SSブログ

「リークがあるとする具体的な根拠は示さなかった」…ぷぷっ [今日のニュース]

あらゆる“権力”がマスコミにバッシングされながら変革を遂げている昨今、唯一、手つかずで残っている権力が当のマスコミです。だがしかし。いまのマスコミが完全に行き詰っているのは誰の目にも明らか。だからこそ公権力から公然と批判されてしまうような隙が出来てしまうわけで、自業自得です。

読売新聞が22日付でウェブ配信したニュースのタイトルがこちら↓

国家公安委員長「リーク記事しか書かない」

まあ、「しか書かない」というのは間違いですけどね。記者会見で発表されたことも書きますし、加害者・被害者の自宅はもちろん、その近辺に朝から晩までスクラム組んで押しかけて“雑感”を取ることもしてますから。なんてちょっと揚げ足を取ってしまいましたが、記事のタイトルどおり、スクープとされる記事の99.9%は捜査当局からの情報漏洩です。

そんなことは当事者が一番よくわかってるくせに、読売ったらこんなこと書いてしまいました。

中井国家公安委員長は22日の閣議後記者会見で(中略)、「今の自白中心の捜査と捜査当局から一方的にリークされる記事しか書かないマスコミという中では、冤罪被害はこれからも出ると思う」と述べた。リークがあるとする具体的な根拠は示さなかった。

「根拠は示さなかった」だってさ。ぷぷっ[モバQ] 事件取材ができなければ認められない読売がしれ~っとこんなこと書くなんて、読者もなめられたもんですなあ。

私にとってはもう昔話なのでこのブログではほとんど触れてませんが、以前少しの間、日本なら誰でも名前を知ってる会社で新聞記者をやってたことがあります。

右も左もわからないド新人のときに本社の研修で言われたことが「警察・検察は公務員なので守秘義務がある。違反すれば懲戒免職になる。しかし、そこから情報を取れなければ記者は仕事にならない。だから、『こいつだったらしゃべっても大丈夫だ』と思える信頼関係を普段から作っておかなければならない」という“心構え”でした。

つまり、最初に習ったのは「公務員をそそのかして情報漏洩させなさい」ってことだったんですね。えらいところに来てしもたなあ…と焦ったことを今でも思い出します。

ほとんどの新聞社では、1年目の記者は警察担当です。事件・事故の取材は体力が必要だからという立派な理由もあるのですが、それとセットで必ず聞かされたのが、「警察・検察が取材先としては一番固い。だから、そこから情報を取れるようになったらどこでも通用する」というこれまた“心構え”でした。そりゃ、捜査情報を漏れさせようってんだから固いですわな。

1年生のときからそうやって洗脳して“夜回り”と呼ばれる警察幹部・検察幹部の自宅への訪問を強要しているマスコミが、「リークがあるとする具体的根拠は示さなかった」なんて書いて大丈夫なの?とだんだん心配になってきました。捜査当局がマスコミとの癒着構造を本気で断ち切るつもりになったら、いくらでも“具体的根拠”を挙げてくると思いますよ。トカゲのシッポ切りで。

いまのマスコミの横並び体質では、大事件・大事故ほど毎日必ず記事を配信しなければいけません。いつまで続けるかは他社次第。だんだん沈静化してきたころにどこかの社が“スクープ”を掲載するとまたふり出しです。抜かれたら抜き返せ。読者のニーズなんてまったく無視で、ひたすら自己満足のために突き進みます。それがマスコミ業界で言う“競争”ってやつなんです。

その“競争”に打ち勝つには、自分の足でいくら現場を回っても追いつきません。記者なんてしょせん、捜査権限のない一民間人です。地域共同体が機能していた数十年前ならまだしも、現在では隣近所との付き合いがない人が多く、それ以前に、マスコミに敵意を感じている人も少なくありません。なので、サラリーマン記者としては、どうしても当局に頼らざるを得ないんですね。

マスコミにも警察・検察にも良心的な人はいて、↑こんな馬鹿げたことはすぐにやめ、その分の労力を情報公開法の改正・充実・徹底と、情報公開に対する公権力の意識改革に向けるべきだとの意見もあります。なぜそうならないか?

