世界最終女子・ドミニカ戦:仕切り直しの1勝/佐藤vsカスティージョ [バレーボール]
とんでもない展開で勝ちを拾った日本、休息日をはさんでのドミニカ戦はストレート勝ちでなによりです。第3セットでジュースにもつれましたが、ここでもう1セットにしなかったところがまず収穫ですね。
日本が本来のサーブに戻ったことで終始ゲームを支配し、しつこいレシーブやリバウンドも随所に見られ、ちょっとロンドン組っぽかったですよね。拾ってから切り返すときの得点力にはまだ課題があるものの、仕切り直しの一戦としては上々だったかなと。
そしてここから新たな山場に向かう全日本のスタメン・ローテはこちら。
宮下 山口 木村
石井 荒木 迫田→長岡 L佐藤
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Bマルティネス マンブル Jマルティネス(MB)
バルガス(MB) マルテ リベラ Lカスティージョ
ドミニカはべストメンバーではないですし調子もよくないし全敗してるしで、ふつうにやれば日本が負ける要素はない相手。なので勝ち方が重要だったわけですが、今日の宮下は落ちついて組み立ててていて、ラリー中でもしっかりジャンプして高い位置でトスをさばいてました。
レフト寄りの位置でジャンプして、白帯の上でボールを取ってライトへ5メートルぐらいの平行バックトス、これは宮下ならではですね。で、近い将来、このトスにダブルクイックのおとりが絡み、長岡がレフト側に向かって走り出す日が来ればいいのに(笑)。みゆスペシャル
宮下は試合後半、お互いが一通り手の内を見せて駆け引きモードに入ったときに長岡に頼りがち、もしくは確実とは言えないツーアタックをしがち、という弱点が見えてきているので、そこが次の課題ですね。それ以外はブロック、サーブも含めてよかったと思うので、この調子を残り2戦でもぜひキープしてほしいと期待してます。
今日は佐藤もよかったですね。目の下にあんなにくまモンをつくって大丈夫かいなと思いましたが、いぶし銀の活躍でなにより。ラリー中に走り込んできてレシーブして宮下に完璧に返球する場面がたびたびあってさすが!と思いましたが、なによりも印象に残ったのは第1セット18-16の場面。
今大会ここまででもっとも地味な注目ポイントかもしれませんが(笑)、山口の移動攻撃が拾われてラリーになり、3rdボールを佐藤が返球したプレーです。日本は連続失点で追い上げられいたやばい状況でした。木村のスパイクレシーブが短くて低く、コート中央に宮下が飛び込んで真上に上げたんですね。佐藤は自陣レフト側、宮下の真横の位置にいて、高く上がったボールを返球する役割になったのです。
ボールが高くあがったためにドミニカはすでに定位置についています。これ、ふつうにアンダーで返すとダイレクトで打たれるパターンですよね。それを避けるためにたかーく返す、ってのを昭和の全日本はよくやってました。モトコさんとか、吉原さんとか。その間に自陣を立て直せますが、相手を崩す効果は薄い。一方、打たせたくない選手やセッターに向けてオーバーでネットぎりぎりの強いボールを返すパターンもありますね。ただ、佐藤はこのときアタックラインの1メートルほど後ろにいたのでこの技は使いづらい。
で、佐藤はたぶん、高く上がったボールを見つつ周辺視野できちんと相手コートも見てたんでしょうね。ドミニカは前衛にセッター・マルテがいて、攻撃はレフト・リベラとセンター・Jマルの2枚。バックライトでマンブル、バックセンターでBマルに代わったペーニャ、バックレフトにリベロのカスティージョ。
このとき、ボールの落下点の関係で佐藤の身体はカスティージョに正対していました。このままアンダーで普通に返球するとカスティージョの真正面にいってしまい、ただのチャンスボールになってしまいます。カスティージョを動かして、リベロの動線が各アタッカーの動線をじゃまするような返し方をすれば攻撃力を弱められる可能性があるわけですね。
ということで、佐藤はレシーブのぎりぎりまでカスティージョのほうを向きつつ、アンダーでボールに触った瞬間に腕を振り、セッター・マルテの後ろに返球したのです。(図参照)
カスティージョはじりじりと中に寄ってきてはいましたが、ライトに返すとは思わなかったんでしょうね。佐藤がレシーブをした瞬間にあわててライトへ走り込んできています。ただ、走り込んでアタックライン外側で軽く踏み切ってのバックパスでセッターに返球したところがさすが。これがAパスになるんだからすごい。抜群の運動神経ですね。で、そのままコート外に走り抜けて、マンブルやJマルのライト攻撃の動線を確保したのです。佐藤の作戦、不発!残念!
