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世界最終女子・タイ戦:いくらなんでも後味わるい。 [バレーボール]

遅く帰宅して録画でタイ戦を観戦しての感想。なんじゃこりゃ?後味わるい……。作戦面でも技術面でも日本は負けてました。どうやら真鍋監督の〝手の内”なんてものも存在しないみたい。日本完全有利の大会運営だかこそフルセットまでいったものの、第5セットは4-10で絶対絶命。まあ実力差だから仕方ないよね……と思ったところから、まさかのタイにレッドカード2枚って。

正しい発音がよくわからない名前のラッチャタギャングライ監督の試合後のコメント

私の人生のなかで、また20年のコーチ経験のなかで、こんな事態は見たことがない。タッチパネルに選手交代が表示されないことについて尋ね、確認を求めたところ、レッドカードを出された。さらに、またタッチパネルに選手交代が表示されなかったので尋ねたところ、2枚目のレッドカードを出されたのだ。タイに対して不公平な判断だ」

「タイはスポーツマンシップに則ってプレーしている。ジャッジがおかしかった。試合は終了してしまい、タイはこの結果を受け入れなければならない」

「この
(=タッチパネルの)システムは再検討されるべきだ。タイは選手交代エリアに選手が入っている時でさえ、交代が認められなかった」


はい、私も審判がおかしかったと思います。システムはあくまでも審判の補助ツールであって、審判がシステムに従うものではないですよね。そのことを理解していない審判団、および大会運営の問題です。大会初日からタッチパネルに不具合が起きていることはわかってたんだから、使用を中止して副審に交代を告げる方式に戻せばよかったんですよ。もしくは、タッチパネルに表示されていなくても副審の判断で選手交代を認めればよかったと思います。

この試合、TBSの中継ではラッチャタギャングライ監督がぶーたれて遅延行為したという印象を持ってしまうかもしれません。でも、彼はルールに則って運用していただけです。

(追記)
5月19日付の朝日新聞によると、

「選手交代をしようと、タブレット端末のボタンを2度押したが、了承されなかった」。らちが明かず、タイムアウトを要求。それが遅延行為とされた。「なぜそうなるのか理解できない」。監督は大会初日から同様の問題を審判に訴えていた、とも話した。

 2枚目は12―13の場面だ。日本の後衛のアタックがラインを踏んだように見えたという。国際連盟の規定では、ラリー終了5秒以内ならビデオ判定を要求できる。「私はルールを知っていたし、スポーツマンシップにのっとって行動した」。要求は実らず、訴えは遅延行為と見なされた。

だそうです。記事はこちら。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160519-00000006-asahi-spo


例えば、やたらと長引いた第2セット20-19のプレー中のチャレンジ、これは山口のタッチネットを審判が見逃したことについてラッチャタギャングライ監督がチャレンジしたわけですが、主審・副審とも大混乱。

主審がノーカウントをコールし、ラッチャタギャングライ監督もそれを受け入れました。ところが、真鍋監督が「ちゃれんじ!ぷりーず!のーのーのーのー!ちゃれんじ!ぷりーず!」とよくわからないひらがなを連呼。それでさらに長引いて、結果的にチャレンジが行われ、スローで見てみたら山口がブロックジャンプで降りてきたときにネットに触ってるという。

これ、遅延行為をしたのは真鍋監督ですよね。形式的には、主審はラッチャタギャングライ監督のチャレンジを却下してノーカウントをコールしたわけです。その時点で何も不利益をこうむっていない日本側としては、そのジャッジに抗議する権利などありません。なのに、真鍋監督は猛抗議して最終的に判定を覆させたんですよね。たとえ運営ルール上では真鍋監督が正しかったとしても、この行為はレッドカードでしょう。そもそも、ノーカウントでも日本に不利益はないわけですから抗議する理由がない。

(追記)
真鍋監督は第4セットの14-10の場面、プレー中にボールがアンテナにあたったことへのチャレンジをしてますよね。これもわけわからない形となり、画面には主審のチャレンジと表示され、映されたリプレイはアンテナどころかボールが普通にネットを越えている映像。で、主審のチャレンジ失敗なのかと思いきや真鍋監督のチャレンジ失敗でタイに得点が入りました。ラッチャタギャングライ監督がの2回目が遅延行為なら、この真鍋監督のチャレンジも遅延行為でしょう。

一方、第5セットで選手交代が認められず、システムの不具合について質問(〝抗議”もしたのかもしれませんが画面には映ってませんでした)したラッチャタギャングライ監督にはレッドカード2枚。これは明らかに不公平ですよ。

真鍋監督もラッチャタギャングライ監督も英語が得意ではないようで、副審が彼らの〝質問”を理解できていなかった言葉の壁の問題もあると思います。その結果、確認作業に余計な時間がかかったんだろうなと。また、第5セットについては、タイのベンチも選手も一緒になって騒いでしまった=ラッチャタギャングライ監督がコントロールできてなかった不手際もあると思います。

とは言え、真鍋監督は正当性がない抗議でおとがめなしラッチャタギャングライ監督は正当性がある質問でレッドカード2枚。どこぞの球技のなんとかの笛にも負けない日本びいきに世界中がドン引きしてることでしょう。

そんなわけで、試合後のインタビューで真鍋監督が涙目になってても、なに泣いとんの?と冷ややかな視線を送ってしまったのでした。

そんなぶさいくな試合のスタメン・ローテを一応。

  石井           長岡     荒木

  島村           宮下     古賀         L佐藤
-----------------------------------------------------------------------------------
プルームジット(MB)  アチャラポーン    マイカ

ヌットサラ         オヌマー    タットダオ(MB)  Lピヌヤット


日本は第1セット、このスタメンでタイにほぼリードされ続け、20-25で落としたんですね。その理由は、佐藤を軸としたサーブレシーブ・システムが徹底できてないこと、ラリー中の宮下のトスがシーガルズ仕様になってしまっていること、ラリー中に佐藤が突っ込み過ぎてまともなつなぎができていないこと、だったと思います。

なので、代えるならセッターとリベロを代えないといけなかったはずですが、チームとしてそれができるレベルにはなっていない。ここが真鍋監督の大きな〝油断”でしょうね。

で、第2セット、古賀→木村、長岡→迫田、島村→山口でスタートし、荒木も含めて〝銅メダルメンバー”の布陣を敷きました。でもそうじゃないよね、っていう。宮下がシーガルズ仕様に戻ってしまう=全日本仕様に仕上げられていないところが最大の原因なわけで。そこを徹底しないまま世界最終に来てしまったこの点も真鍋監督の〝油断”ですね。

さらに、真鍋監督の山口への過剰な期待も見ていてつらかったです。私はもともと山口がずっと代表入りしていることに否定的なのですが、この試合でもう完全に、山口で1枠使うのはやめたほうがいいと確信しましたですよ。

山口は4セット出場して、アタックは打数16、決定5、決定率31%です。センターとしてありえない低さですね。ブロックは得点0、手に当たったのがわずか5回。1セットで1回ぐらいしか手に当たらないわけです。この2つの結果に共通するのは、ジャンプ力の衰えでしょう。もともとジャンプ力がない選手ですが、さらに低くなってました。

また、4年前は少しぐらい無理な姿勢で打っても着地してすぐ次の行動に移れていましたが、この試合では何度もしりもちをつく場面がありました。ショートサーブで狙われてとらされた場面では、足元がよろよろしているところがカメラでばっちり抜かれていて情けない……。

そんなふうに劣化しているところがある一方、サーブは相変わらずヘタで、タイのタットダオや韓国のヒョジンみたいにハイセットを打てるわけでもない。なのに、宮下の精神安定剤として起用されてしまう本末転倒ぶりにげんなりです。そもそも宮下のシーガルズ仕様のトスが足を引っ張ってるのに、山口を入れると逆効果ですよね。

タイも韓国も、サーブ強化、ブロックシステムの徹底、センターのセミもしくはオープンの攻撃を完成させてきました。これはおそらく、4年前に日本の〝速さ”、リードブロック、センター陣のライト攻撃など自分たちにないスタイルのバレーに負けた反省からたどりついた答えなんだと思うのですね。

一方、韓国に負け、タイにも1セットを取られて追い込まれた真鍋監督がとった選択はコート内を銅メダルメンバーにすることだった。これは痛い。痛すぎる采配です。

大会がここまで進んでから言っても仕方ないことですが、真鍋監督は宮下のトスをなぜ世界最終までに修正できなかったんでしょう。宮下がシーガルズ信者で真鍋監督やコーチ陣の言うことをまともに聞いていなかった疑惑は濃厚ですが(←そういう発言をしているインタビューもあったような)、まさかそれに遠慮したわけじゃないよね?っていう。

全日本の試合で実況・解説・ゲストは本質的な批判をしないのがお約束、というしょうもない了解があるなか、解説席の川合・竹下、ゲスト席の吉原の3人が、遠回しにではあるものの宮下のトスについて指摘し続けた(←「した」じゃなく「し続けた」ところがポイント)こと、そして実況の新タアナも果敢にその話題を振り続けたことも記録されるべきですね。

実は、書こうと思っていたことがほかにもいろいろあったんですよ。石井のブロックの判断が遅すぎたせいで、素早く判断した荒木の横移動をじゃましてしまった件とか、日本のオーバーハンドはタイと比べてかなりぎこちなくボールを突き飛ばしているように見えてしまう件とか、韓国に負けた真鍋監督が「韓国が選手間を狙ったサーブを打ってくるなんてこれまで見たことがなかった」とか油断しまくりな発言をしつつ、もともとサーブがいいタイ相手にも同じミスを繰り返した件とか。

こうしたことを全部ひっくるめて、韓国戦とタイ戦から見えてくるのは真鍋監督の〝油断”ですね。真鍋監督、日本バレー業界で裸の王様になってなければいいのですが。
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世界最終女子・韓国戦:また負けた(笑) 作戦負けなので仕方ない。 [バレーボール]

世界最終のいきなりの山場、韓国戦は1-3の完敗。残念でしたが、試合は面白かったですねー。私の大好物な日中戦に勝るとも劣らない面白さ。で、4年前に続いてまた負けるという、この真鍋監督の老獪な感じ(笑)。もちろん100%勝つ気で全力でやって負けたわけですが、だからといって手の内をさらけ出したりはせず、というところが興味深いですな。

結果、宮下がかなり責任を感じてそうな展開になってしまいましたが、これもいい経験でしょう。直接的には、宮下のトスが試合が進むほど乱れていったことが敗因でしょうが、その背景には、日本が徹底的に研究されてやりたいことをまったくさせてもらえなかった焦りがあったんだろうな。要するに作戦負けですね。真鍋監督はきっと宮下よりも責任を感じているはずです。

そんな真鍋監督が鼻をへし折られた試合のスタメン・ローテはこちら。

島村     木村      長岡

宮下     古賀      荒木    L佐藤
---------------------------------------------------
ヒジン   スジ(MB)   ヨンギョン