現在のマスコミの経営陣クラスは新聞がメディアの王様だった世代。そしてテレビが急成長していった世代。情報を独占していかようにでも世間を動かせると信じて疑わない世代ですから、「情報公開」ってことの本質が理解できないんでしょうね。なので、二言目には「公権力が正しい情報を公開するとは限らない」なんてことを言います。あれれ?って感じ。公権力が正しい情報を公開しないから、リーク情報に頼るんでしょうか。

公権力が嘘をつく。そんなことは江戸時代の人でも知ってます。民主主義の世の中では公権力に嘘をつかせないように監視するのも主権者の役目。ただ、個々の力だけではどうしようもないので、代わりにマスコミに動いてもらい、対価を支払っているのです。このめんどくささが民主主義の売りなんだから、癒着なんてラクなほうに逃げられては困るんですよ。

我々の目や耳であるべきマスコミが最初にしなければならないのは、公権力に情報を迅速かつ適切かつ徹底的に公表させる仕組みづくりでしょう。そうした努力をマスコミ黎明期の明治時代から現在に至るまでほとんどしたことがないくせに、報道のあり方に疑問を呈した政治家を感情的にバッシングするなんて図々しいにもほどがある…と、いまでは一読者の私はついつい憤ってしまいます。

気を静めて読売の記事に戻りましょう。

警察庁を管理する立場である国家公安委員会の委員長が、捜査機関によるマスコミへのリークがあると言及するのは極めて異例

そりゃ異例でしょうよ。今までずっと癒着してたんだから。その異例さにさすがの私もびっくりですよ。癒着を断ち切る気になったのかな、って。

そう言えば。かつて警察庁と深く深く癒着していた全国紙の名物記者がいて、その記者が取ってくる警察庁幹部からのリーク情報は「○○情報」(○○は記者の名前)と呼ばれ、全国をかけめぐってたそうです。その記者が定年になったときは警察庁幹部がわざわざ宴を開いたって話もあるぐらい。その癒着っぷりは当時の警察情報にかなりの影響を与えていたはずで、それが世間に流通していたわけですね。想像すると真冬の夜がますます寒くなってきます。ちなみに、その名物記者は定年後、警察庁の世話でまさかの天下り団体へ。どことは申しませんが週3日程度の勤務で悠々自適だったんだって(今も?)。あ、あくまでウワサですよ、ウワサ。具体的根拠なんてありませんのことよ(ホホホ

中井委員長は会見で発言を問いただされると、「リークされたことばかり書くマスコミと言ったんだ」と繰り返した。「今もリークがあると思っているのか」との質問に対しては、途中で「ずっとそうだ」と遮り、「お互い気をつけてほしいものだと申し上げている」と声を荒らげた

「問いただした」んですか。けんか腰ですな、こりゃ。それに対して「繰り返し」「遮り」「声を荒らげた」。いやー、中井委員長のキャラづけ、ばっちりですね!世間は国家公安委員会に対してなんとなく怖いイメージを持ってますし、そうでなくても中井委員長は悪人顔。“正義の”マスコミを批判したうえに最後は「声を荒らげた」なんてことになると、もはや目もあわせたくないほどの恐ろしさでございます。

同じ会見の記事を配信していても毎日新聞はここまで書いていませんから、読売の“いってる”感じがどうしても目につきます。「今もリークがあると思っているのか」なんてどこのマスコミが質問したのか知りませんが、そんなことを恥ずかしげもなく聞いてしまう記者とそれを書いてしまう記者の洗脳のされっぷりのほうが怖いよ!目を覚ませ!!

