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W杯男子・5日目 ゾルジは今すぐうまくなれる方法を伝授 [バレーボール]

試合が終わる前にコラムを書いてしまってやっぱり明日は試合が無いし夜の街へ繰り出すのかゾルジ兄貴の「俺についてこい」のコーナーです。今日のテーマは「今すぐうまくなれる方法」です。怪しげな教育産業、ではありません。

共同通信が「五輪遠のく」と見出しをつけ、「(日本の)3位以内が厳しくなった」とおちゃらけた記事を配信しておりますが、そこはゾルジ兄貴。「ここまでで北京への切符争いに残っているのは、ロシア、ブラジル、アメリカ、ブルガリア、そしてまさかのプエルトリコ」だそうで、しかも「第3ラウンドで5チームから4チームにしぼられるはず」と。失礼ぶっこきまくりです。怒れ、プエルトリコ!

さて。夜遊びに出るために(←勝手に決めた)、今日のネタは質問にお答えします形式。質問は「男子バレー界はどんなふうに変化しているのか?」です。

ゾルジ兄貴、いきなり「ブラジルのリカルドが欠場してることとか、どこぞのチームみたいに状態が不安定だってこととか、そんなことを話すつもりはねえよ」って。誰も頼んでませんが…。ここ数年の男バレ界を解説してくれるそうです。

1、世界バレー2002でブラジルが優勝して以降、ほかのチームも急速に成長して戦国時代に突入している。
※この件については、ここでもたびたびご紹介しているT.w.師匠のブログに詳しく背景が書かれています。連載「レゼンデバレーをご参照ください。一言で言えば、「高速パイプ攻撃を発明して頂点に立ったブラジルの戦略を、世界の上位チームが取り入れた」ということです。

2、身体的な強さが技術よりも格段に重要になっている。

3、多くの国が同じようなシステムを採用しているので、旧型バレーに見られたようなキャラの違いは失われつつある

4、最も重要なことは、データ分析が必須になったことである

バレーボールがうまくなるために重要なことをまとめると以下の通り。
a.個人技
b.身体能力を高める
c.戦術とデータ

a.個人技を磨くことはかなり行われてる。アタックがより速く、パワフルになっているので、特にディグやつなぎの技術が進化した。アタックとブロックの個人技については、技術を高めるよりも身体能力を高めるほうが進化の近道だ。

b.身体能力の強化は、個人技を磨くことよりも重要だ。最近では、フィジカル・トレイナーがチームの中心を担うようになった。10~15年前に比べ、選手たちのジャンプ力や速さは格段に上がっている。

c.データについては、ラリーごとに非常に細かく分析されるようになった。どんな試合でも、選手たちは相手チームのキャラや傾向をしっかり頭に入れて戦う。試合の戦略は膨大なデータに基づいている。スカウトが常に、相手の選手たちのキャラ、チームの得意技、ローテごとの特徴を観察している。

近年は、aよりも、bとcの側面が大きく進化しているはず。個人技を伸ばすよりも簡単だからだ。トレイナーは、選手たちが身につけている技術力を身体強化でアップさせればいいわけだから、無駄が省ける。データに関しても数字をいじるだけ。せいぜいアナリストが眠れなくなる程度だ。

一方、個人技を磨いて新しいシステムや手法の開発につなげることは、非常に難しいし、リスクが大きい。目に見える成果はなかなか出ないだろうし、予想以上の時間がかかるからだ。技術の向上は不規則で、予測できない”賭け”なのだ。(止)

バレーボールが発明されてから100年余り。技術的なことはほぼ出尽くしたということでしょうか。例えば、かつて葛和・元全日本女子監督が妄想した「ゼロクイック」なんてものを練習するぐらいだったら、ウェイトトレーニングをやったほうがいい、ということですね。