ジョンア  ヒョジン(MB)  ヒョヒ  Lヘラン


それにしても、今回の韓国は強いですね。このまま残り全勝で1~2位通過もあり得るんじゃないかと感じました。

サーブ強化は日本の上をいってますね。ぎりぎりを狙える制球の良さだけでなく、ネットすれすれに越えてから落ちてくるサーブや、高い打点から直線的に刺さってくるサーブなど相当練習したんだろうなと思う技術、さらに、しっかり体重を乗せて打っているので中途半端に触るとはじかれてしまうという。

その強力サーブで、前衛レフトを狙うローテ、日本のセンター陣の動線をじゃまするポイントを狙うローテ、などしっかりした組み立ててで日本の攻撃を分断していました。その結果、日本はマークが薄い長岡に集めざるを得ず、それが機能している間はよかったのですが、セットを追うごとにじわじわと包囲網が敷かれていき……という展開。

韓国は攻撃面でも独創的なパターンを作り上げてきましたね。ヨンギョンが中に切り込んできて打つ攻撃(←これは前からやってた)にセンター陣がセミを打つ攻撃を組み合わせ、ヨンギョンがブロッカーを引きつけてセンターが決めるという。こんな遅い攻撃、よく見て跳べば止まるんじゃね?と思ってしまうのですが、ヨンギョンとシンクロしてるせいでマークしきれない。

そのヨンギョンが後衛に下がると、今度はライトのヒジンが移動攻撃をやってくる。それもスジとのダブルブロードや、ヒョジンとのX攻撃などバリエーションが豊富。これまた遅いブロードなのに、そっちを守るとヨンギョンがバックセンターから打ってくるので守り切れない。

などなどのパターンを、韓国が主導権を握って先手先手で仕掛けてくるので大変です。なんとか拾っても返すのが精いっぱい。全然ブレイクできない焦りからか、宮下は態勢十分のときでも乱調につぐ乱調でアタッカー困惑……という。

さらに、韓国はブロックアウトの技術やネット際の攻防に関しても、日本をしのぐ水準に達していました。日本もこのあたりのプレーが上手な選手がそろってると思いますが、それでもブロックを利用されたりネット上で押し負けたり、分が悪い場面が目立ちましたね。

韓国は結局、ヨンギョンを軸にまわってることに変わりはないのですが、軸の通し方を変えたんでしょうね。何でもかんでもヨンギョンだった4年前と比べ、この試合では彼女が守備を引きつけてオープンスペースを作るサポート役をこなしてました。また、かつては自分のミスにも味方のミスにもキレてチームのムードが悪くなって自滅、というパターンが多かったと思いますが、今日の試合ではキレるどころか、若手を思いやる場面もたびたび。成長したんだなあと(笑)

日本は2セットを落としてから両サイドを鍋谷石井に入れ替え、目先を変えて第3セットを奪い返しました……が、第4セット、韓国はローテを2つ戻して、ヨンギョンが前衛レフトから始まるパターンに変えてきました。こういう作戦も4年前の韓国はあまりしてなかった印象がありますが、イ・ジョンチョル監督はその点も改革したんですね。

一方の日本は(というか宮下は)、第4セットはもう最初から足が止まっていて、序盤から凡ミスを繰り返して走られてしまいました。迫田を途中で投入して打開をはかったものの流れを引き戻せず。本当ならリードしている場面で迫田を投入して逃げ切りたかったところでしょうが、引っ張り出されるような形になって負けてしまい無念です。

とは言え、日本はまだ暫定2位。焦ることなく進んでほしいと思います。まずは明日のタイ戦ですね。またサーブが大変なんだろなと想像しますが、宮下が落ち着いてトスを上げることができれば負ける要素はないはず。期待してます。
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世界最終女子・カザフスタン戦:ペースをつかんで連勝! [バレーボール]

世界最終第2戦の相手はカザフスタン。アジア枠だけど体格はロシアという相手ですが、第3セットはメンバーを大きく入れ替えつつのストレート勝ち。なによりです。

端的に言って、日本とカザフでは基本技術に大きな差がありましたね。カザフはブロックシステムが未熟で、レシーブとの連携も取れてない。攻撃面でも、どこにトスが上がるかばればれで、コンビの精度も甘い。正直、ちょっと退屈な相手でした(笑)

それもあって日本が終始落ち着いて試合を運んだスタメン・ローテはこちら。

木村     長岡       荒木

島村     宮下       古賀     L佐藤
-------------------------------------------------
ジダノワ アニコノワ(MB)  ベレスネワ

タトコ  アナルバイエワ(MB) アキロワ(S) Lフェンドリコワ

カザフは選手をとっかえひっかえしたりローテを回したり、なんとか打開策を見つけようとあれこれしてましたね。気持ちはわかりますが、それがかえって選手を混乱させ、位置取りがばらばらになっていたようにも見えました。コンビミス、多かったですねー。サーブ順のミスまでやってしまって、このレベルでは五輪出場は難しいでしょう。

カザフがちょっとつらいなと思ったのは第1セット24-14と日本セットポイントを握られた場面。ここで、アニコノワのセッター前クイックをおとりでベレスネワの移動攻撃、というダブルクイックを仕掛けてきたんですね。え?と思われるかもしれませんが、2人がセッターの後方に位置していて、同時に助走を開始しているので、たぶんダブルクイック。

ところがどすこい、ベレスネワが異様に足が遅いのか、アキロワのトスの軌道が高すぎるのか、アニコノワとまったくシンクロしないという。しかも片足踏切で打つのが精いっぱい。一応、ブロックは古賀1枚になってたのですが、余裕でどシャットされてました。大差ついてるし何か仕掛けなければ精神だったんだと思いますが、いきなりそんな応用編で……って。

一方、日本は試合を通じて少しずつ修正・改善が進められていてなによりです。第1セット立ち上がりで、古賀がいきなりどシャット。ブロックの間が空いてるのにわざわざストレート側にぶつけてるんだからありゃりゃ?と思いましたが、この辺も試合を通じて修正されました。

宮下はラリーになると焦ってしまうのかトスが低くなったり短くなったり割れたりしがち。第2セット6-3のときの長い長いラリーを落としたのは、途中で荒木に打たせたクイックのトスが低くて決めきれなかったからですね。ネットにかけたりアウトにしなかった荒木はさすがですが、セットプレーで荒木が打っているようなトスが上がっていれば、その時点でラリーを取れたと思います。

そこで疑問。なんで焦るんだろう?というのも、宮下の試合運びはいいと思うんですよ。トスを分散させてるし、各選手の使いどころもはまってる。相手コート内にオープンスペースをきちんと作れていることが何よりの証拠だと思います。しかも、高い位置でさばけるのでアタッカーの負担も少ない。なので、焦って低いトス、短いトスを上げる必要なんてまったくないと思います。

むしろ、上げる場所を決めるところまでが自分の仕事ぐらいに考えて、あとはアタッカーにまかせるつもりで丁寧に上げればよいのでは。今のチームなら、ラリー中にハイセットになってたとえブロックが3枚ついたとしても、個人技でリバウンドとったりブロックアウトとったり、何かしら流れを逃さない工夫をする選手がそろってますよね。

その工夫という点で、今日は長岡のブロックが印象的でした。第2セットの18-13の場面、ラリーが続く中での相手のレフト攻撃、長岡はしっかりブロックの基準を作って跳び、手の形を完成させられるタイミングでさっと手を下げたんですね。ワンタッチ狙いを防ぐためです。その後ろにはきちんとレシーバーが入っていて日本のチャンスボールに。

このプレー、長岡自身の判断なのかコート内から指示があったのか画面ではわかりませんが、長岡の手を下げるタイミングが絶妙。しかも、それをきちんとチャンスボールにして攻撃につなげているところから、ブロックとレシーブの連携がしっかりとれていることもうかがえます。これから対戦する韓国やタイには、こうした駆け引きがさらに重要になるでしょうね。

さて、この2戦で全員がコートに立ち、それぞれに見せ場があったことで選手の起用法も面白くなってきましたね。古賀で行くのか、石井で行くのか。スパイクレシーブとサーブレシーブで、佐藤と丸山を入れ替えるのか。対韓国はやはり迫田なのか。センター陣、おそらく安全策をとって山口を残したんだと思いますが、大竹でよかったんじゃないの?と思いつつ、その辺りも含めて注目です!


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世界最終女子・ペルー戦:ピークからかなり手前でもこの強さ [バレーボール]

始まりました世界最終!日本が優遇されまくっているこの大会で「切符を取って当たり前」のプレッシャーはなかなかのものだと思いますが、女子は実力で五輪出場を決められるレベルなので問題ないですね。初戦のペルー戦も、立ち上がりこそ探り探りでしたが、第2、第3セットは勝ちパターンを見出しての完勝。なによりです(^^

いい意味でチームの状態がまだピークに達していないところ、それでも点差をつけ、サブメンバーも起用しつつ、手の内はさらけ出さずにて勝ったところがいい感じだなと思います。ピークはあくまでも五輪本番。この調子でうまくピーキングを続けていってほしいですね。

そんな伸び盛りのチームのスタメン・ローテはこちら。

 木村   長岡        荒木

 島村   宮下        古賀     L佐藤
----------------------------------------------------------------------
ルエダ ウリベ(MB)      フリアス 

レイバ イジェスカス(MB) ムニョス(S) Lパラシオス


なんと言っても、笹の葉寿司のようなウリベのテーピング!ではなくて、荒木の復活ですな。安定感がハンパない。ブロックの位置とタイミングがさらに正確になっていて、相手の打点の高い強打がそれほどでもないように見えてしまうほどです。

攻撃面でも期待通り、宮下との高い位置でのコンビがいいですね。竹下や中道とのときは高さの限界があって荒木が合わせざるを得ず、セッターの前後でのクイックはかなり窮屈そうでした。実際、なかなか決まらず移動攻撃を多用→読まれてつかまるパターンも多かったですよね。

宮下は白帯の上でセットできるので、荒木の広角打法が存分に活かされていました。セッターのすぐ前で打ついわゆるAクイックがあんなにきれいに決まるなんて、全日本では久々だなあと。決してさぼらず、毎回、打てるタイミングでおとりに入ってくる真面目さも健在。頼もしいです。

荒木・木村の2人は、チームプレーがさらに洗練されていて無駄がなかったところも印象的。なので、2人がコートにいると若手がドタバタしてても目立たないですね。2人がドタバタを吸収する余裕がある間に、若手がよく観察して学んで動き方を身に着けていけば、また1つステップアップできそうです。

その荒木と対角を組んでいる島村、移動攻撃がとても印象的でした。本来の意味での〝ブロード”攻撃=2歩助走で空中で流れながら打つ攻撃と、ライト側アンテナ付近まで長い距離を走って打つ〝ランニング”攻撃を難なく使い分けていました。

各国代表レベルでも、この2種類をうまく使い分けられない選手は少なからずいますよね。しかも〝難なく”というレベルになると珍しいと思います。その点、島村は動き出しの時点ではどっちで打ってくるのかわからない。なので、ブロッカーが2歩だと思って構えていてそうでなかった時には、アンテナ付近までの〝競走”に出遅れてしまうわけですね。逆に、長い移動だと思ってアンテナよりに構えていると2歩で跳ばれて空いているクロスに打たれるという。しかも島村は空中で横に流れているので、ブロッカーは空中での個人技も要求されます。守備側にとってはかなり大変な攻撃だろうなと(笑)

この両センターの攻撃が有効に機能していて、そこからの長岡、がまたよかったですね。相手側コートがよく見えていて硬軟の織り交ぜが上手になっていたと思います。ブロックを利用した打ち方もしっかりできていたので、その点も安心しました。荒木と前衛で2ローテ一緒なので、それでラクさせてもらってるところもあるかもしれません。今後、長岡しかない!という場面でもしぶとさを見せられるか、期待してます。

その長岡からの流れで古賀、守備はよかったですが、攻撃ではぱっとしませんでしたね。。。ちょっと出鼻をくじかれた感がありました。

第1セットの11-7の場面、宮下のトスが短く、レフト古賀が中に走り込んで打ってシャットアウトされました。このトスは作戦なのか?ミスなのか?と思っていたら、宮下は次のプレーでまた古賀に上げたんですね。今度はアンテナ付近まで伸ばしたトスだったのですが、またしてもシャットアウト(画面では見づらかったのですがちょっと割れてたのかな?)