読売は新政権発足時から連日、叩いて叩いて叩きまくってますが、それでも内閣支持率の世論調査結果は朝日など他社調査より高めに出ています。つまりそれって、そもそも記事が読者の支持を得てないってことじゃないの?と思いながら眺めているわけですが、この調子でいったいどこまで暴走していくつもりなんでしょうか。
nice!(2)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 2

コメント 6

KGB

記者時代の生々しい話、全身が身震いしました。地球寒冷化でしょうか(違

異常ですよねぇ。検察からのリーク情報をトップで報道した後に、菅谷さんの足利事件を報道するんですから。庶民の目としてみれば「あれっ?」って感じです。

ワタシのような製造業でこれだけ品質が問題視されたら、あっというまに信用失墜で倒産の危機です。メディアだって情報を仕入れて報道を作るという、製造業と似たような過程を踏むはずなんですが、そういった品質管理という感覚は持ち合わせていないんでしょうね。

金曜日が久々の有休だったので、ふと国会中継をみたんですが、何で予算委員会で予算とは関係ないことばかり議論してるのか不思議でした。普天間問題は外務委員会、年金は厚生委員会などがあったはずでは。政治とカネは本会議か別に委員会設置してやればいいのに。
なのに補正予算は25日に成立予定なんて、ふざけんじゃねーよ!って感じです。しかもNHKは途中で中継終わるし。メディアは予算はほったらかしだし。

NHKは無駄にたくさんチャネルを持ってんだから、全部の委員会と本会議を全公開するか、もしくはネット動画で公開しないと。そういう情報公開についてもっと言うべき事があるだろって感じです。

どうも昨年からの小沢問題によってもっともっとデカイ問題が浮かび上がってきた気がします。もしかしてそれが小沢の狙いなのか?そういや囲碁得意だったしなぁ。政権交代の威力を日々思い知るばかりです。
by KGB (2010-01-23 17:37) 

peter

バレーから時事ネタまで、rioさんの守備範囲の広さと文章のセンスに脱帽しながら、時々チェックさせていただいてます。
実はかな~り以前にバレーネタで一度書き込みさせていただきました。今回のマスコミネタにまたピーンときましたので、再度の書き込み失礼いたします。

このところのリーク報道はすさまじいものがありますね!!しかもネタを切らさないように、小出しにしてちょっとずつ出されてる印象。大したネタでもないのに…。そして、テレビなどでは、さも「今入りました!」的な感じにシリアスな表情(を装って)で報道。いまやアナウンサーにも演技力が求められる時代ですね…。「いかにアピールするか」しか目的がないような報道を目にするたびに、ちょっとくだらなくて愉快だと思う節もありますが、基本ゲンナリしてしまいます。

確かにrioさんが示されたように、意外と「あ、そう」的な雰囲気で物事を判断している人も多いのかもしれないですね。乗せられる人は割りと少ないのかも。とりあえず今出来る最大の抵抗は、「目にしない」「もしうっかり遭遇してもただ横目でチラッと冷たい目線を送る」ことと信じ、ほぼnoテレビno新聞で過ごしています。早くこの小芝居がばれているに気づいて、まともな報道をはじめてくれるいいのですが…。
by peter (2010-01-25 22:21) 

rio

>KGBさん、ほんとおっしゃる通り、新聞記者は自分たちが製造業と思ってないんですよね。

新聞社はまぎれもなく製造業なんですよ。工場で新聞を製造してますから。
制作工程の部署はもちろん、販売や広告といった部署の方々も“製造業”であることを実感していると思います。いっぱしの表現者気取りでふんぞりかえっているのは記者だけなので、往々にして編集の部署は他の部署から疎まれていたりします。

それだけでなく。この不況下でも信じがたいほどの高給・手当て・福利厚生と、会社の名刺1枚でその気になれば誰にでも会い行ける(と信じて疑わない)サラリーマン生活を送っている間に、「俺ってえらい!」ってな具合に勘違いする記者が出てくるんですよねー。

会社の名前で仕事をしているのに、すべて個人の力だと思ってしまう。その辺の傲慢さを読者に見透かされていることに気づいている人もいるはずなんですが、それが変化としては出てこないところが悲しいです。

それにしても、せっかくの有休に国会中継を見てしまうなんて、なんと業の深い人生を送られているのでしょうか。前世でよほどの悪政に苦しめられたのか、あるいは苦しめたのか(笑)