Aパスをもらったマルテはすかさずジャンプトス。その手からボールが離れる前にもう、アタッカー4人はシンクロして助走を開始しています。すごいチームプレーです。しかもマルテの選択はJマルの移動攻撃。ここで使うか!というクイックを、ところがどっこい、ブロックの石井がよく見てたんですね。石井はバックライトやバックセンターの攻撃に跳びそうになるのをこらえ、よく見てJマルの移動攻撃にドンピシャで跳びました。
Jマルもそれが見えたんでしょう。石井からのワンタッチを狙ってストレートに切ったつもりが、ブロックに当たらずにアウト。日本が19-16と再び3点差としてピンチを逃れたのでした。
佐藤の作戦は結果的には不発でしたが、それはカスティージョがそれだけ上手なリベロだから。名人対名人みたいなもので、佐藤の狙いもそれを防いだカスティージョもすばらしい。そこから全員攻撃を仕掛けてきたドミニカも、それをよく見ていた日本の守備もすばらしい。さすが代表試合!という感じで、何度もリプレイしてガン見してしまいましたですよ。
この1プレーだけを見ても、日本は、韓国戦やタイ戦でできていなかったことが実はできるんだということがわかりました。実力が発揮できないのと実力がないのとではどえらい違いですから。1日で修正できてなによりです。
そしてあと2戦。フルセットがある日本は勝ち点で半歩うしろの微妙な位置。しかも韓国に完敗したオランダがイタリアには完勝、韓国はイタリアに負けていて、上位が星をつぶしあう状況のなか、日本は上位陣との戦いが残っているという。韓国vsタイの結果も絡んできますからどう転ぶかまったくわからなくなってきましたね。どきどきです
カスティージョ、まだ23歳なんですね!ちょっと驚き。
解説の人が、「カスティージョは、一回目か二回目のボールに必ずさわってる」と言っていましたが、レシーブは広範囲をカバーして、上がったボールは丁寧にオーバーで二段トス上げてますね。
ドミニカは、ブロックが高くて守備範囲が限定できるだろうし、スパイク力があるから丁寧に高くトスを上げればスパイクを決めきれるんですよね。
世界バレー、WCの時は、「ドミニカ強くなったな!」という感じでしたが、今大会はどうしちゃったんでしょうね。
もしかして一位通過?と思っていましたが。
今日、タイとペルーが負ければ、日本は予選通過が決まるんですね。
地獄から天国ですね。
でもこれから本番まで、何をどうやってつめていくんでしょう・・・。
本番も、「苦しくなったらロンドンメンバーを出す」という安易なことはやめてほしいですね。
by デイちゃん (2016-05-21 10:35)
懐かし乃、ボニッタ!
若しや・・・1セットも奪取シ得ぬかと想ってた『対伊』戦ダッタから、「1対3」の戦績は良い意味で『予想外』!
ガ。もぅ少し「日本勢」ラシイ緻密さが有ればモット縺れテタかも~ン。
啼いても笑っても、蘭國戦ヲ残すノミ・・・有終の美ヲ!
by M.H (2016-05-21 22:56)
>デイちゃんさん、ドミニカの内容は悪くなかったと思いますが、ここぞというときのデラクルス、というバレーをしてきたツケなのか、ラリーが弱かったですね。
カスティージョは記事に書いたワンプレーだけを見てもすごいリベロだと思いますが、彼女がいくらつないでも大砲がいないので決まらない、というジレンマ。良くも悪くもデラクルスのチームだったところから脱却できるかどうか、ですね。
by rio (2016-05-23 15:19)
>M.Hさん、イタリア戦は2-3ですね(笑) ボニッタ監督はロ・ビアンコの乱に懲りたのか、ロンドンをすっ飛ばして17歳のセッターを擁立ですか。それでも五輪出場を確保するところが名将と言われるゆえんですね。
by rio (2016-05-23 15:22)