この打ち直させるパターンが宮下のクセで、その結果、1本目はミスだったんだなとわかってしまうんですね。この試合でも何度もこのクセが出てました。第3セットでツーアタックを打ち直したときには、さすがにおいおいと……思いましたですよ。いずれ各国チームにばれるでしょうから、早めになんとかしたほうがいいと思います。

それはさておき、2連続でシャットされた古賀、その間にペルーがじりじり追い上げてきて13-12の場面、ラリーが続いたあと、チャンスボールがレフト古賀に。ブロックは2枚ついてましたが、態勢十分で打てる場面。古賀はクロスにはじき出すように強打した……のですが、ライト側を守るはずの長岡がなぜかネット際に詰めていて反応できず。結果的に、古賀は3連続でシャットアウトされてしまったことになったんですね。その後の攻撃について、なぜか今回も解説席に座っている株バクチ芸人川合が「置きにいってる」と指摘していましたが、そりゃ序盤でビシバシ止められて追いつかれて同点にしてしまったらそうなりますわな、という。

↑ここですね。五輪で連続メダルのための改善ポイントの1つ。この場面をスローで見ると、ボールが宮下に返ってきた時点でライト側で開いていた長岡が、古賀に向けてトスが出された後も、なんとな~くな感じでふわ~っとネット際まで移動していることがわかります。

つまり、その行動には意味がない=惰性で動いてしまったんだろうなと。前衛レフトがクロスに打つ際に、前衛ライトがネット際のアンテナ付近にいる必要性ってまったくないですよね。実際、ブロックをはじいた古賀の打球は長岡が開いていたあたり=ネット際に詰めてしまった長岡の真後ろに飛んできています。

荒木や木村は↑こういう動きをしない。もっと言えば、ロンドン・銅メダル組は意味のない惰性的な動きを徹底的になくしたことで、あの驚異的な粘り強さ、フルセットの勝率の高さを獲得したのだと思います。この辺りは、技術や体力や身体能力ではなく、意識の問題。なので、自覚して気をつければすぐに直せるはずですね。

ともあれ、完勝だったけど勝ち過ぎず、それなりに課題も見えて、よい滑り出しだったのではないかと。次のカザフスタンでは、序盤からサーブでがんがん崩してほしいです。楽しみです(^^


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「ファースト・テンポ」には1stとfastがある?というお話。 [バレーボール]

※この記事では「ファースト・テンポ」と「1stテンポ」と「fastテンポ」を使い分けています。

先日開催されたバレー学会で、中田姐さんや豆柴朝長の発言が大きく取り上げられましたが、実は私、それよりもずっと気になっていたことが2つあるのです。前回、それを書く前に疲れてやめてしまったのでした(^^;

こっそりやっているツイッターでは少しつぶやいたのですが、1つは、小学生レベルですでに、「速いトスか打ちやすいトスか」という二項対立が起きているらしいということ。もう1つは、バレー学会で示される研究のほとんどが、試合で発生したプレー数の集計結果から推論する手法(帰納的推論)を使っていることでした。

前者については、発表者の方は、パス力のある選手をセッターにし、アタッカーが余裕をもって打てるハイセットを上げることが基本だというお考えでした。一方、パス力のない選手がセッターとなり、すべて〝置きに行く”トスを上げさせているチームもある。この場合、攻撃はすべてクイックになる。そうしたバレーでも全国大会で優勝している。との報告がありました。

実はこれ、二項対立にならないですよね。速いトスは計測可能な現象、打ちやすいトスはアタッカーの主観、なので。「広い家と住みやすい家、どっちがいい?」って聞いてるようなものです。前提部分を間違うと、そこから派生する議論がすべておかしくなってしまいます。

余裕を持って打てるハイセットでも、すべてクイック(ファースト・テンポ)になるようなトスでも、アタッカーが打ちやすければそれでいい、ということなんだと思います。実際にどちらの方法論でも優勝実績があるので、この場合の〝正解”は「小学生レベルでは、アタッカーが打ちやすいトスを上げるべし」なんだろうなと。上位カテゴリに行った時には、どちらか学んでいないほうの習得に力を注げばいいわけです。

後者の研究発表については、〝帰納的推論”を用いる場合の弱点=「調べた範囲では○○らしい」としか言えない、という点への配慮が弱い気がしたのです。例えば、2015年のすべての国際試合を集計すれば、「2015年の国際試合からは○○だと言える」と断言できるかもしれません。でも、それはやっぱり「2015年の国際試合」の範囲に限ったことで、この作業〝だけ”では普遍的な理論を生み出すことはできないのですね。

では、こうした先行研究に続くどのような作業が必要か。これはもう、引き続き観察データを集めつつ(帰納的推論)、すでに仮説や理論化されている概念の検証(演繹的推論)を繰り返し、〝真理”に昇華させていく道しかないと。バレー学会では、このプロセスが弱い気がしたのでした。シンポジウムしか出てないくせに偉そうに、なのですが(^^;

毎度、前置きが長くて恐縮ですが、そこでやっと本題です。現在、日本で流通しているファースト・テンポは「アタッカーが先に助走動作を行い、それにセット軌道を合わせることで打たせるアタック」と定義されています。また、「1stであってfastではないですよ」ということも注意喚起されています(出典:VMP Poolの「固定項目:ファースト・テンポ(テンポ1)」)。

テンポを考える上で必要なスロットと区分については、『Arie Selinger's Power Volleyball』(1987年)に依拠しています(出典:VMP Poolの「固定項目:スロット」)。ただし、スロットについては、「呼称するためにどのように数字や記号を当てはめるかについては、様々な方法が考えられます」と記載されています。

つまり、日本では、ファースト・テンポは定義済みで、それを説明するためのスロットの表記方法は『パワーバレーボール』に準じる、ということなんですね(セリンジャーさんが『パワーバレーボール』には不備が多く、全面改訂が必要だと考えている、との情報に留意する必要はありそうですが)。

そのファースト・テンポには狭義と広義があり、広義の場合は「マイナステンポ」を含むとされています。また、「日本では『セッターが上げる〝速いトス〟にアタッカーが合わせて打つ』というコンセプトが幅を利かせていますが、これは『セット・アップを起点にしてアタッカーが合わせる』という意味ですから、どんなセットを上げてもファースト・テンポにはなり得ません。アタッカーはセット軌道に合わせる必要はなく、自身の最高到達点に正確に供給されたボールをダイナミックなスイングで打てばよいだけ」と太字で強調されています。

ここまで概念がまとめられている(=体系化されている)ので、あとはこれを検証して〝真理”に近づけていけばよいのですね。

さて、アメリカのバレーボール協会=USA Volleyballが2009年に、『Volleyball Systems & Strategies』という本を出版しています。出版が2009年ということは、執筆は2008年からそれ以前。アメリカは2008年の北京五輪で男子・金、女子・銀の絶頂期を迎えましたが、そのシステムや理論とも合致すると考えられます。これが正しい/間違いということではなく、少なくともアメリカはこう考えており、ネット上で見る限り、この本で示されている考え方が今も流通している、というところがポイントかなと。

私はVMP Poolの原本であるいわゆる〝白ペデ”を持っていないので、白ペデの参考文献に『 Volleyball Systems & Strategies』が入っているかどうかわからないのですが、この本には「Chapter20:Fast-Tempo Strategy」という章がありました。この章がお試し的に読めるようになっているのでリンクを張っておきます。※私の手元には原本はありません。

タイトルが「Fast-Tempo」となっているのは誤植ではありません。この本にも「1st」のほうのテンポの話は出てくるようですが(そこはお試し公開されていません)、それとは別に「Fast」テンポについての戦略を肯定的に考察しているのですね。この本のほかにも「fast tempo」という言葉は検索でけっこう出てきます。いずれも、技術ではなくシステムや戦略の話の時に使われているようです。

また、日本にとっては重要な点だと思うのですが、このチャプターの扉写真には木村のアタック+竹下の後ろ姿が使われています。扉にまったく無関係の写真を配置するとは考えにくいので、2009年時点で、アメリカが考えるFastテンポの象徴は竹下ー木村のラインだった、ということなんでしょう。

アメリカの「fast テンポ」の考え方は下記のとおりです。

The fast-tempo strategy incorporates fast, low-arching quicker sets to various zones along the net. 
(Fastテンポ戦略は、ネット沿いのさまざまなゾーンへの、高速かつ低軌道で<動作が>より素早いセットを含む)

The fast-tempo strategy can be used in all three front-row hitting positions but requires precision from passers, diggers, and setters.
(Fatsテンポ戦略は、主に前衛での攻撃に適用されるが、<その実現には>精密なパス、ディグ、セットができる選手が求められる)

むむむ。↑これって、日本が〝伝統的に”力を入れてきた速攻、もっと言えば、中田姐さんが大好物な「Aパスからの速い攻撃」そのものではないですか。

この時点で、VMP Poolが「ファースト・テンポは〝fast”テンポじゃないよ」と注意していることの妥当性、およびAパス追求の是非をめぐる議論の妥当性を再検証する必要がありそうだなと。

日本語表記だとまったく同一になってしまう1stテンポとfastテンポですが、前者はセット/アタックの技術的な話であり、後者は攻撃戦略の話で、本来は別建ての議論がなされるべきなのではないかと。

しかし、日本ではfastテンポが〝誤解”だと位置づけられたことにより、議論の混乱が生じている可能性がありますね。前提部分を間違うとそこから派生する議論もすべておかしくなるという。もし万が一、1stテンポに関する観察結果をもとにfastテンポ戦略そのものへの批判が行われていたとしたら、議論は永久にかみ合わないでしょう。

この議論を演繹的に整理すると下記のようになるのではないかと。

大前提:バレーボールでは〝速さ”が有利に働く(真理)
小前提:バレーボールでの攻撃面での〝速さ”とはfastテンポ戦略に基づくものである(アメリカの定義)
結論:バレーボールでは、fastテンポ戦略に基づく攻撃(=精密なパス、ディグ、セットに基づく高速かつ低軌道で動作がより俊敏なセットで実現される攻撃)が有利に働く

↑この結論の是非を検証するためには、「精密なパス、ディグ、セットに基づく高速かつ低軌道で動作がより俊敏なセットで実現される攻撃」が「有利」に働かなかった試合があるかどうかを調べればいいのですね。