ただ、ブラジル黄金時代の基礎となった「高速パイプ攻撃」が男子で一般化したり、全日本女子が見せる「ラリー中にレフトがツーで打つと見せかけてセンターに上げる」攻撃を韓国が取り入れたり、と個人技を磨くことで今も”新技術”が生まれ、世界に普及しています。

「手持ちの技を磨き、データを活用して勝負せよ」と主張するのは、あまりにも”イタリアンバレー”的(あるいはヨーロピアンバレー)過ぎるのでは。もし各国がそんな争いにはまってしまったら、バレー界のヨーロッパ優位は半永久的になるでしょう。 

そもそも、バレー界の「技」の中で、ヨーロッパ勢が発明したものはほとんどありません。日本が始めた各種クイック、時間差攻撃、回転レシーブ。アメリカのツーレシーバー制やリード・ブロック。ブラジルの高速パイプ攻撃。すべて、「高いヨーロッパ」(特にロシア)に対抗するために編み出されてきた新システム、新手法です。新技を「高いヨーロッパ」が取り入れて(真似して)さらに強くなり、対抗するために他の地域はまた開発に頭をしぼり、の繰り返しがバレーの歴史でしょう。

その辺のこと、ゾルジ兄貴はどう思ってるんでしょうか。 


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area71

楽しくブログを読ませて頂いております。

私はまさにそのヨーロッパバレーの真っただ中にいます。
身体能力の素晴らしさには圧倒されます。

でも、ヨーロッパで考案されたものは何もないのは本当のことですね。
練習時間もアジア、南米に比べれば短く、効率重視、
その中で生き残れるのは身体能力と戦術意識の高い選手。

ヨーロッパ各国協会に日本並みの強化費があり、
本格的に普及し始めれば、どうなるのか考えただけでも
恐ろしいです。

日本男女も身体強化に取り組む前に諦めてしまっている“身体能力でかなわない”とトップにいる人の口から聞かれてしまいますが、
対抗するだけものを目指していかなければ、この状況を変えられない可能性が高そうです。

極限の特訓をしてそれで生き残れた選手なら、やれると思っています。
日本人だから筋力が弱いで逃げないで世界の主流に乗り、そこでみつけられる日本独自の打法を開発する道があると信じています。
by area71 (2007-11-24 10:43) 

はや

仮に日本が海外との身体能力差を覆す様な画期的な戦術や技術を
編み出したらあっという間に各国に模倣されるでしょうね。
「身体能力が低い日本があれだけやれるなら俺達が同じ事を
やれば遥かに強くなれる。 よし俺達も真似してやれ。」という風に。
技術や戦術を取り入れるのは可能ですが身体能力を
真似することはできません。
私は日本がオリンピックでメダルを取る事は二度とないと思います。
by はや (2007-11-24 13:01) 

rio

>area71さん、ありがとうございます。「ヨーロッパバレーの真っただ中」ということは、どこかの国際リーグか大学でプレーされているんですか!?かっこいい!素人の私があーでもないこーでもないと素人考えを並べているだけのブログなので、「そこは違う」という点があればビシバシ教えてください。

ヨーロッパは技を生んでないだけじゃないですよね…。新技が出てくると、いつの間にかその効果を軽減してしまうようなルール改正が行われてきました。アンテナの設置、ワンタッチを1回と数えない、サーブのブロック禁止、腰から下を使ってもOK、ファーストタッチはドリブルとらない、などなど。

ゾルジが類まれなスーパーエースだったことはもちろん認めていますが、そういうヨーロッパ優位の歴史的背景から生まれたプレイヤーだという自覚も持って欲しいところです。

昔から、アジア諸国は足腰の強さ=速さと正確さで対抗してきましたよね。ところが、後から追いかけてきたブラジルにあっという間に抜かれてしまって。中国女子以外はおいてけぼりにされてしまいました…。「どこからでもコンビ」という戦法はまさに日本的だと思うんですが。
by rio (2007-11-24 14:15) 

rio

>はやさん、コメントありがとうございます。

「身体能力」とよくひとくくりにされますが、ジャンプ力やアタック力だけが身体能力ではありません。ブロックの横移動は非常に速いヨーロッパ諸国が、レシーブの横移動が意外なほど遅いことにお気づきでしょうか。日本と正反対で、これも「身体能力」の差です。

