがありません。受け止め方は人それぞれですから。

中国をはじめ、アジアの家族主義的な価値観からみれば、オーストラリアは「隣近所との会話や交流がない」ように見えるでしょう。特に中国系はチャイナタウンから出ようとしない、アジア系以外と交流しようとしないという傾向があるので、ネガティブな発想になりがちなのかもしれませんね。

実際は、ビーチ、公園、カフェ、バーなどは平日でもたくさんの人出があり、会話を楽しんでいます。私も、一人でカフェにいるときなど、何度か世間話で声をかけられたことがあります。バスや電車で席が隣や向かいになった人が声をかけてくることも珍しくありません。

他人に干渉しない・関心を寄せないのは、それがマナーだからです。繁華街が早く閉まるのは、オージーは朝がとても早いからです。もちろん、シティ中心部は24時間動いてます。チャイナタウンも24時間動いてます。

要するに、郷に入れば郷に従えってことなんでしょうね。移民することが良いか悪いかは、その人の適応力によって違ってくるのだと思います。

オーストラリアのアジア入りは、私は妥当な路線だと思います。スポーツの面で「体格が欧州人」という見方をしてしまうのはいかがなものかと。それならば、中央アジアの「~スタン」系の国々(カザフスタンなど)もアジアに入れません。東アジアの中でも、日本人と漢人とでは体格差がありますよね。

また「アジア人の直接的な利益」という発想はいささか危険です。人によっては、レイシズムの印象を受ける人もいるかもしれないので要注意です。そもそも「アジア人」というのは便利のいい言葉として使われているだけで、そのような人種は存在しません。

地理的に近く、政治・経済的にも結びつきの強いオセアニア地域がアジア地域に編入されてくるのは、安全保障の点、経済効率の点、文化交流の点などあらゆる観点から合理的だと思います。
by rio (2008-02-04 21:48) 

rio

>yutakarlsonさん、コメントが投稿できませんでした。私にはちょっと難しすぎてやり方が…orz すみません
by rio (2008-02-04 22:23) 

ピピ

私はオーストラリアは予選で北米地域辺りに入るのが妥当だと思います。
背景に『英国対米国』の対立があるのかもしれませんが、
アメリカに勝って代表になる見込みがほぼないからではないでしょうか。

>地理的に近く、政治・経済的にも結びつきの強いオセアニア地域がアジア地域に編入されてくるのは、安全保障の点、経済効率の点、文化交流の点などあらゆる観点から合理的だと思います。

私の実感としては、オーストラリアとそんなに緊密だという印象は受けませんでした。(個人的な感覚ですが、メディア報道にしてもそうです)
むしろ、突然、アジア予選に編入されていて本当に意外だった印象があります。
例えば、極端な例を挙げると、アジアと融合する気持ちがあるのであれば、日本、中国、韓国、その他の地域が大災害に遭った時などに何か支援をしたり、関心を寄せたりしてくれているんでしょうか。(いささか嫌な言い方ですが)

オーストラリアの政治的な目線はやはり英国を中心とした「白豪主義」だと感じます。それで、スポーツの予選はアジアに入るんですよね。
ひと言でいえば、かなり図々しいような気がするんです。


アジア予選に参加する国は中央アジアを含めて本当に多いです。
女子バレーのカザフスタンなども力をつけていますから、今後も毎回、勝てるとも限りません。
さらには、「日本が強化を進めて、オーストラリアに勝って代表になればよいではないか」という次元のことだけではないのです。

タイ、サウジアラビアなども「日韓中」に勝って代表になることを望んでいるでしょう。しかし、オーストラリアの加入によって、さらにハードルが高くなるわけです。アジアのほとんどの国は強化体制、資金面において日本ほど恵まれた条件がありません。そういう国にとってはアジア代表になる夢がま遠ざかってしまう、といったところでしょうか。

もっと簡単に言えば、人の人生において、高校、大学受験は一生を左右すると言っても過言ではない関門ですよね。たいていの場合、1~2回のチャンスしかない。もちろん、生涯勉強する姿勢を忘れずに、学歴に関係なく成功している人もいるでしょう。
アスリートにとって、W杯や五輪予選は一生で1~2回巡ってくるかどうかの貴重なチャンスです。そのハードルがさらに高くなった場合、普通に考えて嬉しいでしょうか。
W杯、又は五輪の出場経験があるかどうかという点がその選手のその後の人気度や人生を左右する場合もあるのです。
アスリートにとっては、決してたかがオリンピックではないはずです。
私が書きたかった「アジア人の直接的な利益」とは言葉足らずでしたが、上記のようなことです。
by ピピ (2008-02-05 12:07) 

rio

>ピピさん、残念ながらご意見には賛同できません。

オーストラリアが北米に入るというのはそれこそつじつまが合いませんよね。

オーストラリアとアジアの結びつきについては、失礼ながらピピさんがご存知ないだけだと思います。オーストラリアの歴史は、イギリス・アメリカとの政治的な結びつきと、アジアとの経済的な結びつきの間での、葛藤そのものです。

言い換えれば、オーストラリアはアジアに接近したくてもできないというジレンマを100年間抱えてきた国なのです。1989年に当時のホーク首相がAPECの開催を実現させ、いまも引き継がれていることや、オーストラリアが日本に先駆けて中国とFTAを締結したことなどからも、アジアとの緊密ぶりがうかがえます。

災害への支援や関心については、いささか暴論ではないでしょうか。もちろん、阪神・淡路大震災のように具体例として上げられるケースもありますが、そういう問題ではないと思います。

日豪関係は「捕鯨以外に問題は存在しない」と言われる友好関係が数十年続いています。貿易でも、オーストラリアと日中韓の結びつきは非常に強いものです。日中韓のコミュニティはオーストラリア全土に根を下ろしていて、極端な話、英語が話せなくても不自由なく暮らせるほどです。

「アジアのアスリートにとってハードルが高くなる」というご意見も納得しかねます。その批判が成り立つなら、バレーの場合はまず、大会の運営方法から変えなければいけません。日本が世界中のどの国よりも圧倒的に有利ですから。

どうぞ、20世紀型のナショナリズムにはまってしまわれないようお願いいたします。
by rio (2008-02-05 13:05) 

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