もし、そういう試合が一定数、定期的に起きている(=特殊ケースではない)可能性が帰納的推論によって示されれば、この結論は崩れます。つまりそれは、fastテンポ戦略においてメリット<デメリットとなる状況があるかどうかを調べればいい、と言い換えることができます。

先日のバレー学会では、小学生レベルでは、fastテンポ戦略で優勝チームが出ているとの報告がありました。一方、中学レベルでは、この戦略が明確に否定されていました。というのも、小学校→中学校でネットの高さやボールの重さが変わりますが、子どもたちの体格の向上がそれに追いつかないため、fastテンポ戦略に基づく攻撃ではセットしきれず、打ち切れないからなんだそうです。説得力のある分析です。では、高校では?大学では?Vリーグでは?ということなんでしょう。

さらに、1stテンポとして体系化されている概念は、このfastテンポ戦略を実現するための戦術もしくは行動パターンと位置づけることができそうです。

参考までに、この本に記載されている「fastテンポ戦略」に基づく具体例と、メリット/デメリットを記載しておきます。1stテンポを戦術もしくは行動と位置づけていることが読み取れるかと。また、日本で流通している考え方とほぼ同じであること、同時に、ここはちょっと違うんだねというところも見られ、なかなか興味深いなと思いました。※私の日本語訳の要約なので、正確な文言は原文でご確認くださいまし m(_ _)m

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Fastテンポ戦略に基づく主な攻撃パターン

(↑「これがすべてじゃないよ!チームでもいろいろ工夫してみてね♡」とのコメントあり)

※下記の数字の意味は、1stテンポのものとは異なります。この本では、スロット(左の数字)をレフト側から1メートル刻みで1~9にわけています。また、トスの軌道の頂点の高さ(右の数字)をネット上辺から1フィート(約30cm)刻みで5段階にわけ、低いほうから順に1~5としています。

51
いわゆるクイック。トスの頂点はネット上30cm。打つ位置はセッターの定位置から1メートル前。主にセンター用の攻撃で、アタッカーは空中で打つコースを決めて待っているのが理想。また、ライトアタッカーが俊敏だった場合、セッターの前まで走らせて打たせるのもあり。そのアタッカーが左利きだったら、セッターの前で打つfastテンポとしてはかなり強力。

31

いわゆるクイック。トスの頂点はネット上30cm。打つ位置はセッターの定位置から3メートル前。主にセンター用の攻撃で、アタッカーは空中で打つコースを決めて待っているのが理想。レフトアタッカーが打つのもあり。ライトアタッカーに打たせるチームはほぼないが、もし挑戦する場合は、ライトアタッカーが左利きでめちゃめちゃ俊敏であることが必要。←rio注:これ、モトコワイドですね。

71
ライト攻撃、ただし左利き用。トスの頂点はネット上30cm。打つ位置はセッターの定位置から1メートルライト側。右利きセンターが打つ場合は、セッターの後ろに回り込む速さと打つ位置を判断する早さが必要。片足踏切もあり。左利きセンターには向いてない。

14
レフト攻撃。トスの頂点はネット上120cm。打つ位置はアンテナ付近。「これってハイセットじゃね?」と思ったあなた、fastテンポと通常のテンポの違いについてよく考えてみるべし。アタッカーは、空中で待っている必要はないものの、トスされたボールがセッターからそれほど遠くない段階でアプローチを開始しなければいけない。助走スピードの速さと、ジャンプから打つまでの流れるような動作が必要。速く動けるアタッカーはゆっくりめに、遅いアタッカーは早めにアプローチを開始すること。

13

レフト攻撃。トスの頂点はネット上90cm。打つ位置はアンテナ付近。アタッカーはセットアップの前に助走を開始する。この攻撃のメリットは、相手の外側のブロックが完成する前に打てることと、低くて速い攻撃なのでミドルブロックが追いつけないこと。

12
最上級レベル。レフト攻撃。トスの頂点はネット上60cm。打つ位置はアンテナ付近。アタッカーはセットアップの前に助走を開始する。レフト攻撃のなかではこれが最速テンポで、セッターにとってもアタッカーにとっても難しい。

94
ライト攻撃。トスの頂点はネット上120cm。打つ位置はアンテナ付近。アタッカーはセットアップの前に助走を開始する。センターの移動攻撃でも打てるタイミングだと完璧。

93
上級レベル。センターの移動攻撃。トスの頂点はネット上90cm。打つ位置はアンテナ付近。アタッカーはセットアップの前に助走を開始する。ライトアタッカーでも打てるタイミングだったりすると完璧。


Fastテンポ戦略のメリット

相手にとって、守備が難しい。
ブロックを1枚もしくは0枚にできる。
2枚ついた場合でも、ブロッカーはトスを推測する(guess block)しかない
チームが盛り上がり、士気が高まる
〝秘密兵器”として持っておくことで自信がうまれる

Fastテンポ戦略のデメリット

レシーブ、アタッカーの移動、セッターの移動のすべてに正確性が求められる
すべてが正確だったとしても、アタッカーとセッターがシンクロしない(同期しない)恐れがあり、返すだけになってしまうことがある
アタッカーの心身両面での負担が大きい
※「synchronized」は同期性・同調性を指すため、結果的にアタッカーの助走動作がそろったときにも「シンクロした」と言われますが、その現象を指す用語ではありません。そのため、「アタッカーとセッターがシンクロしない」という表現も出てくるわけですね。


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バレー学会のシンポジウムをのぞいてみたり。 [バレーボール]

3連休初日、朝から雨、そんな日の午後3時に、バレーの競技者でも指導者も研究者でもないわたくしめがバレー学会のシンポジウム(有料)に参加ですよ(プ ツイッターで「誰でもOK,飛び入りOK」とつぶやかれていたのと、ナマ中田……は天皇杯で見たけれどナマ朝長を見たことがなかったので、というミーハーな理由でのこのこでかけていきました。

「学会」と名のつくものに出るのは久々なのですが、イメージしていた知と知がぶつかりあう「学会」とはちょっと違ってました。といっても特別講演の終わりのほう(←ミズノの相談役がロンメル将軍の武勇伝武勇伝でんでんででんでんを語ってた)とシンポジウムしか見ておらず、2日目は参加しないので全容はわからないのですが。

シンポジウムのプレゼンター&パネリストは4人。小学校の宇賀田先生、中学校の海川先生(←パナ・関田の恩師)、高校の朝長先生(←元全日本)、中田監督(久光)。小中学校の指導の現状はまったく知らなかったのでとても興味深かったです。宇賀田先生、海川先生ともにさすが先生、話が上手でわかりやすい。実践と教育論に裏打ちされたバレー指導論を述べつつ、常に「これが正解かどうかはわかりませんが、私はこう指導しています」と謙虚なトーンを保っておられたのが印象的でした。そう、正解なんてない。もしくは、正解はたくさんある。ってことですよね。

この「正解はたくさんある」ということを、朝長先生(←がんこな豆柴、と言われていた)が表現すると「セッターとリベロは監督の好みで選ぶ。結果論で評価されるので」となるわけですよ。パッと見、意味不明を通り越して危険なかほりまでしますよね。朝長先生はシンポジウムの後半でも、「セッターの向き不向きは、ハンドリングのうまい子、あとは顔」と発言。もう完全に危ない!逃げて!って感じで(笑)

いやいや、豆柴先生の名誉のために補足しますが、監督の好みで選ぶ⇒監督のバレー観に合う選手を選ぶ、と言いたかったんでしょう。また、顔⇒面構え、と言えばよかったんだと思います。

一般的に「学会」というとこの本のようなイメージで、発表ともなると胃が痛む経験をした人も多いのではないかと想像しますが、バレー学会は豆柴のボキャ貧で場がなごむような温かい場所なのでした。

これが〝先生”ではない中田監督になるともっと大変。声はずっと聞こえているのにボキャ貧過ぎてなにを言わんとしているのかよくわからないという超現実体験をしてしまいました。宇賀田先生や海川先生のときにはすらすらと動いていたメモを取る手が、中田監督のときにはポンコツのマニュアル車みたいにがったんがったん止まるという。

前置きが長くなりましたが、そんなシンポジウムで印象に残ったことを、バレー業界になんのしがらみもないわたくしめがここに書き記しておきたいと思います。

その1、植田さんが代表監督時代にストップウオッチを持って「平行トス0.8秒」とかやっていたのは、今となってはお笑い草らしい。

朝長先生が代表時代を振り返り、「0.8秒とか言って、ストップウオッチで計って」と言っただけで会場のあちこちから失笑が起きたのですね。植田さんはこの事実、直視したほうがいいと思います。Vリーグの解説席にふんぞり返ってコートサイドの山本に「山本君、○○調べて報告してください。はい、お願い」とか偉そうに取材を命令している場合ではありません。

さらに朝長先生いわく、「速いトスを上げようとするとボールに力が入ってしまってアタッカーが打ちにくくなる。これでいいんだろうかと思いながら練習をしていた。試合では練習と違うことをやっていた。あ、これ、ここだけの話で」、だそうです。ここだけの話って、だめですよ、こういう重要な歴史的証言は後世のために記録にとどめねばなりません。

↑これ、完全に植田さん、裸の王様ですよね。左右へのトスが速いという理由で、周りの猛反対を押し切って宇佐美を代表に招集した。なのに、宇佐美と阿部ではどっちも強気だからチームがまわらないとか言い出して、阿部と朝長を代えた。その朝長が、植田流〝速いトス”なんてのには、はなっから懐疑的で、練習では仕方なく言うとおりにしておいて、試合になると自分が正しいと思うトスを上げていた。植田さんはその朝長を評価し、最終的に正セッター扱いにしたという。

宇佐美は引退後のインタビューで、「朝長は人を使うのがすごくうまかった。不器用なりに『僕はこのトスしか上げられません』と割り切っていて、その分アタッカーに頑張らせることができた」とし、当時のチームは朝長で成り立っていて、そのおかげで北京に行けたと振り返っています。

でも実は、朝長は「上げられません」じゃなくて、「上げたくありません」だったのかも。テレビで見る温厚なイメージとは違い、アタッカーとの衝突も辞さない頑固な一面もあったようですし、ありえる話だなと思いました。

その2、中田監督がサーブレシーブのAパスを理想としていることを、気に食わないと感じている人びとがいるらしい。

あまりにボキャ貧な中田監督の発言の全容を私なりに要約すると、「セッターに求められるスキルと戦術」という学会のテーマについて、彼女は次のようなロジックで話していたのだと思います。

1.セッターは試合のすべてを把握し、あらゆる可能性について常に準備し、状況変化に臨機応変に対応できるスキルと戦術眼が求められる。

2.私は、サーブレシーブはAパスを追求するものだと考えている。また、攻撃のサインはAパスを前提として出される〝理想形”であると考えている。

3.しかしながら、常にAパスが返るわけではない。Bパス、Cパスになったときに、サインを維持するのか、一部解除するのか、すべて解除するのか、という判断が求められる。

4.また、サインを解除した場合、次の動きをどうするべきかという判断も必要で、この点については、セッターとアタッカーが練習のなかでしっかりと詰めておかなければならない。

