SSブログ

週刊文春の危機感 [けっこう気になる]

5月24日号の週刊文春に面白い記事がのっていた。宿敵のはずの朝日新聞社を擁護したのだ。まあ「宿敵」と言っても幹部同士が社を入れ替わってたり、社外秘情報が役員同士で交換されてたり、朝日を叩けば雑誌が売れたりするらしく、同じムラの中での馴れ合いのようなもんなのだろうが。

それはさておき、週刊文春が擁護したのは、安倍首相が9日に週刊朝日を訴えたことについてである。長崎前市長が射殺された事件に絡み、週刊朝日が5月4日号、11日号の広告や記事で、容疑者と安倍首相の秘書に接点があるように報じた。記事そのものはどうでもいい内容なので、それでは売れないと判断してセンセーショナルな見出しをつけたのだろう。雑誌やスポーツ新聞でよくある手口だ。安倍首相はそれを「政権崩壊を狙った言論テロ」と糾弾し、訂正記事、謝罪広告を出してもそれで幕引きとせず、法廷へ持ち込んだ。

週刊文春はそれを大人気ないと批判し、旧田中派を引き合いに出して首相は感情的になっていると大学教授に言わせた上で、しょうもない記事に目くじら立てるより考えるべき問題はほかにある、とたしなめたのだ。

週刊文春の主張はもっともだ。一般的な読解力のある人が読めば、週刊朝日も質が落ちたもんだと笑うか嘆くかするぐらいのレベルの記事なのだ。訂正も2度出したわけで、わざわざ裁判をするようなことではない。裁判費用を個人で出しているのか、税金で出しているのか気になるところだ。なんせ安倍首相は原告になっていない。原告は暴力団と接点があることをにおわされた公設秘書3人のみである。

しかし、脳みそが酒と軍隊でできている中川昭一政調会長の援護射撃(背後から味方を打ち抜くんじゃないかと冷や冷やする)もあって、チャチュチョ言葉の安倍チュチョウは矛をオチャめる気配が無い。

だらだらと前書きを書いたが、気になるのは「なんで文春が朝日をかばったのか」である。これがメディアと政治の本質にかかわることでなければ、文春は「水に落ちた朝日」を叩いているはずだ。しかし今回の訴訟には、朝日を目の敵にしている安倍首相の私怨が絡んでいる。言い換えれば、安倍首相(と不快な仲間たち)は政治の表舞台に私怨を持ち込む恐ろしい集団なのである。

文春と朝日は、それぞれ「雑誌界の雄」「新聞界の雄」と勝手に自認している両巨頭である。販売戦略上も「ライバル」としてお互いを位置づけなければならないめぐり合わせにある。片方が政治家の私怨で潰されようとしているのを、手をこまねいているわけにはいかないのだろう。

安倍首相が求めている損害賠償は約5000万円と記事取り消しの謝罪広告。朝日が謝っているので「不適切な記事だったかどうか」についての争いは無く、記事取り消しは憲法の趣旨からして認められないはず(認められたら大騒ぎだろう)。となると、残る争点は「2回の訂正後でも、安倍首相(の秘書)の名誉がまだ毀損されたままなのかどうか」だろう。この程度のことを司法に持ち込んだ政治家は前代未聞。小学校の学級会レベルだ。

さらに安倍首相は、17日にも、日興コーディアル処理事件にからむ朝日の山田厚史編集委員のコメントを問題視して、謝罪広告と3000万円を求めた訴訟を起こしている。

本当に怖い政治家とは、安倍首相や中川昭一政調会長のように生まれてからずっと子どもの社会感覚で生きている面々である。ぼんぼん育ちで政治家になる選択肢しかなかった彼らは、私情と公人としての言動がしょちゅうハウリングを起こしている。核兵器が日本にあれば、私怨でボタンを押しかねない。

安倍首相に会えたら(会えないけど)ぜひ聞いてみたい。
「朝日への訴訟連発は私的ですか!?公式ですか!?」


nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:blog

nice! 0

コメント 2

madoka 

佐高信×姜尚中『日本論[増補版]』(角川文庫)の冒頭で安倍首相の話題が出てくるのですが、姜さんが、「ちょっとクレーマーですよね、悪い意味の。」と言ってます。そこで紹介されているいくつかのエピソードを読むと(さらに今回のrioさんの記事を読むと)、確かにヒステリックな子供のような印象を受けます。学級会で、何でもかんでも先生に言いつける子供。
私はもうあのテの人たちを見ると気味が悪くてたまらず、ニュースなどもつい避けてしまいがちなのですが、うーん…、避けてる場合じゃないんでしょうねえ…。
でも、あのちょっとイッっちゃってる目で「美しい国」とか連呼されるともうジンマシンが出そうなの!やることなすことキライなの!
うう、私が「ヒステリックな子供」になってどうする…。
by madoka  (2007-05-21 02:38) 

rio

madokaさん、コメントありがとうございます。

佐高信と姜尚中は根本的に安倍晋三と相容れないですもんね(笑)。

私は小泉さんも安倍さんも嫌いですが、小泉さんは政治家としての能力は(良し悪しではなく)高いと認めています。安倍さんとの決定的な違いはそこでしょう。安倍さんは「タカ派強硬路線」以外に策のない人。国際連盟を脱退して日本を泥沼の戦争に引きずり込んだ無策な政治家たちの亡霊のように見えてしまいます。

安倍さんの”盟友”中川昭一もこれまた情けないクレーマーです。かつて私がローカル版に書いた小さな記事(←もちろん事実)に、本社の政治部を通じて「事実を悪意的に捉え、ねじまげて記事を書いている」と抗議してきたことがありました。

彼の酒びたりは有名で、自民党内の会議や定例記者会見にひどい二日酔いで出てくることはしょっちゅう。二日酔いが過ぎて打ち合わせに無いことを口走り、事務方を慌てさせるような”政治家”です。

誰がこんなポンコツを選んでるのでしょうか。責任者=主権者はもっと自覚を持ってほしいと思います。
by rio (2007-05-22 08:11) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。