「身体能力の差」のためにヨーロッパに真似できない技もたくさんあって、だからこそ、ヨーロッパ主導のルール改正がたびたび行われてきたのだと思います。

日本は全体的にひょろひょろ(特にセンター)で、ジャンプ力もアタック力もさほどありません。これは「身体能力」の差ではなく、「強化法の誤解」によるものです。

日本には、「センター(昔はサイドも)は速く高く跳ばなければならないので、筋肉をつけすぎてはいけない」という誤解がありました(今もあるでしょうね)。その結果、男女ともひょろひょろばかりいるのです。

サイドでも、清水のような首の太いマッチョマンや、石島のように体重100キロなんて、10年前までは「規格外」でした。越川タイプが「理想」とされてたからです。山本がひょろひょろなのは、本人が「筋肉をつけすぎるとスイングが遅くなる」と考えているからだそうです(←雑誌の取材にそう答えていました)。

一時期低迷した中国女子が世界のトップに返り咲いた(アテネ五輪金メダル)のは、アジア的な身体能力を存分に活かした戦術を完成させたからです。日本がいけなかったシドニー五輪では、韓国女子が同様の戦略で、メダルまであと一歩のところまで行きました。

日本が勝てないのは身体能力の差ではなく、強化の方向性が間違っているか、正しいとしても徹底されていないからだと思います。
by rio (2007-11-24 14:39) 

はや

>「身体能力」とよくひとくくりにされますが、ジャンプ力やアタック力だけが>身体能力ではありません。ブロックの横移動は非常に速いヨーロッパ諸国が、レシーブの横移動が意外なほど遅いことにお気づきでしょうか。日本と正反対で、これも「身体能力」の差です。


部分的には日本選手が優れてる部分もあるかもしれませんが
総合的(高さ、ジャンプ力、体格、パワー等)に見て不利な部分が
どうしても多く目についてしまうんですよね・・・自分から見たら。
バレーボールというスポーツの性質も相まって。
可能な限り頑張って欲しいとは思いますが。
by はや (2007-11-25 01:52) 

rio

>はやさん、一度、FIVBのホームページにある各国のチーム紹介をご覧下さい。

身長と体重(=体格)、スパイクとブロックの最高到達点(=ジャンプ力)が書かれていますので、ご自分の目で日本と他の国を比べられてはいかがでしょうか。

「日本はロシアよりは確かに小さいけど、他の国とは大して変わらない。むしろ、ブラジルよりはでかい」など、いろいろな発見があると思いますよ。
by rio (2007-11-25 03:51) 

hoi

素朴な疑問ですが、バレー放送はなぜネットの延長線側からの映像がベースになっているのでしょうか。
ネットを挟んでボールを打ち合う競技、テニスや卓球、バドミントンはみなベースラインやエンドライン側からの映像がベースです。選手の横方向(ネットに沿った方向)の移動が見やすいからだと思われます。

Vリーグの会場へ行っても、チームのビデオ撮影席は必ずエンドラインの後の観客席に作られています。どちらの映像により情報性が高いかは明らかでしょう。
ブロックの高さ、移動の速さ、ブロックの正確な位置(クロス閉めなのかストレート閉めなのか)それによってレシーバーがどこに入るのか、いずれもエンドライからの映像が格段にわかりやすいと思います。

野球もキャッチャーの後からの映像ベースから現在のセンターからの映像に変わったときは何だか変な感じがしたものですが、すぐに慣れました。違和感よりも情報量の多さが勝ったからでしょう。