5.監督の立場では、サーブレシーブがしっかり返りにくい状況では、セッターの定位置に点で返すのではなく、もっと中央寄り(ネット際の中央)でもよい、もしくはアタックライン上でもよいと指示することがある。そうすることでレシーバーの心理的負担が減り、決定率の向上につながることがある。

↑これ、私はまったく異論ありません。中田監督に限らず、ごくごく普遍的な考え方だと思います。ところが、会場からは、この5項目のうちの「私は、サーブレシーブはAパスを追求するものだと考えている」という部分にツッコミが入ったのです。

その結果、

中田「Aパスを追求するものじゃないんですか?違います?」
会場の人「世界では(決定率が大きく変わらないなら)Bパス、Cパスでよいとする考えが主流で」
中田「世界は世界、日本は日本」

という、すげー不毛なやりとりがなされていたのでした。これね、中田監督もちょっとずれてますよ。「世界は世界、日本は日本」って、中田久美バレー=日本バレーじゃないからね、っていう。

ただそれよりもやっぱり、質問した人がヘンですよ。中田監督がもし「Aパス以外は認めない。サインも解除しない。Aパスできないレシーバーは即クビ!」というスタンスで話していたのなら議論する価値はありますが、そうじゃない。彼女は単に「私はAパスが好き」(rio翻訳)って言っただけです。それに対して世界の主流がどうこうとか言ったって、そりゃむっとされて当然ですし、「世界は世界」って言い返されても仕方ない。

と思いながら帰宅してツイッターを見てみると、なんとバボッターな方々がこのやりとりを取り上げて、中田監督を叩いているではありませんか。恐ろしい。学会に呼ばれて出て行ってバレー観を披露したらツイッターで叩かれるって、こんな理不尽あります?

ということもあり、やっぱり、私が知っている「学会」とはちょっと違うな、と思ってしまったのでした。そして、2つ書いただけでもう疲れてしまったのでした(完)

(おまけ)
シンポジウムでの中田監督の手土産話。Vリーグ女子、久光がセッターを古藤から中大路に代えたのは、古藤が軽い肉離れを起こしてしまい、大事を取ったからだったんですね。で、中大路か栄かとなったときに、中大路のほうがきちんと準備をしていた。ボキャ貧な中田監督がごちゃごちゃ言っていたことを要約すると、中大路は試合前に4回開いたミーティングで自分なりのビジョンを示した、(ビジョンの正誤は別として)その姿勢をかった、ということだそうです。ただ、中大路のトスはきつくて打ちづらい。久光でもっともトスの質がいいのは岩坂なんだとか。

あ、でも、岩坂をセッターにしなくていいですよ。狩野舞子みたいに引退すると困るので。


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Vリーグ男子:おめでとう合成、初優勝!パナもよくがんばったのだが。 [バレーボール]

Vリーグ男子、開幕ダッシュを決めた[ぴかぴか(新しい)]豊田合成[ぴかぴか(新しい)]がそのままの勢いを保って初優勝!決勝のパナソニック戦は〝いつもの”合成ではありませんでしたが、追いすがるパナを振り切ってのフルセット勝ち。いやはやしびれました。私はNHKで観戦していたのですが、会場に行けばよかったといまさら思ったり(笑)

合成もパナも、今季積み重ねてきたものをすべて出し切ったと思います。合成はクリスティアンソン監督が試合後に語った通り、レギュラーラウンド終盤には〝合成包囲網”を敷かれてピンチに陥りつつ、そこから立て直しての決勝進出。この試合ではなんと、攻撃面での弱点だった白岩が決定率53.8%でチームトップでした。合成のこの修正力、王者にふさわしいと思います。一方のパナソニックも、白澤山添の両センターがいずれも2桁打数。特に、こちらも攻撃面の弱点だった白澤は決定率60%と役割を果たしたのでした。

また、この両チームには大局観を持ったゲームメーカー=合成・古賀、パナ・深津がいることも、試合を面白くした要因でしょうね。rio脳内では、古賀は文句なく最高殊勲選手賞です。この賞にリベロが選ばれたことはないと思いますが、古賀あってのイゴール、古賀あっての合成、だったことを考えると、最高殊勲は彼でしょう。

一方、深津はよく復活しました(←ダジャレじゃないっす)。レギュラーラウンドの一時期、両サイドに高速トスを上げるだけのマシーンになりかかっていましたが、そこに落ちていかず、ファイナル6終盤から持ち味を取り戻しました。特に準決勝と決勝ではバレーの醍醐味がつまった試合運びを見せてくれて、深津が代表正セッターで大丈夫かな……という声も吹き飛ばせたと思います。

そんな激戦のローテはこちら。

イゴール 近  高松

白岩  傳田  内山  古賀(L)
---------------------------------------------------
そーご 深津  白澤  

山添  清水  ダンチ  永野(L)


むむっ!ですよね。合成はイゴールのサーブから始めるテッパンのローテ。一方、パナソニックは今季初?見たことがないローテでした。清水とイゴールのマッチアップを避け、むしろダンチをぶつける、という作戦だったのでしょうか。このローテで第1・パナ、第2・合成です。

で、第3セットでは、合成はローテを維持、パナはローテを4つまわして清水を前衛ライトの位置から始めたのですね。 結果、第3・合成で王手、となりました。

後がないパナはローテを第1セットと同じに戻します。合成は予期せぬイゴールの失速で一時期は6点差をつけられる大苦戦。そこから驚異的な追い上げで逆転して先に20点を取り、21-19とブレイクしたのですが、またもやイゴール大失速で競り負けます。

そして第5セット。合成はおそらく、第4セットで傳田が清水を捕まえ始めていた流れに賭けたのでしょう。傳田を前衛レフトから始めてブロック回数を増やす作戦に。1stサーブとなったが作戦にそったサーブをしっかりと打ち、3-0とダッシュに成功。こうなるとパナはつらいですね。疲労がたまっている清水は傳田のブロックをかいくぐれずにシャットアウト、スパイクアウトを連発。足をつりかけて?一時交代に追い込まれてしまいました。

一方、合成もイゴールがかなり疲れてましたね。見たことがないような弱いスパイクを簡単に拾われてしまう場面が何度も。ただ、清水が機能しないパナは、せっかく上げたボールを決めきれず、点差を縮められない。むしろ、ダンチがサーブ時にラインを踏むなどの凡ミスで点差を広げられ、13-8。ここでサーブ順がイゴール、というあたりも今季を象徴する展開ですね。

イゴールは最後の力を振り絞って、1発目をショートサーブでダンチに拾わせて足止め。今村のレフト攻撃を上げてイゴールのバックアタック、これが驚異的な高さで、3枚ブロックを簡単に抜き、レシーバー陣は1歩も動けず。疲れて失速してたんじゃなかったのかい?っていう。で、2発目は深いサーブでダンチをはじき、深津が必死に走って清水に上げるも、これがアウト。ここぞ!というときに決してミスをせず、相手に粘る隙を与えないイゴールの決定力、トリハダものでした。

試合の流れはざっとこんな感じだったと思います。で、この試合で強く印象に残った2つの場面を。

1つ目は、第1セットのパナの完璧な試合運びです。今季の全セットのなかでベストと言っていいのではないかと。合成のサーブの狙いは原則ダンチ。ただ、傳田サーブのときは清水が前衛レフト攻撃になるので、傳田は前衛ライトのそーごをねらって攻撃参加を遅らせる作戦。また、ジャンプフローターの内山は清水の前に打つショートサーブで攻撃参加を遅らせる作戦でした。深津率いるパナはこのサーブ戦術への対策をしっかりと考えてきていたようです。

圧巻だったのは第1セット中盤。合成15-パナ17の場面でサーブはイゴール。後衛中央を守る永野が守備範囲を広く取ってしっかり返し、深津の選択は白澤のクイック。イゴールの強力サーブでもクイックを使うぞ!と印象づけました。

次のセットプレー(16-18)では、高松がダンチ狙いのコントロールサーブを打ってきます。ダンチはこれを難なく返し、深津の選択はクイック!と思わせて、ダンチのパイプ攻撃。ダンチ封じのサーブを打たれてもダンチを使うぞ!と印象づけました。

で、その次ですよ。サーブは深津。自陣右から対角線にサーブを打って白岩を崩し、イゴールのバックアタックにそーご・山添・清水の3枚ブロック。ワンタッチかけたボールを永野がファインプレーで上げ、そーごはレフトに開き、清水は戻る時間がなくセンターで開きますが、深津の選択はダンチのバックライト。これをダンチがストレート打ちでワンタッチ取ったのです。

通常はレフトで開いているそーごに上げますよね。ところがこの場面では、ダンチは永野が拾ったことを確認した瞬間から後衛ライトに移動しています。ブロックに跳んだそーごや清水が開いたのはそのあとで、開き終わったときにはすでに、深津がダンチにトスを上げていたのでした。速い!クイックもパイプ攻撃も見せておいて、さらに前衛レフトから打てる状態でのこのパターン。これは相当な組織力だなと。

オポジットが3枚ブロックに参加してボールがつながり、攻撃位置に戻れないときに、後衛サイドがバックライトに回り込んで打つパターンができるチームは強い、と思っています。というのも、そのプレーを実現するためには、後衛サイドが的確に判断して素早く移動する必要があり、周りのアタッカーも打てるタイミングで開く必要があり、セッターがその動きと相手ブロックとの両方が見えている必要があるからですね。さらに、当然ですが後衛サイドがバックライトから打ち切る技術が必要です。

上がってしまったボールや2段トスを後衛サイドがバックライトから打つ、という場面はときどきありますが、意図的にこのパターンを見せたのは、今季はこの試合のパナ・ダンチと、ファイナル6のときの合成・高松だけのような気がします(違ってたらごめんなさい)。

それをリードブロックで追いかけた高松・傳田もすごいし、ネット際まで戻ってすぐブロックに参加した内山のひたむきさもすごい。そうやってブロックがわらわらときていても動じず、確実にワンタッチをとったダンチの技術と経験はさすがなのでした。

2つ目は、さらにマニアックなのですが(笑)、第3セットの合成15-パナ14白岩が清水のライト攻撃を1枚でシャットアウトした場面です。近のダンチ狙いサーブがゆるく、完璧に返球されてしまいます。合成のブロックは白岩・傳田・イゴール。

このうち、イゴールはボールが深津に届く前に、左手を上げて軽くジャンプ、という謎のアクションをしています。クイックにコミットしようとおもったけどやめた?のか、深津をまどわせるブロックのフェイク?なのか、そもそもそんな戦術があるのか謎ですが、ともかくイゴールはヘンな動きのあと、ダンチのレフト攻撃へのマークに移動してしまいます。傳田は深津に完全に振られて山添のクイックに全力で跳んでしまい、白岩が1枚に。

その白岩の位置取り、タイミング、最後の処理まで完璧だったんですね。深津のトスが短かったので、白岩はストレート側を空け、クロス側で跳んでいます。清水の左肩と自分の左肩が平行になる位置&高さにきっちり合わせ、清水が打つ直前に、最高到達点で手をしっかり前に出した状態を完成させています。で、清水の打球が手に当たった瞬間にクロス側にふってコート外に出されないようにしたんですね。最後はタッチネットしないように両腕と体を反って着地。