と言いつつ、私も時間があったらチラ見ぐらいは必ずやってしまいます。もう何年も前、得意絶頂の辻元清美が小泉純一郎に「ソーリ!ソーリ!」と何度も絶叫した場面もリアルタイムで見ていました。因果な性分です。
by rio (2010-01-26 00:25) 

rio

>peterさん、鋭いですね。おっしゃる通り、事件・事故が起こったときの“スクープ合戦”は小出し、小出しです。

新聞で言えば、とりあえず1行分のネタがあればいいんですね。それを見出しと冒頭(リード)に持ってきて、あとはこれまでの経緯を繰り返せばいっちょ上がりです。

それで「抜かれた!」となった他社は、“スクープ”の続きの1行分を拾ってくるか、“スクープ”が間違っていることを指摘できるネタを拾ってくるか、そんな感じで新たな“スクープ”が完成です。

読者のニーズや記事の質よりも「継続することに意義がある」世界ですから、ちぎっては投げ、ちぎっては投げることが求められるんですね。精神が激しく消耗します。

それもこれもすべて、新聞・テレビには真の競争がないからこそ起きてしまうことなんだと思ってます。同じマスコミでも雑誌は過酷な競争をしていますから、それが少々危うい(=ガセネタっぽい)記事であっても、まず読み物として楽しめます。

速報性がなく読み物としてもつまらない新聞が、このエコ時代に巨大な部数を維持する必然性がどこにあるのか。新聞とテレビはそれぞれ切り離され、真の競争に身を置いて、適正な規模まで縮小するべきだと思ってます。
by rio (2010-01-26 00:36) 

KGB

さんざん騒ぎまくった結果が秘書の規正法違反の虚偽記載(不記載?)のみ。小沢は何にもなしだし、容疑の中身も小沢の内輪で回ったカネの話のみ。これ、ホントにここまでする必要のあった話なの?って感じです。いったいマスメディアや検察はどう「説明責任(笑)」を果たすつもりなのでしょうね。

個人的には小沢さんの政策には賛成できないのも多々あるのですが、どう考えても西松以来の捜査は異常ですね。それに乗っかるメディア、自公、共産、旧社会系、御用学者などなど権力の移動が行われてこなかった弊害がいたる所でこびりついているのがよく分かりました。

そういえば、アソー君とかアベ君が今さら出てきてコメントを出してましたが、彼らはまず日本の憲法と法律の「きほんのき」から勉強しなおしてもらいましょう。コメントが朝まで生テレビに出ていた産経記者と同レベルでどーすんの!

この国には、まだまだ民主主義が根付いていないんだなぁと、痛感した今回の騒動(≠事件)でした。。。
by KGB (2010-02-06 00:37) 

rio

>KGBさん、マスコミは苦しい言い訳(あるいは強弁)に終始してますよね(^^;

小沢問題で民主が検察批判・リーク疑惑を口にしたときに、マスコミはこぞって民主バッシングに走りました。なのに、ふたを開けてみたら小沢不起訴。さすがに手の平を返して検察批判をするわけにもいかず、「検察のなかにも起訴積極派と慎重派がいて、現場は積極派、幹部は慎重派だった」と報じるのが精一杯。正直、バカだと思いました。

小沢の結果が出るまで冷静な報道に終始していれば、不起訴となった時点で「それはおかしいんじゃないか」と、小沢だけでなく公権力のグレーゾーン=最も本質的な部分に切り込めたはずなんです。

しかし、結果はこの体たらく。第4の権力であるマスコミ業界「にも」抜本的改革のメスが入らない限り、いつまで立ってもこのバカ騒ぎが繰り返されると思います。

そのマスコミは、司法判断が下ってもなお、自社の世論調査を根拠に「国民は納得していない」「説明責任を果たしていない」の繰り返し。で、そこに野党が乗っかって国会が政治とカネ一色になると、今度は「重要法案が山積みなのに与党のせいで審議が進まない」と非難。それを一般的には“マッチ・ポンプ”って言うんじゃないの?と思ってしまいました。

今回の騒動で、マスコミはこぞって「検察のリークはなかった」と強弁しています。ではなぜ、拘留されていた石川議員の供述内容の詳細が流出したのか。この問いについての“説明責任”を果たしたマスコミはありません。

再販制度やら免許の固定化やらでガッチリ保護されているからこういうことになるわけで。淀んだ水はいつかは腐ります。マスコミ関連法案の改正が急務だと思います。
by rio (2010-02-08 04:27) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。