映像が変わって見えるものが多くなればファンの興味も変わるでしょうし、変なアナウンスも少しはまともになってくれるかもしれません(これは無理か・・・)
いずれにしても、テレビ局さん、もう少し考えてくれないかな。
by hoi (2007-11-25 12:16) 

rio

>hoiさん、正確なことはわかりませんが、いくつかの理由が考えられます。

1、表情を効率よく映せる
ネットを挟むスポーツはほとんどが2人か4人(シングルスかダブルス)ですが、バレーは12人もいます。エンドライン側から映すと、表情が捉えられるのは、手前ではセッターとアタッカーの横顔、ネット越しの相手ブロッカーで精一杯。あとは後頭部ばっかりの映像になってしまいます。

2、迫力の問題
3次元を2次元で表現するテレビの特性として、画面の左右の動きはダイナミックにとらえられますが、画面手前から奥(遠ざかっていく)は実際と比べてかなりしょぼくなってしまいます。迫力を出すには「ダイナミック」なカメラワークに「花形」のプレーをあてはめる必要がありますよね。ということで、アタックの横移動が見られるカメラ割りになっていると考えられます。

奥から手前(近づいてくる)は画面の上から下を一杯に使えばダイナミックに映るではないか、という考え方もあると思いますが、現実的ではありません。ホームの視点で映す場合、味方コートのエンドラインから映しながら、アタックの瞬間だけ相手コートのエンドラインの映像に切り替える必要が出てくるからです。

3、テレビ局バレー班がバレーボールを分かってない
いまのスタイルは、バレーのテレビ中継が始まった約半世紀前から変わってません。当時は戦術らしきものはほとんど無かったので、12人の動きが捉えられるカメラワークで良かったのだと思います。

半世紀たってルールは激変し、戦術も複雑になったのにテレビ局はいまだに「前例踏襲」なんですね。余談ですが、いまだに日本だけをローテ順で紹介するやり方も疑問です。セットごとに、相手のローテと日本のローテがどう対面するか、が大きな情報なのに。

一応、テレビ局側の言い分を勝手に代弁しておくと、工夫は重ねています。

今大会では、ジャンプサーブのトスを上から映したり(迷惑ですが)、
コートの真上から選手をコマのように映して戦術的な動きを見せたり(顔も番号も分からないのでコアなファン以外には意味がない映像だと思います)、
副審の上からネットに接近してネット際の迫力を出そうとしたり(画面真ん中のネットの割合が多すぎて見づらいのですが)、
と”がんばって”ます。ただ、あくまで”テレビの文法”から発想しているので、工夫が成功しているとはいえません。

どこの局か忘れましたが、リプレイのときにできるだけエンドライン側からの映像を流すというカメラワークをしていたことがありました。現時点ではこれがベターかも。コートの横幅)(9メートル)がいかに広いか、セッターがどうやってブロッカーを振っているのか、ブロッカーはどんなふうに追いかけてくるのか、アタッカーはどんなふうにスタンバイするのか、などが、リプレイ=スローなのでよくわかります。

もうちょっと時代が進んで(というか技術的には今すぐにでもできますが)、ニンテンドーDSのような「2画面テレビ」みたいなのが出てくると、メイン画面では横映像、サブ画面で縦映像、となるかもしれません。
by rio (2007-11-25 14:49) 

area71

突然ですが、連続してコメントします。
rioさんの鋭い観点にいつも感心させられっぱなしです。着眼点が凄く自分の新しい扉を開けてくれるような感覚になります。


勝手ながらTBさせて頂きましたので、通知いたします。もし不都合があるようでしたらすぐに削除いたします。
by area71 (2007-11-25 21:25) 

rio

>area71 さん、ありがとうございます。スパムと荒らし以外は何でも歓迎のブログですので、どうぞご自由に!area71さんのブログはすごいボリュームですね!興味津々でこれから拝読します。
by rio (2007-11-26 00:19) 

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