実は白岩、試合を通じてこの基本的なブロックをずっとやり続けていたのです。さぼらず、真面目に、地道に。その努力が実を結び、この試合の山場の1つだった第3セットの16点目の攻防で炸裂したのです。もしここをパナが決めていれば、15-15の同点となってセットの結果、ひいては試合の結果も変わっていたかもしれません。

などなど、試合を振り返ると楽しい場面はまだまだたくさんあり、ほんと、いい試合でした。優勝した合成の胴上げでクリスティアンソン監督が高く上がりすぎて半回転して手がびくびくっ!ってしたときは、おおおおおじいちゃん大丈夫???とひやっとしましたが(笑)、満面の笑みでなによりでした。

クリスティアンソン監督は若かりし頃、スウェーデン代表のセッターで、妖怪マツダイラーのはからいで日本の練習に参加した経験を持つそうなのですね。その縁で、監督人生の最後?を日本で、との思いから来日したと、みなさまのNHKがいつぞやの放送で言っておりました。

全日本代表がおらず、高身長の日本人選手もおらず、就任前のチーム最高成績は4位、というところから始まって、昨季は3位、今季は天皇杯とリーグの2冠に育てた名将。この勢いで黒鷲もいってしまいそうです。

ただ、すべての優勝チームが直面する〝世代交代”の洗礼を、合成もきっと受けることになるでしょう。ポスト・イゴールは外国人選手のスカウトである程度は何とかなるとしても、ポスト・古賀の育成は時間がかかるでしょう。古賀はいま円熟期を迎えていると思いますが、このピークを何年維持できるか。そして、控えリベロの川口が古賀レベルまで育つのに何年かかるか。さらに、クリスティアンソン監督はいつまでチームを率いるのか。初めて尽くしの合成の新たな模索を見守りたいと思います。

でもその前に黒鷲、そして世界最終、ですね。代表発表が楽しみです。


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Vリーグ男子:戦術を徹底したパナ、あいまいになってしまった東レ [バレーボール]

Vリーグ男子のファイナル3の準決勝、パナソニックと東レの一戦はフルセットでパナの勝利。熾烈なシーソーゲームを制したパナが辛くも逃げ切りました。パナソニックは終始一貫して戦術を徹底していました。それに対し、東レはパナ封じの作戦があたって完全に試合を支配していたにもかかわらず、なぜか自ら主導権を手放すという。

そんな謎めいた試合のローテがこちら。

渡辺 深津 白澤

山添 清水 ダンチ L永野
--------------------------------------------

富松 星野 藤井

ニコ 鈴木 李    L渡辺

第1セットはこのローテで一進一退でした。パナソニックは原則として、フローター系サーブを永野とダンチの2枚でとるシフトなので、李、藤井、富松はダンチ狙いを徹底。強力ジャンプサーブのニコ(ジョルジェフ)、星野、鈴木のうち、ニコと星野はダンチ狙い、鈴木はそーご狙い(=深津の動線をじゃまする+レフト攻撃の清水に上げさせてブロックする)、だった気がします(間違ってたらごめんなさい)。

作戦はとてもよかったのですが、東レのサーブが弱かったためにパナは崩れず、むしろ清水・ダンチの2枚看板がよく機能していました。決定率50%前後をキープし続けていたと思います。

一方、パナは試合前、白澤「清水とダンチ頼みだといずれつかまる。もっとセンターが絡んでいかなければいけないと思っている」とコメントしていました。その思い通り、早い段階から白澤・山添がクイックを打っていきますが、これが全然決まらず。パナ8-東レ9の場面では、深津/白澤のラインで、サーブレシーブが崩れたところから東レのお株を奪うようなタテBを使ってみたもののどシャットを食らうという。もうわかった、無理なものは無理だったね、ごめんごめん、って感じでした。

ただ、センター攻撃以外は、パナも実は、作戦があたってたんですね。パナの作戦は、星野・鈴木のうち前衛にいるほうをサーブで狙って攻撃参加を遅らせ、ブロックで東レのセンター攻撃に圧力をかけつつニコを止めにいく、というパターン。東レは星野・鈴木のバックアタックがほぼない(実際にこの試合では1本も打っていません)ので、前衛レフトの攻撃参加が遅れ、センターが打てなければニコしかないわけで、パナはこれを第5セットまで徹底していました。

さて。
まず謎だったのは、東レが第1セットのローテを李のサーブから=前衛の攻撃が2枚・リベロがいない・鈴木が後衛(=攻撃型サイドなのにパイプ攻撃がほぼない/決まらない)という弱いローテからスタートしたこと。

余談ですが、私は弱いサーブのセンターから始める、というローテの意味がよくわかっていません。どこのチームもけっこう普通にやってますよね。。。

例えば、豊田合成がセンター近のサーブから始める、というのはわかります。近は強いジャンプサーブですし、次のサーバーはイゴールなので、近のサーブ時はイゴールが前衛ライト、続いてイゴールのサーブ、というブレイクを狙う流れがはっきり見えます。でも、例えばこの試合での東レはなぜ李サーブのローテから???

気になって過去の公式記録を見返してみたのですが全然わからず。東レが李サーブから始めた試合は、もしかして今季初?ではないでしょうか。少なくともファイナル6では1つもなかったですし、ファイナル6でのパナソニック戦は星野サーブから始めるローテでストレート勝ちしています。

しかも、東レは李サーブから始めた第1セットを落とすと、第2セットはローテを2つまわし、ファイナル6のときと同じローテにしています。第1セットを取ったパナはそのままのローテだったので、第2セットは東レが25-14で圧勝。ダンチはアタックのタイミングがずれてしまって決まらなくなり、両センターは相変わらず機能せず、という。そりゃそうなるでしょうね、ファイナル6もそれで東レが勝ってるんだから。

もはや〝たられば”ですが、東レが最初からファイナル6と同じローテだったら、第1セットを東レがとっていたかもしれず、そうすると結果は変わっていたのではないかと。実はこれって、今季を通して小林采配の長所でもあり短所でもあったのでは……と感じていたりもするのですね。

小林監督は入念に相手を研究して作戦を立ててくるタイプですし、その采配は先手先手を打って変化していくところに面白さがあると感じています。一方、相手がまだ対応できていないのに〝変化”してしまい、その変化後のパターンに対応されてしまって苦しむ、という試合も何度かありました。ま、端的に言えばおっちょこちょいなのかなと(笑)

それはさておき。
第3セット、第2セットを圧勝した東レは当然ステイ、今度はパナがローテをまわして来ました。ダンチを前衛ライトから始めることで、サーブレシーブで狙われたときの攻撃面への影響を最小限に抑えようとしたのでしょうか。ダンチがライト側にいてショートサーブで狙われたときには白澤がサーブレシーブをしていましたし、第4、第5セットはさらにローテをまわし、ダンチを後衛ライトからスタートさせてました。

この辺りから、東レが徐々におかしくなってきたんですね。そもそも1stサーブが星野、という時点でいけてない。そこそこ強いサーブを持っているとは言え、サーブ失点1位ですから。案の定、星野は1本目こそ強いサーブでダンチを狙いましたが、それ以降は入れとけサーブに逃げてしまいました。

また、第1セットと同じ理由でそーご狙いを指示されていたはずの鈴木が、わざとなのか狙いがはずれたのかダンチに打ってみたり、李の代わりにピンチサーバーで入った大木がそーごに代わって守備固めで入っていた専田の真正面に打ってみたり、さらに富松の代わりにピンチサーバーで入ってきた佐野がこれまでのすべての流れを無視してそーごに入れとけサーブを打ち、その結果、ダンチにパイプ攻撃を打たれたり。なんでいきなりそんな適当になるんだ???という。

佐野の意味不明なサーブの前には、藤井のめちゃくちゃなタテBトスを富松が打てずにネット、なんてことがあり、このセット初めてパナにリードを許してしまってタイムアウトを取ってるんですね。で、立て直すかと思いきや、余計にパナを勢いづかせてしまうという。

逆に言えば、東レのこうしたほころびを見逃さず、佐野サーブの時にすかさずダンチのパイプ攻撃に上げた深津は偉い!と思いました。試合の展開がしっかりと見えていて、自分がいま何をすべきかがよくわかっているセッター、ですね。自己満足に走りがちな藤井との差がはっきりと見えた瞬間でした。

そんなこんながありつつも、佐野サーブ不発の時点で東レ20-パナ21、そのあとニコの連続サービスエースがあって23-21まできたんですね。どう考えても流れは東レ。なのに、ここでニコがサーブ時にラインを踏むという……。パナは崩れていただけに、もったいないでは済まないミス。

さらに、次のプレーで鈴木のレフト攻撃が清水にブロックされつつもぎりぎりのブロックアウト、という〝幸運”があったにもかかわらず、サーブにさがった鈴木はなぜかそーごを狙わず、永野の真正面にサーブを打ってしまうという。鈴木のサーブがいいといっても、永野はサーブレシーブ2位ですからねえ。真正面にくればそりゃ返りますよ。で、深津がそれを見逃すはずはなく、ここでもすかさずダンチのパイプ攻撃を選択。東レはこれをさせたくないからダンチ狙い、深津の動線のじゃま狙いをしていたはずなのに。。。

ダンチのパイプに李はさすがに反応してブロックに跳びましたが、ダンチは高い位置から思い切りターンして鋭角に。あんなの絶対にとれません、っていう強烈な一撃でした。これで24-23。さらに、そーごがサーブで崩し、チャンスボールをダンチがレフトから叩き込む。これで24-24のジュース。こうなるともう、ダンチは完全復活です。

一方、東レはさらに迷走してしまいます。パナ・そーごのサーブミスで25-24となって、東レは李のサーブ。レシーバーはダンチと永野の2枚で、そーごはライト側でほぼ外れているのに、なぜかそっちに打ってしまうんですね。深津と清水の動線を邪魔する目的だったのかもですが、そこは当然、永野がカバーに入って完璧に返球します。となると、前衛はダンチ・山添・清水、後衛からはそーご。パナの攻撃力がもっとも高い布陣になってしまい、ブロックできるわけないですよね。結局、ダンチがレフトから叩き込んで25-25

続いて、サーブに下がった山添が崩し、藤井が2ndボールを押し込む際に堂々のオーバーネットで25-26。ミスってニコニコ笑っていたのがとても憎たらしかったです。で、最後は清水にサービスエースを決められて25-27。なにしとんの?という落とし方でした。

ガマンにガマンを重ねてつぶれかけた選手が復活したときほど手ごわいものはない。ゾンビは死なないのです。第2セットで30%台まで落ちていたダンチの決定率は、第3セットのジュースの時点で45%、さらに第4セット・第5セットで50%に乗せたんだからどれだけの復活ぶりだったか。

第4セット、東レのダンチ狙いはもはやぐだぐだになってしまい、各選手が打ちたいところにサーブを打っている(としか見えない)状態に。そうなるとダンチにやりたい放題やられるのでタイムアウトで修正→そうすると今度はサーブが弱くなる、という悪循環になってしまったのですね。ただ、センター線がないパナ相手では、サーブが緩くなってもなんとかなる。結果的にシーソーゲームが続き、ミスの差で東レがこのセットを取りました。

東レのサーブが緩くなっている+ブロックのマークがあやふやになっている→センター線が使える、と深津が気づいた(たぶん)のは第4セットの最終盤でしょう。もっと早く気づいていればこのセットをとれたかもしれず、3-1で勝っていたんじゃないかと思います。

それでも、気づいた深津はやっぱり偉い。第5セットは序盤から白澤・山添の両センターにクイックを決めさせて流れをつかみます。さらにパナは、藤井のトスワークの傾向を読み切って、あえて緩いサーブを打ち(たぶん)、藤井に好き勝手に上げさせて個人技で=1枚で止めに行く大胆(というか捨て身)の戦法を繰り出しました。これが大当たり。ニコや富松がビタンビタン止められて、藤井がいかに相手ブロックや守備隊形を見ておらず、適当かつ自己満足なトスワークをしているかがバレバレになってしまったのでした。

ここで白澤が本領発揮。シャットアウト、ワンタッチ、リバウンドも取らせないなど、リーグ有数のブロック力を十分に発揮して12点まで走る原動力になったのだからすごい。第5セットのこの大活躍で、攻撃が不甲斐なかったことは大目に見ましょう!ってほどでした。

で、東レは最後、ピンチサーブで入ってきた佐野がまたしても意味不明。サーブを永野の真正面に打ち、パナが完全有利な状況を作ってしまったのですね。結局、ダンチがレフトから叩き込んでゲームセット、となったのでした。

東レはなぜ途中で、采配と選手のプレーがかみ合わなくなってしまったのか。そして、なぜそれを修正できないままずるずるといってしまったのか。そもそもなぜ、勝ちパターンではなく、これまでやってないようなローテでスタートしたのか。謎だらけです。

一方のパナは終始劣勢で、課題はまったく克服できなかったのですが、そんなジブンタチノバレーしかないチームとしての戦い方を見せてくれました。ヒーローインタビューには清水が呼ばれてましたが、勝ちを拾えた最大の要因は、ごくごくわずかしかなかったチャンスを深津が見逃さなかったことだと思います。川村監督はこの試合でも〝空気”そのもので、選手はコーチの話しか聞いちゃいない感じでしたが、セッターがちゃんと目配りしていればなんとかなるものなんだなと。

決勝でパナを迎え撃つ合成が、この試合をどう分析して対策を立ててくるのか、とても楽しみです。


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Vリーグ男子:ファイナル3決定!明暗をわけたのは……? [バレーボール]

Vリーグ男子、ついにファイナル6の順位が確定し、ファイナル3の最後の1枠にパナソニックが滑り込みました。

順位確定が最終日までもつれた大混戦のなか、開き直ったパナソニックが打数92本のうち67本を清水とダンチに打たせるというジブンタチノバレーに逆戻りし、切符をもぎとりました。実に2人で7割以上打ってます。これが南部‐パナソニック‐Japanの下地になる可能性があるかと思うとげんなりですが、前シーズン全敗だったパナとしてはなりふり構っていられなかったのでしょう。もはや川村監督の出る幕はなく、リベイロ・コーチが監督然としてチームを仕切っていたのが印象的でした。

それはさておき。大混戦のレギュラーラウンドを経て、ファイナル6では豊田合成東レがするするっと抜け出しました。直接対決(27日)では東レがフルセットで辛勝。ただ、フルセットまで粘った合成がポイント差で1位という今季の混戦を象徴するような試合でした。

この2チームにはいくつかの共通点があります。1つ目は、意外と言うか当然と言うか(どっちやねんって感じですが)、故障による長期欠場・離脱の選手を出していないことですね。東レは富松がリーグ前半で故障欠場がありましたが大事には至りませんでした。無事これ名馬。

続いて、ラリーになったときに決定力の高い選手(主にオポジット)までもっていくシステムの精度の高さ。この〝システム”にはブロックフォロー、2段トス、リバウンドの処理、おとりの助走などが一連の動作として組み込まれています。それぞれの役割に基づいて無駄な動きをせず進めていけるだけの訓練を重ねていて、スタンドプレーもさぼりもない。ここまで練り上げ、見にしみこませるには相当な練習を重ねたんだろうと想像します。やはり、練習は裏切らないのですね。

しかも、合成は味方のミスを周りがカバーしてダメージを薄めることができる〝大人”のチーム。クリスティアンソン監督(って書くと慣れないですが、アンディですね)は戦術面は古賀に伝え、個々の技術面は直接ガミガミ言う。古賀は常に各選手とのコミュニケーションを欠かさず、指示を出し続ける。役割が明確で指揮系統がはっきりしていること、反発したりすねたりする未熟な選手がいないこと、これは団体戦で勝つためには必須(=必要最低限の)の要素ですね。

一方、東レはリーグ前半、味方の守備の乱れに対してニコがキレてしまい、そこからムードが悪くなる試合がありました。それもリーグ後半になると解消されていて、なにか思うところがあって彼なりに学び、成長したんだろうなと。その分?得点時のハグが熱く強力になって痛そうですが(笑)。得点時に富松がコートをうろうろ1周するのはニコから逃げてるんじゃないかという説も(謎)

そしてもう1つの共通点。この2チームはセンター線の使い方が上手で、ラリー中でも果敢に使っていましたね。合成は年明け、それをサーブで封じられ、特に近が苦戦して失速しました。けれど、ファイナル6ではチーム全体で守備位置や助走の入り方を調整して対応。修正力の高さを見せてくれました。

東レはリーグ前半、伏見をスタメンさせましたが不発。東レが求める細かくて速いバレーにあってなかったんですね(伏見がそういうタイプでないことはわかっていたはずなのに、ホームの地元出身ということで獲得したからには、なんとか上手に花を咲かせてあげてほしいです)。ということで伏見に代えて李をスタメンにしたところ、これが大当たり。レギュラーラウンドではアタック決定率1位(しかも10位以内にセンターは彼だけ)という大活躍で、くすぶっていたチームの突破口を開きました。これもまた、修正力の高さと言えると思います。

故障しない身体作り、チーププレーの徹底、鍵となる攻撃(センター線)の活用、そして修正力。こうやって並べてみると、どんなスポーツにも共通する当たり前のこと、基本中の基本ができているチームがリーグ戦の長丁場では勝ち残るわけですね。

そんなのみんなわかっていて、例えばVリーガーが子どもたち相手のバレー教室なんかをやるときには、「基本が大切だよ」って言ってるはず。なのに、自分たちがプレーするときには、そこがすっとんでしまうことが多々あるのかなと。それを「レベルが違うから」とか「日本と欧米は違うから」とかと言い訳することほどみっともないことはないわけで。このブログでは過去にこんな記事を掲載していました。

最後の1枠に滑り込んだパナソニックは、これまで書いてきた通り、清水・ダンチで7割打つバレーが行き詰って失速。センター線の活用で連敗を脱したのに、のどもと過ぎればまた清水・ダンチ頼み=ジブンタチノバレー、というわけですね。川村監督、自分よりも7つも年上のリベイロ・コーチに遠慮しているフシが感じられ、キャプテン白澤が仕事をしないことはザラで、このチームの指揮系統は大丈夫なのかなと心配です。勝負は時の運、ということでファイナルで勝ち進んだとしても、日本バレー界への貢献という点では得られるものは少なく、学生たちにはまねしてほしくないなと思ってしまいました。

4位のジェイテクトについても、私はちょっと辛口です。このチームにはシステムや戦術がないと思うのですね。ベテランセッター・高橋とセッター経験もあるカジースキの経験則をベースとして試合を進めているという。なので、サーブの狙いがばらばらだったり、ブロックが的を絞れなかったり、無駄に大変な試合を続けてきていた印象です。その象徴が浅野スタメンなのかなと。今季は大混戦の星のつぶし合いのなかで周りが勝手に自滅してくれた、という側面もあったかと。ただ、Vプレミア3シーズン目で、8位→5位→僅差の4位とのぼってきていることも事実。高橋・カジースキ体制からどう移行していくのか注目してます。

5位のJTは正直、チームとしては、何がしたかったのかよくわかりませんでした。越川の離脱が2回ほどあって、それで構想がうまくいかなかったのかもしれませんね。ただ、ビソットに守備の意識が見られなかったり、町野や筧本がピンチサーバーで出てきたり、ひたすらサイドの打ち合いになってたりと、ブコビッチ采配には???な感じ。八子がどんなに不調でもスタメンで、好調な安井が越川復帰でサブに戻る、というのも不可解でした。

5位‐6位決定戦となった2月28日の試合では、堺の裏をかいてセンター線(特に安永!)を多用。そういうバレーができるところも見せてくれましたが、なんでいまさら?という気持ちは 正直、ぬぐえません。そんななかでの収穫は中島でしょう。今季、最も成長した若手の1人だと思います。攻守のバランスがよく、体幹が強いセンター。Vリーグでは貴重です。公称195センチですが、猫背を直せば2~3センチは伸びるのでは。ぜひ代表を目指して頑張ってほしいですね。

6位、われらが堺ブレイザースはファイナル全敗(悲)。石島腰痛、千々木アキレス腱痛、伊藤は膝の故障(と肥満)、出来田謎のせき込み、松本謎の欠場(体調不良?)、横田謎の欠場(故障?)、坂梨手の大けが、そして佐川が試合中に負傷と、少数精鋭に襲いかかる故障と負傷。少数だから各人の負担が大きいということなのか、普段の生活や体調管理に問題があるのか。ただ、他チームでも人数がそんなに多くないところもあるわけで、試合中のけがは仕方ないにしても、選手1人1人が体調管理にもっと自覚を持つべきでしょうね。

前季・今季と堺が持ち込んだバレー=戦略的に数的優位をつくりだし、戦術を駆使ししてその弱点を攻め続けるバレーは、各チームに刺激を与えたと思います。少なくとも堺との試合ではジブンタチノバレーでは勝てない。堺の裏をかき、堺の弱点を突く作戦を考えなければならない。少なくとも合成や東レはそうやって対応してきていましたし、最終戦のJTも土壇場で変化しました。残念ながら、今季の堺は弱点を突かれて受けにまわったときがもろく、ファイナルでは2~3点さを埋められずに落とす試合の連続。最高レベルの戦術と1人で何役もこなせる能力の高い選手を複数抱えながら、〝トリックスター”の役回りで終了してしまいました。

ただ、そんな中でも高野のように若くて安定した力が出てきたことには期待が持てます。来季に向けてどう世代交代をするか、そこがカギになりそうですね。日本バレー界の底上げという観点からも、堺がuniqueな存在であり続けることが必要でしょう。期待しています。

7位のサントリーも、世代交代を大きな課題として抱えているチーム。出場が10シーズン以上かつ230試合以上、という〝Vリーグ栄誉賞”の選手が、山村(出場数歴代4位、現役最多)、阿部、酒井、鈴木、金子(今季達成)と、なんですかこの重量感。しかも開幕当初、全員がスタメンじゃないですか。※ちなみに、堺は松本と石島(今季達成)が栄誉賞組です。

今季、世代交代の道筋を見出したときにはすでに崖っぷち、というところが残念でした。ただ、迷走したまま終わらなかったことは不幸中の幸いですね。入れ替え戦をしのぎ、来季、山本、柳田、星谷、鶴田というあたりが主力になって戻ってくれば再浮上は難しくないでしょう。一部のファンの間では、通訳がジルソン監督の言葉を伝えきれていないのでは?という疑惑もささやかれていますが、そのあたりはどうなんでしょうね。。。

8位のFC東京、入れ替え戦をめぐって争ったサントリー戦がNHK-BSで全国放送、しかもその解説席に座った佐々木太一(元サントリー)に「FCは入れ替え戦に慣れている」と何度も何度もしつこく言われる屈辱。このまま終わって言い訳ありませんよね。手塚の故障欠場が直接的なマイナスでしたが、チームの構造上はやはり、正セッターが定まらないことに尽きると思います。

移動攻撃を武器にする奥村、オールラウンダーのセルジオ、運動能力が高い山本(将)など、面白い選手を抱えながらすべてが単発。サーブもブロックも選手まかせで統一性・一貫性がないところも弱点ですね。ジェイテクトから高橋とカジースキを引いたらFCになる、みたいな感じ。The ブラジル人なセルジオに「カジースキみたいになって」と言っても仕方ない気がするので、まずはチームをしっかりコントロールできるセッターを育てたいところです。

さて、来週はファイナル3の準決勝、再来週が決勝、そして全日本代表の発表でしょうか。南部監督はへたすると、リオ五輪の出場権よりもパナJapanの結成優先、興行面で数字をもっている選手の多用、ということに走りそうで心配ですが、ジカ熱が大流行しているブラジルにわざわざいかなくても……という気がしないでもありません(違)

南部監督(というより、口出しをしているJVA)がどのような代表選考をするのか、それによって、彼らがどれだけ真面目にVリーグを見ていたかがわかりそうですね。楽しみです。


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Vリーグ男子:ミスを避ける道は2つあるのだが。 [バレーボール]

ファイナル3進出のあと1つのイスをめぐる東京会場での戦いは、2月20日・21日で2試合あったパナソニックと堺がまさかの連敗、ついでに2月20日にジェイテクトも負け、みんな負け残りでまさかの大混戦になるという(プ 

今季のリーグで豊田合成と東レの2強という状況になったのにはそれなりの理由がある、ということですね。

そんなことを感じつつ観戦していた会場での1コマ。東レ・伏見(3番)を狙い撃ちする堺・ペピチを激写しました(違)。手打ちだったりプッシュだったりというへなちょこ日本人アタッカーが多いなか、この反りっぷりでぶっ飛んでくるペピチはやはり目を引きますね。※クリックして拡大

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ただ、ペピチは〝アタックライン踏み越しランキング”があればおそらく堂々の1位でしょう。平均すれば1試合あたり1回に迫るのではないかと思うほどの回数の多さ。ちなみに、この試合でも私が見た限りで2回踏んでました。

それはさておき。パナソニックと堺、それぞれの試合の展開はまったく違ったのですが、敗因には共通点があると思うのですね。

例えばパナソニック。こちらの公式記録を見てください。
2.png

パッと見ではすごい成績、さすが攻撃力のパナソニック、って感じですよね。〝全員”が決定率50%を超えていて、ミスはわずか3つ。この成績でなんでストレートで負けるんだ?

実は、この表には1つおかしいところがあります。キャプテン白澤ですね。打数2得点0失点0。彼はブロックでも得点なし、サーブで1失点なので、記録上ではチームのじゃましかしてません。

そこで本題。ミスを避ける道は2つあるんですね。1つは、質の高い練習を積み重ね、試合で集中力を保ち、チームプレーで補いあってミスを防ぐ道。もう1つは、単にボールに触らないという道。

パナソニックが年明けの5連敗を抜け出したきっかけは、白澤が2桁打数を打ち、8~9割を決めるようになったことでした。その結果、清水ダンチへの負担が減り、本来の攻撃力が活かせるようになったんですね。そうなると、相手チームがセンター線を消す対策をとってくるのは当然のこと。特に、この日の対戦相手の合成はレギュラーラウンド第3戦でパナソニックに負けてますから、最初から強いサーブで攻めてくることはわかっていたはずなのです。

なのに、パナソニックはあまりにも無策でした。点差だけ見れば接戦ですが、パナソニックがリードしたのは第3セットの一瞬だけ。それ以外はずっと合成に後れを取ったまま、ジブンタチノバレーを続けて負けたのでした。

で、川村監督のコメントがこちら。「終始強力なサーブで押され、コンビバレーが出来なかった。ただ、チーム自体は決して悪くなく、試合を進められている中、ほんの少し細かいミス等が勝敗を分けた」

ここでもう一度、公式記録に戻ってみてください。試合を会場で観戦し、そのあとで公式記録を見た私は、ああやっぱりな、白澤がこれ(=いないも同然)だからスト負けだったんだよな、と思ったのですね。素人の私がそう思ったところでどうでもよいことですが、おそらく、プロの方々が見てもそういう印象を受けるのではないかと。

でも、川村監督はそこ(=コンビバレー、もしくはセンター線)に重点を置いておらず、「ほんの少し細かいミス等」が敗因だったと述べているのです。その〝ミス”とは具体的になにを想定されているのかわかりませんが、アタックのミスが3セットで3つはまあまあ及第点でしょう。合成も同数です。サーブミスは11本ありましたが、合成の14本よりは少ないのです。

そう見ていくと、パナソニックはこの試合以上に「ほんの少しの細かいミス等」を避けるバレーをすることで勝てるようになるのか?敗因はほんとにそこなのか?という疑問がぬぐえないのですね。実際に、サーブミスは合成>パナソニックですが、効果率も合成>パナソニックです。この日、パナソニックは終始、緩いサーブ=ミスを避けるサーブを打ち続け、その結果、まったく試合を支配できていなかったのでした。

で、私の勝手な想像ですが、パナソニックがこういう負け方をするのは結局、「清水とダンチに上げておけばなんとかなる」という迷信を捨てきれないからだと思うのです。それ以外は最初から計算外、頭数で入れてるだけで、当たればラッキーぐらいにしか考えてないんだろうなと。

レギュラーラウンド終盤でそんなチーム状態から脱皮するチャンスをつかんだか、と思ったのですが、Vリーグのエリート集団はそう簡単に自己改革できないんですね。残念です。

そして堺ブレイザーズ。この日は石島に代えて高野を投入し、レギュラーラウンド3巡目で東レにストレート勝ちしたメンバーで挑みました。前回同様、明るく前向きな雰囲気の中、千々木が攻守でチームを引っ張る展開。さすがに高野は前回ほどノーマークにはしてもらえず、サーブで徹底的に狙われ、攻撃面でも苦しんだ感はありましたが、それでも崩れず、感情的にもならず、落ち着いてプレーをしていたところに大いに期待を持ちました。

その堺vs東レの公式記録がこちら。アタック、ブロック、サーブ、サーブレシーブ、そして総得点までも、すべて堺>東レです。勝った小林監督が「終始精度の低さが目立ち、課題の残る内容となってしまった」と敗者のようなコメントをしてしまうほど。決してそんなネガティブな試合ではなく、会場が非常に盛り上がった楽しい試合だったのですが、それにしても堺、なんで負けたんだ?

端的に言うと、東レ・小林監督のコメントは堺にもそのまま当てはまる内容だったのでした。バックアタックでラインを踏んだり、つないだボールの返球をミスってネットにかけたり、あるいは中途半端に返球してダイレクトで押し込まれたり、チャンスボールを決めきれず、場合によってはネットにかけたり。

で、こうしたミスを避けようとして弱気なプレーを続け、主導権を相手に握られて心が折れ、ムードが悪くなり……というのが堺の負けパターンです。今回はそこまでムードは悪化しませんでしたが、勝負所で精度の甘さ、そしてチームワークの甘さが出てしまいました。

例えば、ペピチは打ち切らなければいけない場面でフェイントしたり、両手で返したりしてしまう。そうすることでチームが失点したとしても、彼の自責点にはならない。チームワークの対極にある発想です。

この日、ピンチサーバーで登場した石島も同じ。セット1-1で迎えた第3セットの22-23の場面、高野に代えて石島が登場した時には、それはもう会場は大歓声なわけですよ。これで同点、逆転、もしかしたらそのままセットを取るかもしれないと。そうなると2-1となって勝ち点3が見えてくると。

で、「ゴッツ!」の声援が飛び交うなか、彼が放ったのは緩い入れとけサーブ。一応、対角線にカーブをかけてセンター線消そうとしてますよ、という言い訳はあるのですが、伏見にクイック、しかも苦手(なはず)のターン打ちを決められ、セットポイントを握られて落としたのでした。

チームとしては非常に痛い失点ですが、石島の自責点にはならないわけですね。自分がピンチ―サーバーに指名された理由はよくわかってるはずなのに、その役割でチームに貢献することよりも、自責点がつかないほうを選んでしまう。これまたチームプレーの対極にある発想です。

しつこいですが、まだ続きます。ペピチ、石島と並んで、この日の試合でありえないと感じたのが井上のプレーでした。たくさんあるのですが、象徴的なのは第5セット1-3の場面での長いラリー、ここでブレイクされると苦しいぞというところでレフト高野にトスが上がったんですね。高野はブロックを利用する打ち方をして、ボールはふわっと後方に。

その近くにはトスを上げた直後の佐川と、そのすぐ後ろに井上。〝普通の”リベロだったら、上がるかどうかはともかく、すぐに反応して飛び込んでいるはず。ところが、井上は1歩も動けなかったのです。なのに、副審がタッチネットの判定を示すと誰よりも早く反応してガッツポーズ。情けない。

井上はわざと動かなかったのではなく、能力的に〝動けなかった”のでしょうが、いずれにしても、彼には自責点はつきません。なので、例え相手のタッチネットがなく、堺の失点になっていたとしても、記録上では井上にはミスがなかったことになるんですね。ごくシンプルに、「なんで動けるようになるまで練習しないんだろう」と思うのですが、その必要性を自覚しないままきてしまったんでしょうね。これもまた、チームに貢献するという視点を欠いているという意味で、チームワークの対極にある発想です。

チームを引っ張っていかなければいけない30代の主力選手たちが、チームワークとは真逆の発想でバレーをしている
。これが、ポテンシャルが高いはずの堺が上位にいけない最大の理由ではないかと。そしてたぶん、選手としてのピークを過ぎつつある彼らはもはや、そう簡単には自己改革できないのでしょう。

前の記事で、千々木を頼りないキャプテンランキング1位と言いましたが、こんな〝先輩”が何人もいるチームを引っ張っていくのは大変なことだろうなとも思うのですね。

いまさらですが、堺は2012/2013シーズンで優勝した時点から、長期計画で世代交代を進めていくべきでした。どんなチームにも必ず山・谷があるわけで、谷底に降りきってしまってから山に登るのは、選手・スタッフ・会社、そしてファンにとっても非常につらい。今からでも遅くはありません。少しでもくだりを緩やかにしてV字回復につなげるために、世代交代の英断をくだすべきだと思います。


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